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「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」

 「投資」の考え方としては大きくこの2通りになる:

 A.「インカムゲイン」(Income Gain)

 「金利」「配当金」など定期的に得られる収入を目的とした「投資」”サラリーマン大家” など家賃収入を目的とした賃貸アパートなどもこれに当るが、日本人はとにかくこっちが好き「高利回り」と言われるとつい手が出てしまう。定期収入 ≓ 安定利益と勘違いしている点も多分にある

 B.「キャピタルゲイン」(Capital Gain)

 買った「投資」資産の値上がりで得られる利益アングロサクソンを中心とした欧米はこちらが主流「簿価会計」(買った値段を据え置いて会計する手法)より「時価会計」(値動き反映した会計手法)が好まれる

 「損切丸」は元・金利トレーダーなのでA.「インカムゲイン」の思考が強いが、B.「キャピタルゲイン」の意識がないかといえばそんな事はない。「金利」や「配当金」は株や債券の価格に密接に関係しているからだ

 アパート投資が分かり易いが、例えば年間家賃収入が+400万円の1億円のアパートの「想定利回り」は@4%。仮に「家賃」が値上がりして+500万円になると@4%を基準に「収益還元法」で不動産価格は1億2,500万円に。つまり売り手は+2,500万円もの「キャピタルゲイン」を得られる

 逆に日銀の「利上げ」が続き「想定利回り」@5%が相場になった場合、家賃がそのままだとアパート価格は8,000万円に値下がりする。「金利」が上がれば値下がりする理屈は国債や社債も一緒で、「配当金」が「金利」に劣る場合、その分株価も下落する事になる

 グローバル投資家は常にこの2つを念頭において売買を決断しており、「キャピタルゲイン」を重視する欧米の投資家も「金利」には敏感。一方定期収入≓安定収入(?)に固執する日本人は「利回り」を気にする余り「キャピタルゲイン(ロス)」に無頓着になりがち

 ”清く貧しく美しく” =「清貧思想」≓ 短期売買で儲けるのは「悪」

 バブル後の不良債権処理に30年以上も要したのには、擦り込まれた「清貧思想」をベースとした国民性 ↑ が大きく影響している。「簿価会計」は「時価会計」に比べて価格変動に寛容になりがちだからだ

 では欧米のいわゆるキャピタリズム(Capitalism)が万能かというとそんなことはない。筆者も業界で見てきたが「時価会計」の悪用が目につく

 「金利」や「配当金」が付かない原油などのコモディティ(商品相場)や(Gold)が典型だが、これらはもう「キャピタルゲイン」一本。値が上がるか下がるかだけの勝負だ。最近ではビットコイン(BTC)等もそうだが、上がれば上がるだけ「時価会計」で儲けが出る日々の成績を迫られるウォール街やファンドのトレーダーは ”買われ過ぎ” などと呑気な事を言ってはいられない馬鹿げていると判っていても「買い」でついていくしかない

 そういう「キャピタルゲイン」至上主義がもたらしたのが2008年の「リーマンショック」であり、一時は厳格な金融規制が布かれたが@7万ドルを超えたBTCを見ていると一向に懲りていないことがわかる。「金融資本主義」でしか生きられないアメリカとしては最早どうしようもないのだろう

 そこに1秒間に何万回も売買を繰り返すHFT(High Frequency Trades)やAIプログラムが登場し "感情" "躊躇い" 等の人間的な要素が徐々に排除「コロナ危機」による+100兆ドル単位の「過剰流動性」が加わって相場のタイムスパンが延びている。こうなると過去の経験則は当てはまらず相場動向はかつてなく読みにくい

 皮肉にもその結果が激しい「インフレ」であり、FRBに+5%もの「世紀の利上げ」をさせた。そしてその波は「円安」を通じて日銀にも届きつつある

 ここまで「金利」が上がればマーケットは軸足を「インカムゲイン」に移す必要がある。例えば短期運用のドルMMF(マネーマーケットファンド)でも@+4.7~4.8%米国債でも1年以内なら@5%以上と物価上昇率を大きく上回る「お金持ち」にはこの ”手堅い運用” で十分

 ”1億円あれば利息だけで喰っていける”

 筆者が高校生の頃はまだ預金金利が@5%以上あったのでよくこう言う話をしていた。宝くじで1億円当てれば年間+500万円の利息収入。今のアメリカはそう言う状態なのだが、数千万円~数億円も稼ぐウォール街のトレーダーはそれでも「キャピタルゲイン」に拘らざるを得ない。彼らの「お金」への固執は尋常ではない(拘らない筆者は業界内ではむしろ "変人" 扱い)

 そういう事情を勘案すると正直NYダウもナスダックもS&Pも一杯一杯。上値が抑えられた結果「日経平均」やBTC、WTI(NY原油先物)に「お金」が流れてきたのだろう。「ドル円」の「キャリートレード」然り。いかに "AI相場" とはいえ結構相場の煮詰まりが感じられる。筆者がこの状況で「何でもいいからトレードして儲けろ!」と命じられたら倒れそう(苦笑)

 それでもまた何か新しい "ネタ" を創り出して「お金」を突っ込むのかな…。常軌を逸した「過剰流動性相場」ではあるがアメリカの大統領選が終わるまでは株価を崩すわけにもいかない。もっとも個人の立場で自身の資産を守ろうと思えば "裏の発想" も必要「キャピタルゲイン」か「インカムゲイン」か。そういう局面に差し掛かっている

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