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新・「FRBの総意」=「@4%」Ⅱ。- 迫る「QT」の影。

 新・「FRBの総意」=「@4%」。- 8月米CPIの ”中味” 。|損切丸|note からの続編。マーケットの "関門" が : 

(物価・雇用コスト指標)
 9/30 PCE個人消費支出指数(年率) 予想+6.6% 前月+6.3%
 (先行指標)
 9/15 フィラデルフィア連銀指数 予想+1.0 前月+6.2
 9/16 ミシガン大学消費者期待指数 予想 57.3 前月 58.0

 出てきた結果がこう  。

 9月フィラデルフィア連銀指数 ▼9.9 予想+1.0 前月+6.2
 (内訳)新規受注指数 ▼17.6 前月▼5.1
 支払価格指数 29.8 前月 43.6 - 2020年12月以来の低水準
 従業員数指数 12.0 前月 24.1 - 2020年12月以来の低水準
 6カ月予測 ▼3.9 前月 ▼10.6

 9月NY連銀製造業業況指数 ▼1.5 予想 ▼12.9 前月 ▼31.3

 何れもFRB自身で調べている指標だけにマーケットを動かすことも多いのだが、どちらもパッとしない。少なくとも通常時ならとても+0.75~1.0%なんて「大幅利上げ」を促す内容ではない

 だが米国債金利は低下どころか1~2年を中心に上昇「利上げ」到達点も@4%超に切り上がっている。やはり8/26ジャクソンホールでパウエル議長が「景気や雇用を犠牲にしても利上げでインフレを抑える」と宣言したことが効いている

 ただ変化としては①逆イールドの深化、e.g., 2-10年▼43BP②BEI(予想物価率)の低下、e.g., 5年@2.63% → @2.58%、が見られた。つまり「利上げ」の行き過ぎによる景気減速懸念が強まったことになる。 

 9/13NYダウ▼1,200ドル急落に驚いた方も多いと思うが、筆者には思い当たることが1つある。「QT」(量的引締)による「お金」の減少の影響だ。

 「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ13 株式編③|損切丸|note なぜ「金利」が上がると「株」は売られるのか? ー 詳述:「金利裁定取引」(アービトラージ)。|損切丸|note 等で何度かご紹介した筆者の経験談「金利裁定取引」↓ 

 TOPIXNYダウなどの先物3,6,9,12月の3ヶ月限月が主流「株現物買い+株先物売り+3ヶ月借入」で回していくのが基本。これを3ヶ月毎にロールオーバーしていく。

 ところが今回のように「利上げ」が起きると「お金」が借りにくくなるため、アービトラージが効かなくなる。筆者のケースでは「ゼロ金利解除」で円金利が上昇し、アービトラージを兆円単位で解消。当時4~6月のたった2ヶ月で日経平均が▼4,000円も下落した。

 株先物SQ(Special Quatation、特別精算値)で決済されるが、買い持ち、売り持ちのままだと「現物受け」、つまり株価指数構成銘柄の株の現物が引き渡される の例では本来ロールオーバーされるはずのTOPIX先物がアービトラージ中止によって巨額の「現物売り」に転換日経平均の▼4,000円急落を起こしたそのきっかけが「利上げ」だった訳だ。

 金利も株も先物の決済は3当月の第2、第3週に集中する。そういえば今週(9/12~16)も9月第3週。しかも日米欧3極による「コロナ」対策の「金融緩和」は日銀の「ゼロ金利」など目じゃない "史上最大" の「過剰流動性」を創り出したそれを元に戻す「QT」のマグニチュードは計り知れない

 そしてアービトラージ解消による株急落には1つの特徴がある。リバウンドがないことだ。それもそのはず、株は兆円単位で "売りっぱなし" になるため、トレーダーの売買いと違いポジション調整の買い戻しなどない。もっともアービトラージを組成する時には、その分株価は上昇しているわけで、単純に元に戻っただけ。さながら ”時限爆弾” である。

 アービトラージは代表例だが、余った「お金」を利用した取引は様々。それはNYダウ、S&P、ナスダック、日経平均、TOPIXは言うに及ばず、金(Gold)、原油などのコモディティやビットコイン(BTC)などの暗号資産だって可能だ。現在の様に金融工学AIが発達すれば「儲ける」ための取引形態はかなり広がっているはず。一体どれ程の「お金」が張り巡らされていることやら、想像もつかない。

 その "史上最大" の「過剰流動性」が「QT」で元に戻ろうとしている。これは学者でも経験・知識の無い壮大な「金融実験」。どういう影響がマーケットに及ぶのか。1つ言えるのは「欧州通貨危機」「リーマンショック」等かつての金融危機と同等、あるいは ”別次元” の何かが起きるという事。

 そしてもう一つ、喉の奥に刺さった棘がお隣の「灰色のサイ」「ドル経済圏」からの分断が進む中での「人民元の急落+強過ぎるルーブル」は一体何を意味するのか「利下げ」に転じたのにジリジリと上昇する中国国債金利も不気味不良債権と過剰借金で中国内の「資金繰り」が "火の車" なのは明らか。ここでも ”別次元” の何かが起きるのか...。不安の種は尽きない。


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