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「インフレ」に「ドルの燃料投下」はいつまで続くのか?

 やっと米株価が反発。ナスダックなどは6営業日ぶりというから、ウォール街関係者はほっと一息か。だが安心してばかりもいられない。主役は原油価格上昇に引っ張られたエネルギー関連株。つまり「インフレ銘柄」だ。

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 「インフレ」の証拠は続々と揃いつつある。米CPI(8月@+5.3%)に続き、イギリスの物価も年@+3.2%と急伸(7月@+2.0%)BoE(Bank of England)は2022年には「利上げ」を開始する姿勢を見せ、英ポンドの金利市場は織込み始めた。*FRBより「先」になるかもしれない

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 *ECBも「資産購入オペ」の縮小を既に発表しており「テーパリング」という意味ではFRBより早い高い消費税率など構造的に「インフレ体質」のヨーロッパではある意味当然かもしれない。もっとも先頭に立つのは2021年3月に「金融政策の総点検」で「スティルス・テーパリング」を発動している我が日銀ではあるのだが(苦笑)。

 昨日(9/15)に発表になった8月NY連銀製造業指数(標題グラフ)も@34.3と力強い伸びを示しており(予想17.9、7月18.3)、特筆すべきなのが過去最高を記録した販売価格指数@47.8供給不足による、いわゆる ”ボトルネック” が景気の足を引っ張っているのではないか、と懸念されたが、底流の需要は依然強く「インフレ」圧力は続いている。これは価格高騰で一時的な買い控えの後に再び上昇の始まった中古住宅価格の動き ↓ とも符号する。

2021 7月米中古住宅販売

 これだけ「火事」”出火” の証拠が揃ってくると、あとはいつまで「ドルの燃料投下」を続けるのか、という点が気になってくる。

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 現在はパチパチ ”火” も大きくなってきているのに、未だに「薪」=「過剰流動性」をくべ続けている状態。この理屈で「テーパリング」を考えると「大火事」になる前に早く「薪」は止めた方が良い2022年以降「国債発行減額」(月▼880億ドル)という別の「燃料」が加えられるなら尚更だ。

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 将来的に「火事」を消す作業=「利上げ」が必要になる可能性もあるが、現段階で急ぐ必要がない、というのが「消防士」=FRBの判断。雨が降ったり風に煽られたり、今後様々な変化も予見されるため、時々の判断になる。

 そして「中国」から聞こえてくる "足音" ↓ も大分大きくなってきた。こちらは「火事」というよりも「地震」に近いが、9/16には中国恒大集団の社債取引が全面禁止になるなど、いよいよ風雲急を告げてきた。

 日本でも大々的に報道され始め、中には「中国版リーマンショック」と書く向きもある。だが大きな相違点は、サブプライムローンやそれに係る不動産担保証券CDO(Collateralized Debt Obligation、債務担保証券)を通じて「金融の鎖」が世界中に広がっていたリーマンショックに対し、中国の「理財商品」は国内販売が主で海外資本があまり入っていないこと。そう言う意味では一気に世界的金融危機に発展する可能性は低そうだ。

 ただ、中国に車などを売っているドイツや日本の製造業への打撃は避けられず、また中国から物を買っているアメリカは「物価上昇」という形で影響を受けるかもしれない。さすがにGDP世界第2位に躍り出た国だけに、世界経済への影響は小さくはないだろう。

 だが「政治的側面」を考えると米中ともに「メリット」も見えてくる。

 「富裕層」締付けを謀っている中国では、デフォルトコストを意図的に「政敵」に押しつけることも可能だし、中国を叩きたい米国にとっては(デフォルトによる直接的損失さえ避ければまさに「渡りに船」「物価上昇」「大借金」を抱えるアメリカにとってはむしろ歓迎かもしれない。

 とは言え、油断できないのが「火事」「地震」などの災害アクシデントは付き物であり、あらぬ方向に「火」が燃え広がったり、大きな「余震」が起きたりもする「金融危機」も「クラッシュ」も同様で「まさかそんな事が...」の連続(経験談。苦笑)。特に「資金繰り」に関する部分は人に例えれば「命」に関わるので待った無しほとんどの金融パニックはこの「資金繰り」から引き起こされている

 そして「資金繰り」のバロメーターになるのが「金利」

 「実質金利」が高止まり、あるいは上昇傾向にある中国は目の前の ”逼迫感” が強い。一方金利が上がらない日米欧はまだ余裕があるとも言えるが、「インフレ」で「お金」の奪い合いが激しくなれば、いずれ「危機的な金利上昇」が起きないとも限らない中国「強い揺れ」には気をつけつつ、**火がつき始めた「インフレ」にも目を配っていく必要があるだろう。

 **1つ気になるのが@109円台前半に突如突っ込んできたドル円に代表される「ドル安」「インフレ」に起因する現象だとすると結構厄介だ。「ドル安・株安・米債安」のトリプル安は「金融危機」の定番 ”被害” が大きくなって収拾が困難になってしまう。

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