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「あの時買っておけば良かった...」 ー その後。

 「あの時買っておけば良かった...」 ー 雑感 @2019年、酷暑のお盆に。|損切丸|note を書いてからはや2年半が経つ。残念ながら筆者の知人は未だに賃貸暮らし。2019年夏の時点でも「随分値段が上がった」はずのマンション価格は、そこから下がるどころか更に値上がり

 "東京23区のマンションの平均価格2020年が6,083万円、2021年は6,260万円で、1973年からの統計開始以降、バブル期の1990年に記録した最高値6,123万円を上回った。1㎡当たりの単価も9年連続で上昇し、93.6万円とバブル期の93.4万を上回った”

 「インフレ」基調が続いており、特に建物に関しては木材や鉄鋼等の資材の値上がりが顕著大工さんの人件費も上がっており、おそらく10年前は坪単価60万円だった物件が今や100万円近くになっていると想定される。

 「東京オリンピックが終わったらマンション価格は暴落する」

 筆者は一貫して否定的だったが、2018年までこういう記事が席巻していた時期がある。結果はどうだろう。おそらく書いている当人達もそう信じていた訳ではなく、「ヒット率」が高いから書いていただけ。つまりメディアには世間の "願望" (マンション値崩れしろ!笑)が表れやすい。少なくとも今の偏向ぶりを見ると、そう考えて間違いない。「バブル」と騒いでいるうちは「バブル」は終わらないのがこれまでの定石だ。

 「家」について、同じ様な悩みを抱えている方も実は多いのではないか。今回のパンデミック多くの人に重くのしかかっているのが「家賃」だろう。そういう ”目覚め” もあって、「家賃」から逃れようと中古マンションや東京周辺部の物件に買いが殺到し、それが価格上昇に拍車をかけている。

 毎月払っていると気付かないが、実は「家賃」の負担は甚大長期で見ると東京なら1千万円単位の持ち出しになる。抱えるリスクが違うので単純に「持ち家」と比較するのは好きではないが(苦笑)、コスト比較すると:  

 ファミリータイプの70㎡のマンションを買った場合と「賃貸」のコストをざっくり比較。まず「家賃」の持ち出しが20年で▼5,000万円を超える事に驚く。これを基準に「持ち家」を考えて見ると:①8割ほど住宅ローンで借りる(返済可能が前提)②50年で建物を償却③▼0.2%程の固定資産税④毎年+1%程度の値上がり、とするとこの値段でも買った方が3,000万円程「お得」一概に「持ち家」が「高い」とは言えない

 ここでの大きなポイントが ”値上がり見込”。未だにデフレマインドに偏っている日本人は "値下がり" を前提に考えるので:

 年▼2% "値下がり" すると試算すれば「高い」という判断になる。だが「逆の目」もある。毎年+3% "値上がり" すると:

 直近10年間で起きたのがこういう現象。結果的に「持ち家」が勝利を収めた。 ”値上がり見込” = リセールバリュー(再販価値)の算定が鍵となる。

 では不動産市場がどこもバラ色かというと実はそうでもない。意外にも東京都、しかも23区の「賃貸市場」に異変が起きている。

 総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都への人口の流入は、2019年度は前年比+83,455人2020年度は+7,537人と大きく減少。さらに2021年度の上半期(4~9月)は▼8,756人減と流出に転じた。東京23区については2019年度が+84,960人だったのに対し、2020年度は▼30,171人減。一方東京23区外の東京市部では、2019年度が+13,543人2020年度は+5,516人増と影響が小さかった”

 ”2019年以前には東京23区で賃貸住宅の約7割、約4万戸の単身者向のワンルーム、1Kが新規供給されていたが、単身者も約4万人増加してバランスがとれていた。ところが2020年には単身者が▼約2.5万人の減少に転じ、差引約6.5万戸の供給過剰になった。結果2020年中旬以降、東京23区の単身向けの空室率が急上昇し「賃料」も下落。一方、テレワーク拡大による住み替え需要で元々供給量が少ない2LDK、3LDKは上昇傾向を維持している”

