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「リアル」が顕れる”材料無し”の相場。- ”米国債利回り昨年3月以来の高水準、連休控えポジション調整”

  昨年3/18を覚えているだろうか? 

 そう、「コロナ危機」が深刻化してマーケットのドル資金が逼迫「資金繰り対策」として株に加えて米国債の投げ売りが殺到し、2年債@0.53%、5年債@0.79%10年債@1.19%に急騰した。いわゆる ”パラレル” に売られたことから、明らかな「ドル不足」による「流動性危機」と推察される。

 その金利水準を昨日10年債は@1.21%と上回った30年債は本当に久々の@2.00%越えポイントは「特段材料がないこと」。実はこういう時のマーケットは示唆に富む。「リアル」が顕れている可能性大だからだ。

 ”ポジション調整” "材料出尽くし" 

 こういうニュースコメントに何度 "煮え湯" を飲まされたことか。いわゆる「後講釈」。経済指標等と相場の関係など何とでも言える。「リアル」はそんなところにはない

 10年の金利水準は昨年3月を上回ったが、今回は全く「危機」などではない。いや、むしろドルは余り気味だし、最近は金利低下の ”材料” ばかり。↓

 ①パウエルFRB議長による金融緩和長期化発言 → 2年米国債が一時@0.10%を割り込む。

 ②弱めの経済指標  - e.g.  1月CPI@1.4%(12月@+1.4%、予想2.0%)、2月ミシガン大消費者マインド指数(速報値)は76.2<予想80.9 ↓

ミシガン大学指数Jan21

 昨年3月との最も大きな違いは「イールドカーブ」*長短金利差が大きく開いて「スティープニング」(傾斜化)が進んでいる。

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 これだけ金利差が開くと債券トレーダーは「キャリー取引」の誘惑に常にさらされる(内容については 2020.11.13. 相場の暴落を阻む「キャリー取引」 ↓ ご参照。)結構な ”日銭” が稼げるので、相場の「売り」が止んだら買ってなるべく長く保有したい。だが今回のように不意の「売り」に直面するとMTM(Mark - to Market、時価評価)の損失で苦労して得た「キャリー取引」の儲けを吹き飛ばしてしまう「”ポジション調整”?ふざけるな!」という心境になるのも致し方ないところ(笑)。

 今回の「スティープニング」には「インフレ期待」が関わっているとの見方が市場では根強い。市場のインフレ期待値を示すBEI(Break Even Inflation Rate)は「コロナ危機」の前からこの2年間にわたってずっと上昇してきており、目処とみられた@2.00%を明確に踏み越えてきている

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 だがBEIも多分に ”仕掛け” 的要素があるのも事実。米国債トレーダーがBEIポジション=米国債売+TIPS(物価連動債)買を積み上げればこういう流れになる。5年BEIなどは「キャリー取引」も可能なので人気なのだと思うが、最近の経済指標を見れば ”手仕舞い” が出てもおかしくない。

 筆者が個人的に思うのは米国債から他市場への資金流出。トランプ政権下、2020年までは「過剰流動性」により米国債は ”異常値” まで押し上げられ超低金利が続いた日銀の「異次元緩和」で日本国内から押し出された400兆円余りが「外債投資」に回ったのも大きく貢献している。

 その潮目が変わり、金利の「正常化」が進んでいる過程と捉えれば ”材料無し” 相場での米国債売りも納得できるドル商品(貴金属、穀物、etc)、ビットコインなどへ動いており、おそらくこれが ”コア” だろう。

 このように ”材料無し相場” は ”コア” を確認する大きな機会となり得る。相場に詳しくない一般人や下手なトレーダーは見過ごす事が多いが、それなりに実績を積んでいるプロは逆に注視しているはず。年末のクリスマス休暇期間などもそうだが、** ”材料無し相場” が「大相場」に大化けすることがままあるからだ。

 **筆者も「年末の薄商いで誰かが振り回しているだけ」と高を括ってドイツマルクの金利先物買いポジションを「損切り」せずに正月休暇入り。ところが年末の流れを引き継いで年初から相場は大暴落、大火傷した苦い経験がある。今思えば「誰かがこっそり」買いポジションを外していたのだろう。それが相場の需給= ”コア” だったというわけだ。

 だから昨日(2/12)の米国債売りは見過ごせない買われるはずの相場で売られる時は特に要注意だ。***戻るはずと高を括っている「キャリートレーダー」の「損切り」が出れば、まだまだ売りがかさむ懸念もある。2021年の金利相場は ”一服” する時間が極めて短くなるのかもしれない

 ***実際リスクを取って見るとわかるが、 "ポジション” は株でも債券でも自分の子供のようにかわいい。売買する時に真剣に腹をくくっていればなおさらだ。特に理由も無く相場が逆に動けば納得がいかないもの。だがこれがマーケットの ”悪魔的” なところ(カイジ風)で様々な ”罠” を仕掛けてくる。本当に「人間性」が試されるので、破滅しない範囲で手掛けるなら絶好の「自分探し」のツールになり得る(オススメです。笑)。「自分」も知らなかった「自分」に気付くこともあるだろう。

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