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「金利」は語るⅡ ー パウエルFRB議長:「米経済には耐性。現行の政策金利は適切」。

 昨日の米国市場における債券と株式市場の相関が興味深かった。流れは:

 ①アジア、ヨーロッパ市場の流れを受けて米国債の金利も低下。

 ②米国株式市場も上昇。S&Pなど最高値を更新。ダウは+100ドル強。

 ③パウエルFRB議長の議会証言「米経済には耐性があり、現行の政策金利は適切」を受け米債券市場が反落。e.g. 10年債 @1.56% → @1.60%。

 ④米国株が反落。NYダウは前日比マイナス圏まで押し戻され引け。

$  FF- 2- 5- 10yr  12 Feb 2020(グラフ)

 いみじくも、前稿で指摘した「過剰流動性による株式市場の押し上げ説」を証明することになった。つまり、FRBによる再利下げが実現しないとこれ以上の低下は見込めない程の水準にドル金利は既に低下しており、議長の発言が水を差した格好。

 つまりここからの株高を正当化するのは、企業業績でも景気動向でもなく金利の低下が鍵だということだ。このことを知ってかしらずか、最近ではなりを潜めていたトランプ大統領の「FRB批判」がぶり返した。選挙前に何が何でも「NYダウ30,000ドル」を達成し再選を果たしたいらしい。もはや「新型コロナウィルス」も日本も北朝鮮も眼中にない(笑えない...)。

 AIプログラムも、ひょっとしたら最大のリスクファクターに「金利上昇」が組み込まれているのかも。これではエコノミストやファンダメンタルをベースにやってきた投資家やトレーダーは出る幕がない。残念ながらこの3年間は「AIプログラム」に敗れてきた Loosers だ。

 今回の株価上昇には中国人民銀行による4000億元(約6兆2000億円)もの資金供給も一役買っている。1日の供給額としては2019年1月以来の高水準だ。実際上海株も持ち直しており、アジア株全般にも下支えとなった。

 こうなると株式市場の注目点は金利とお金の供給一本といっても過言ではない。今後どこから新たな「薪」がくべられるのか? 残念ながらマイナス金利の影響で銀行が青息吐息の日本とヨーロッパにはあまり期待できまい。実際日欧の金利市場の動きはかなり鈍い。

実質金利G8(after CDS)@12Feb20

 そうすると残るのはアメリカと中国だろう。

 今回の「新型コロナウィルス」の影響から中国で「白菜が1,000円」になったという記事を読んだが、これも物価上昇の一部か。まあ物流網の回復で中国内では少し改善傾向も見られるようだが、世界的マクロで見るとこの数年デフレをまき散らしてきた中国からの大量のモノの供給が断たれることの意義は小さくない大きな変化が起きそうである。

 「ラストリゾート」的な役割を果たすのがFRBということになるが、果たして上手くいくだろうか。例えば利下げをしても「インフレ懸念」から金利、特に長期金利が上昇し始めるというような相場がドル金利市場では良くある。そのあたりが相場の節目になりそうなので注意深く見ていきたい。特に米国株には大きな試練となるだろう。大統領戦まで保つのか?

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