 ”住宅系Jリート物件や、単価4,000円/㎡以上(50㎡で家賃20万円以上)の高価格帯賃貸住宅の稼働率は95%以上を維持収入が高い層、あるいは大手会社の管理物件はリーシング力(借り手を見つけて入居率を高める能力)が高い等の理由から影響が軽微だった”

 筆者の知り合いが30年前に茨城県の「守谷」という所に家を建てて移り住んだが、当時周りには何も無かった。「どうしてこんな所に...」と思ったものだが、近年状況が一変つくばエクスプレス(通称TX)が通って秋葉原まで40分程度になったことで地価が急騰買値の+10倍近くに跳ね上がった

 「リモートワーク」が定着して週2回ほどの出社で済むなら、「守谷」のような選択肢は合理的だ。買っても安いし「賃貸」なら都内の1Kの「家賃」で1LDKが借りられる

 大規模オフィスビルにも「変調」が起きている。

 ”2022年の東京23区における大規模オフィスビルの供給量は51万㎡と、2021年(61万㎡)より少なく、過去20年で2番目に多かった2020年(185万㎡)の3分の1以下。そのため空室率も一旦頭打ちになっているが、依然@6%台と賃料下落の目処とされる@5%を上回っている。背景としては2023年に再度150万㎡程度の大量供給が控えており、貸し手の一部には先回り的に賃料を下げて対応する向きもある”

 日本の不動産市場も詳細に "FACT" を追うと様々な変化が見られるが、今後の "鍵" はやはり「インフレ」動向。筆者は「インフレ」見通しを変えていないので、23区の単身者向け賃貸、或いは大規模オフィスの賃料下落は一時的で、いずれ東京周辺部の価格上昇に足並みが揃うと見ている。

 それに対し最大のリスク要因はやはり「金利上昇」パンデミック後の経済正常化によるプラス要因との綱引きになるが、株価も不動産も「低金利」に支えられている部分が大きく、ある程度の「調整」は不可避だろう。

 だが「物価」という観点からは、モノの価格が下がる、いわゆる「デフレ」に陥る蓋然性は低い。根拠はベビーブーマー世代の引退に伴う「人手不足」恒常的に「人件費」上昇を伴う世界的現象であり、*CPI+7~8%は無理でも、+3%以上の物価上昇が続くだろう。

  ”ウルトラC” があるとすれば「米中デタント → グローバリゼーションの復活 → 物価下落」。だがこの場合はFRB等の中央銀行が「利上げ」を止めれば良いだけ「日本化」=デフレを極端に怖れる欧米は何が何でも阻止にくる。結局緩やかな「インフレ」が維持される可能性が高い

 大分長い投稿になってしまったが、「家」の購入を検討されている方に老婆心ながら一言。(セカンドハウスや投資物件は別だが)自宅に関しては「住みたい時が買い時」自宅の値段が下がっても買い直す物件も値が下がるのでほとんど影響はない。結局どこかには住まなくてはいけない。

 やはり**大事なのはリセールバリュー(再販価値)の ”目利き” になる。生きていると色々な事が起きるが、いざ売ろうとなった時にこの ”目利き” が物を言う。そこさえ見誤らなければ、いつ何時、「株」でも「家」でも対処可能「バブル崩壊」ばかり怖れる必要は無い

 **「値段が下がったら買う」こういう考え方は改めた方が良い値段が下がっている時はそういうリスクが顕在化しているはずで、むしろ買うのは控える場面モノでも「金利」でも見た目の高い・低い、いわゆる「名目値」で判断するのは危険だ。デフレ初期に「値段が下がった!」と株やマンションに飛びついた人々がどうなったか…。結構酷い目にあった人も多い。

 

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