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マーケットに3つの "爆弾" ー ①SPAC(特別買収目的会社)、②ビットコインETF、③中国版「バッドバンク」

 ビットコイン(BTC)にある程度の利食いが出て、米国債など金利市場が落ち着きを取り戻す中マーケットは ”次” 探しを始めた。膨大な「お金」の流れの中で3つの "爆弾" =①SPAC(特別買収目的会社)、②ビットコインETF③中国版「バッドバンク」が注目されている。

 ①SPAC

 日本ではソフトバンクGのハイテク投資「ビジョン・ファンド」ですっかり有名になったが、標題添付グラフのように2019年から米国市場を中心に急激に増え、2021年の組成額は既に1,000億ドル(約11兆円)超え

 平たく言えば「お金」を集めて企業や株に投資するための新たな仕組みプライベートエクイティーやヘッジファンドの変形とでも言おうか。IPO(新規公開株)で募った資金で企業買収する形を取っており、規制回避など様々な利点があるとされている。

 最近になってIPO後に価格が下落するなど不安定な状況も起きつつあり、SEC(米証券取引委員会)も精査に乗り出した。投資の中身が不透明という意味では "爆弾" の1つと捉えて良いだろう。

 ②ビットコインETF

 既に注目を集めているBTCだが、このビットコインETFが@6万ドル超えの原動力と推定される。ところがここへ来て ”おかしな事態” が起きている。

 運用資産350億ドル(約3.8兆円)の最大手「グレースケール・ビットコイントラスト」GBTCの基準価格が保有するBTCの価値を▼20%程度下回ったという。 ”換金” を認めていないため、売り手はETFの買い手を見つけなければならない、という特殊事情を考慮しても何とも不可思議な現象だ。

 ここにも規制当局の影。現在SECに数件ニューヨーク証券取引所へのETF上場申請が提出されており、その期待感がBTC価格を押し上げてきた。だがFRBや米財務省のBTCに対する警戒感もあり、許認可には不透明感も残る。先週末に一時@4.7万ドル台に急落後、今日(4/26)は@5.3万ドル台まで戻すなど相変わらずの ”ジェットコースター相場” にも大きく影響している。

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 ③中国版「バッドバンク」

 共有できる正確な情報が少ないこともあり、あまり市場では取り沙汰されないが、 "爆弾" としての規模は最大だ。4/13 下がりだした中国国債金利。 ↓ ご参照)にも書いたが、不動産融資の「バッドバンク」とされている中国華融資産管理の社債価格が一時急落したことから市場の緊張感が高まっている。きっかけは元会長が17.9億元(約285億円)の賄賂を受け取った罪で死刑判決を受けた事だ。

 中国銀行保険監督管理委員会は「華融資産管理の業務は正常に行われており、同社には潤沢な流動性がある」と声明を発表し、直近4/27期日の社債は全額償還される旨伝わったことから同社債は一旦反発(金利は低下)。この流れを受けて一時低下していた中国国債も利回りが上昇に転じ、10年債は@3.18% → @3.22%に戻した

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 だがこれは総額5,000兆円にも上る債務の ”氷山の一角” に過ぎない。ちなみに国家債務で言えば、アメリカ(23兆ドル)の倍以上、日本(1,100兆円)の5倍近い規模であり、途方もない額。正確な情報を得にくいため、中国国債の金利や人民元の為替相場を注視するしかないが、上下どちらでも極端に振れる時は要注意だろう。

 これらの "爆弾" には2つの共通項がある:

 ①多額のお金が「ブラックボックス」に集められているが中身が判らない

 ②相場が上がっている間はいいが、売られ始めると買い手が見つからない

 思い出すのはリーマンショックで問題になったCDO(Collateralized Debt Obligation、債務担保証券)。AAAだったはずの証券が突然紙屑になった。折しもフィッチが華融資産管理をA+からBBBへ3段階格下げしたばかりだ。

 投資銀行も格付け会社も滅茶苦茶だったわけだが、あれから14年。あれだけ金融規制を厳格化したのに、その規制をもかいくぐる仕組みが次から次へと出てくるアルケゴスに対する貸し倒れもそうだが、へこたれないというか懲りないというか(苦笑)。

 金利上昇が一服して ”凪” 状態に入った今マーケットを動かしたい、という思惑もあるのだろう。SPACでもBTCでも何でもいいのである。とにかく "連中" が怖れるのは相場が動かなくなること。全てのマーケットが今のドル円のように ”成熟” してもらっては困る(苦笑)。

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 とにかく "誰かの損" を狙っている訳で、ターゲットとなり得る我々 "小市民" はそういう "裏事情" も踏まえつつ相場を "吟味" する必要があろう。もっとも今は ”ロビンフッター” が大手ヘッジファンドをやっつけるのだから凄い時代になったものだ。ただ③中国爆弾だけは全く異質なので、一段上の警戒感を持って臨む必要がある。全てをぶち壊すかもしれない。

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