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2020東京五輪「中止」「強行」の「建前」と「本音」。

 「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」

 全国紙A新聞がこう書いた。当該新聞社が五輪スポンサーだったためSNSが少しざわついたようだ。

 「そんな綺麗事じゃないんだけどね...。」

 家族に "自説" を披露したら割と面白がってくれたので、 note. に少し書いてみようと思う。 

 マーケットの仕事に20年以上も携わると、出てくる情報を鵜呑みにはしなくなる。政府や中銀の要人の発言には必ずと言っていいほど「建前」と「本音」があり、表向き見えている事の裏側に潜む "FACT" を見極めるのが肝要。実際為替金利等はその "FACT" に沿って動く場合がほとんどだ。

 残り2か月を切って、2020東京五輪「中止」「強行」に関わる動きが加速しているが、マーケット的観点から「建前」と「本音」を慮ってみる。

 1.アメリカ

 (建前)・科学的見地から日本への「渡航禁止」を決断。

 (本音)・払った放映権料=米NBC、2032年までの夏冬6大会に▼76.5億ドル(約8,300億円)に見合う収入が見込めない東京五輪は「中止」したい。その上でIOCに放映権料の返還を請求

 ・「東京中止」をテコに、2022年「北京」を「ボイコット・中止」の流れに導きたい

 選手のコンディションも整わず観客も入らない大会では視聴率が上がらないのは必至このままでは赤字なので「中止」の方が都合が良い一見日本政府には「逆風」にも見えるが「お金」の算段だけ考えれば「味方」かも。対欧州、対中国の政治的思惑も絡んでいる。

 2.IOC・ヨーロッパ

 (建前)・東京五輪は実施可能。アスリートの ”夢” のため全力

 (本音)・貰った放映権料は絶対に返さない or * ”保険” でカバー

 イベント中止に関する保険には、英ロイズドイツ保険大手アリアンツミュンヘン再保険スイス再保険など欧州勢がずらり。総額20億ドルにも及ぶ保険金は経営を直撃するので支払いたくないできれば日本政府・東京都の責任で中止を決定させ「違約金」を支払わせたい

 IOC幹部の最近の発言は完全に ”確信犯” 感情的になりやすい日本人の国民性を煽って「日本の責任」に追いこむ作戦だ。目的は完全に「お金」である。日本政府もこの点を上手く国民に説明できるといいのだが、何せトップは「いいから黙っていうことを聞け!」の昭和世代。忖度ばかりしているメディアも何とも心許ない(それでこんな note. を書く羽目に。笑)。

 3.国連・WHO

 (建前)・「今は ”戦時中” と同じ」(グティエレス事務総長=元ポルトガル首相)←→ 「五輪を支援する」(WHO)

 (本音)・本来はパンデミックリスクを考慮して「東京五輪中止」を勧告すべきだが、2022年の「北京」があるのでここは黙っておこう(WHO)

 そして肝心の 4.日本政府・東京都

 (建前)・「安全・安心の東京五輪」は開催する。 e.g. 「中止」の場合の損失は ”▼1.8兆円” (!?)。

 (本音)・五輪**「強行」と「中止」、どちらが来る都議選と衆院選に有利かな?▼2,000億円ぐらいの「お金」で済むならどっちでもいいか。

 アメリカ、IOCにしてみれば「日本」は何て与しやすい相手なのだろう。内外の "面子" ばかりを気にして「お金」に執着がない「損切丸」でも度々指摘してきたが、「昭和世代」に色濃い「清貧思想」や「恥の文化」が国際的交渉では往々にして「裏目」にでる

 **今回「強行」に固執しているのは首相のようだ。同じ東北出身「損切丸」から見ていると、これはいわゆる「決めっ子」(=一度決めたことはテコでも変えないこと)状態と推察する。心情的には理解できるが、例えば「中止」による損失▼1.8兆円は詭弁だろう。既にハコモノは作って支出は済んでいる訳だから。無観客を含め入場客や人流を制限するのだから「観光収入」を含め今後の収入は「強行」「中止」どちらでもあまり変わらない

 むしろ ”たかがオリンピック” のために「非常事態宣言」を連発している方が大問題であり、経済損失は▼1.8兆円どころではない既に「お金」の勝負は着いているのである。残るは昭和的「面子」の問題だけだが、そんな "ちっぽけなもの" に「生活」を生け贄にされては国民も溜まらない

 筆者個人の読みとしては日本は最終的にはアメリカに付く。そうなると「中止」が濃厚だが、そこで1つ強くお願いしたいのは「お金」を一切払わないで頂きたい国連事務総長が言うように「戦時中」なら当然だ。「和」の精神で全てを丸く収める必要など無い。2度とオリンピックが来なくてもいいじゃないか(多分そうはならない。「お金」でどうにでもなる)。

 こんな感じで少し "斜め" に記事を読んでいくともう少し "FACT" に近づけるのでは。日本の記者もこの辺りの事情はうっすら知りながら書かない(あるいは協賛の関係で書けない? それともこの程度の洞察力もないのか...)。残念ながら日本国民の健康と安全を一番に考えているオリンピック関係者は皆無だろう。日本では避けられがちな「お金」が判断の中心事項なのだから、少し視点を変えることも必要になる。

 おそらくそこで見えてくる "FACT" 日経平均や株価は連動するはずだ。今なら「中止」で日経平均が買われる可能性の方が高いだろう。

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