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”コストプッシュ” ? -「インフレ」に「減税」は御法度

 2月東京CPI(年率)+2.6% 予想 +1.3% 前月 +1.8% ← +1.6%
 コア(除.生鮮食品)+2.5% 予想 +2.3% 前月 +1.8% ← +1.6%
 コアコア(除.生鮮・エネルギー)+3.1% 予想 +3.0% 前月 +3.3% ←+3.1%
*エネルギー(電気・ガス等)▼7.9%、昨年6月以来のマイナス幅。昨年2月以来の政府の電気・ガス価格激変緩和対策事業による消費者物価への押し下げ効果が剥落
*生鮮食品を除く食料+5.0%上昇、7カ月連続で伸びが鈍化

 ”日本のインフレはコストプッシュ!(だから減税しろ?)”

 何だか一部のネット界隈では合い言葉のようになっている ”コストプッシュ” 。まあ言葉の定義にもよるが、経済学上は人件費上昇をコアに継続するのが「真性インフレ」だから、彼らは「お給料は上がっていない!」と言いたいらしい。だから「消費税下げろ!」という論調になる

 それは本当か?

 「損切丸」では繰り返し反論しているが、例えば今日(3/5)出た2月の東京CPIをもう一度よく見てほしい。全国CPIでも同じ現象が続いているがコア、コアコアが総合を上回る状態が続いている”コストプッシュ” の総本山であるべき食品・エネルギーを除いた指数の上昇率が高いのだから「インフレ」の犯人は「人件費の上昇」と推定できる。これはアメリカもヨーロッパも同じ状態。しかも+6%を上回る賃金上昇は日本ではこれから本格化

 この辺は既に日銀幹部も把握している。だからこそ植田総裁の「インフレ」発言のわけだが、4年間ずっとこの点を指摘してきた「損切丸」的には "何を今更" 。*2016年以降「人件費上昇」のトレンドは続いている

 今回の「エネルギ-補助金」「GOTOキャンペーン」も全て "見た目" の物価指数を下げるためにやってきた。いわば 「CPIの誤謬」。- 日本で「賃金」が上がらない理由。|損切丸 (note.com) 何でこんな ”操作” をしてきたかと言えば、もちろん低金利を維持したいから。日銀の金融政策然りで、そのしっぺ返しが▼40円以上もの「円安」

 モノの「値段」って何だろう? ー 「卵」価格高騰に思う。|損切丸 (note.com) 的発想で見れば、例えば電気・ガス代金だって最近ガンガン上げてきたのは「人件費」を上げざるを得なくなってきたから自分の「お給料」が上がらないから「デフレ」などと言い続けるのは構わないが、マクロ経済学的には完全に間違い。少なくとも「投資」には役に立たない

  ”コストプッシュ” はよくある左派の社会運動の一種と捉えているが、「インフレ」下で「減税」などとんでもない。昨日も景気悪化からイギリスで「減税」が取り沙汰されていたが、国債価格の暴落→ポンド安を招くと強く批判されていた。実際前トラス政権はそれで吹き飛んだ。確かに「消費税減税」は一時的にはお財布に優しいかもしれないが、そんな事をすればおそらくドル円が@160円以上に吹っ飛ぶ。その覚悟はあるのか

 ポリシーミックスで考えると「政府補助金」も「減税」同様「インフレ」下では間違った政策。最悪なのは「コロナ危機」対応でグローバルには100兆円以上この国でも10兆円ばらまかれた「給付金」。やむを得なかったとはいえ、やり過ぎの反動が「インフレ」の暴走欧米は既に「利上げ」で対策しているが何もしてこなかった「円」が売られるのはある意味必然「金利差」というよりも「政策の誤り」を突かれたという方が正解だろう

 実際「インフレには利下げ」でトルコリラは大変な事になっている。昨日発表のCPIも+67%台に上昇しており、アルゼンチンと共に苦況は続く。「戦争」を仕掛けたロシアの10年国債金利も@13%を超え台所事情は火の車**「お金」はないところにはない。一方CPIが低下したスイスでは「利下げ」の話が出ており、「お金」はあるところにはある

 **「利下げ」する余裕のある(せざるを得ない?)中国が人民元を貸せば解決するような感じもするが、そんなことをすれば借手が一斉に人民元売りに出て通貨安が加速してしまう。みんなが欲しいのは「ドル」3兆ドルもの外貨準備は「一帯一路」で使い果たしてしまい、中国そのものも「ドル不足」だ。そもそも1京円も「借金」があって「不良債権問題」を抱えているのだから他国の面倒を見る余裕などない

 日本に目を向ければ「日経平均」が連日最高値を更新するなど絶好調。BRICS(除.インド)から逃げ出した「お金」が流れ込んでいる。ただJGB(日本国債)はどうだろう。期末期初で生損保が長期債を買い込んでいるため一時的に金利は低下しているが、4月中旬以降は危うい。毎月毎月膨大な金額の入札が続くが日銀という ”最大の買い手” を失ったJGB市場は徐々に値を下げてくるだろう(金利は上昇)

 いずれ金利が上がるのなら「円安」阻止の意味合いでも「利上げ」の前倒しが有効なはず。そんなことは判っている日銀だが、一部メディアの報道を信じれば(筆者も予想した通り)政府は「デフレ脱却宣言」→ 解散総選挙を狙っている節がある。ここでも「政治」が邪魔をする。30年以上見てきた日銀の ”金融政策史” はこの繰り返し。だが国民に「円安」嫌いが浸透している今こそ脱却のチャンス「利上げ」→「円高・株安」→「悪」の時代はようやく終わろうとしている

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