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「インフレ」の正体。ー 「平均時給」上昇の衝撃。

 1月米雇用統計:
 非農業部門雇用者数 +46.7万人(予想)+12.5万人(前月)+51万人  ← +19.9万人
 失業率 4% (予想)3.9% (前月)3.9%
 平均時給(年率)+5.7% (予想)+5.2% (前月)+4.7%

 今(2/4東京時間@23:00)発表された1月の米雇用統計を確認しているが…いやいや凄まじい強さである。当然の如く米国債は売り込まれ金利は急上昇3月FOMCでの+0.50%利上げは完全に織込み、5月の+0.25%連続利上げが視野2023年に政策金利が@2.0%に達することも示唆している。

 もう一つ見逃せないのが30年物価連動債(TIPS)が遂に「プラス金利」に転じたこと。マーケットはFRBに対し " Behind the Curve" (対応が遅れること)から脱せよ、と要求している。

 特筆すべきは平均受給の伸び年+5.7%と急伸しており、いよいよ「真性インフレ」に転じてきている。感染症の影響もあり2021年には月当り▼400万人も退職した、との驚くべきニュースも流れていたが、その中には株価の急騰によるFIRE(Financial Independence,  Retire Early、経済的自立と早期リタイア)も含まれるだろう。これでは人手が足りなくなるわけである

 まさに 「コロナ前」に " Time Warp Again!"   ー 「インフレへGo!」。|損切丸|note の状態だが、最近度々触れている「団塊」「ベビーブーマー」など「人口動態」について "証拠固め" をしてみた。

 標題添付は国土交通省が出している「公共工事設計労務単価」という統計資料だが(不正がないことを望む。苦笑)、公共事業に対して払われる労務単価が労働市場の実勢価格を反映する事から、日本における「人件費」の動向を掴む指標になる。

 「居酒屋が大変」「ホテル、旅館の予約は9割キャンセル」「アルバイト、パートの首切りが横行」

 *メディアからは暗いニュースばかり洪水のように流れていた割には、実は全体で時給が上がっていることがわかる。大工さんの年収が1000万円を超えた、という話もまんざら嘘ではなさそう。

 以前も書いたが、巷で流れるニュースは一般大衆の不満や願望を反映しやすい「いいね!」ばかり求めるSNSも同様で、一種の "ガス抜き" になっている。「儲かってしょうがない」なんて書いたら、嫉妬心の強い日本では袋叩き(苦笑)。だから「データ」「数値」が示す ”リアル” は世間の認識からずれることが多い「投資」はこの ”リアル” がベース新聞やテレビを見て株を売買しても儲からないのはこのギャップが原因である。

 詳細に内容を追っていくとなかなか面白い。活動が制限された「レジャー・アミューズメント」▼3.2%「営業」▼12%も減少したのとは対照的に、需要が高まったリモートワークやネット通販に係る「クリエイティブ・編集」+11.8%、「エンジニア・サポート・保守」+13.4%と大幅増

 地域別で言うと、やはり娯楽や飲食店が集まる「東京」のへこみが大きく、平均時給は▼2.5%。これは 「あの時買っておけば良かった...」 ー その後。|損切丸|note でも触れた「東京23区」の人口流出現象とも合致しており、逆に "つくばエクスプレス" (TX)効果で+4.000人以上も人口が流入したつくば市を含む茨城県が+9.3%になったことも説明がつく。

 この状況のまま「コロナ前」の2019年に戻れば、「人手不足」に拍車が掛り「平均時給」が更に上昇するのは必至企業サイドの「経営リスク」としても浮上してきている。

 これらを決定づける要因が「人口構成の大きな塊」=「団塊」「ベビームーマー」のリタイアであり、景気が先に立ち上がったアメリカが先行しているが、世界的現象と考えて良い。

 +0.25%の追加利上げを決定したBank of England「インフレ抑制には賃金抑制が必要」と言い始め、あれだけ「利上げ」を嫌がっていたECBの調査でも企業が+3%以上の賃上げを予定している旨示されている。だからこその「ラガルド総裁の心変わり」であり「金融引締め」への転換である。3日前までマイナス金利だったドイツ10年国債は、あっという間に@0.22%に到達し、もたもたしているJGB@0.20%を追い越してしまった

 「金利」は一旦流れが出来ると一気にくることが多い。過去に「ドイツマルク」を担当した筆者の経験では、ドイツ人には「妥協」という概念が薄いので、売る時は徹底的に売ってくるその "頑固さ" は「周りに流される日本人」とはひと味違うスペイン10年国債も一気に@1%を超えてきており、ここからは結構大変な相場が待っているだろう。

 では日本だけ取り残されるのか? ー 心配ご無用「人手不足」は日本も同様で、足りないものは足りない。ワンクッションあるとすれば多すぎる飲食店等の淘汰の過程だが、いずれにしろ「インフレ」基調は不変

 "頑固" なドイツも大変だが「周りに流される日本」も実はなかなかのもの。過去「ドル円」にも見られたように一気に "雪崩" を打って動くので、欧米人には理解不能で怖れられている。こうなると "雪崩" が「起こるかどうか」よりも「いつ起こるのか」。丁度日本の年度末でもあり、3月FOMCでの「利上げ」が号砲になるのではないか「悪い円安」で苦しみ始めた日本にとって「円金利上昇」はむしろ "慈雨" になる可能性もある。ここからは「金融正常化」の過程をじっくり眺めていきたい。

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