「テスラ」とBTCとWTI。ー 「過剰流動性」はどの程度影響していたのか。
標題添付のチャートが何かすぐお判りの方はかなり米株に詳しい。そう、何かとイーロン・マスク氏が話題の「テスラ」だ。業績など色々取り沙汰され、2019年末に@86ドル程度だった株価は2021年11月には一時@1,200ドル台まで急騰。まさに ”時代の寵児” の趣だが、それでもトヨタなど日本の自動車メーカー全部の株式時価総額を上回ったのは "異常" だ。
PERなど専門的分析を加えるともっと正確になるだろうが、ざっくり①業績が年@+10%②インフレが年+10%と見積もっても、3年間で+60%だから、概算で@86ドル→@130ドル前後。将来の期待値を入れても@200~300ドルぐらいと考えると、今の@700ドル台でも相当に高い。残る+400~500ドルは「過剰流動性プレミアム」と考えるのが妥当だろう。
事実チャートは2021年末からFRBによる「利上げ」→「QT」(量的引締、Quantitative Tightening)から崩れ始めている。「損切丸」は株の専門家ではないのでザックリで恐縮だが、株価は業績+インフレ ≓ 年+20%分の上昇価値を織込みながら ”適正値” に収束していくと推測する。
そして「テスラ」といえば何と言っても「ビットコイン(BTC)」。マスク氏の ”つぶやき” で価格が大変動し、2022年に@60,000ドル台まで急伸した立役者といっていい。おそらく「テスラ」の株価は保有するBTCの含み益増大による相乗効果で上がった部分も大きい。
面白いのはBTCのチャート ↓ が「テスラ」の相似形であるということ。
こうなると*「買いが買いを呼ぶ」マジックが「売りが売りを呼ぶ」悲劇に転換してしまう。まあこの辺は株界隈では常識の範囲。
同じナスダックの代表銘柄の「アップル」株価 ↓ も「テスラ」ほど激しくはないが、2021年末から価格下落が始まっている。「過剰流動性プレミアム」の剥落が主因で、これが「金利感応度の高いナスダック」の正体。「金利」より「量」。 ー FOMC@5/4より。|損切丸|note である。
「損切丸」は株も暗号資産も素人同然だが、こと「金利」や「流動性」については ”専門家” を自認している。 続・「インフレ」攻防戦。ー "リセッション" で「インフレ」解消?|損切丸|note でコモディティ(商品相場)などにも言及したが、「過剰流動性」で膨れたモノは「過剰」→「正常」の過程で元に戻る。「QT」はまさにその過程であり、WTI ↓ が「テスラ」やBTC、ナスダックと同じ動きをしているのはその証でもある。
ウォール街が喧しく ”リセッション運動” を繰り広げているが、それは「QT」が彼らのビジネスに邪魔だからに他ならない。昨日の強い米雇用統計 ↓ を受けて、一体どういう言い訳をしてくるか、楽しみではある。
おそらく「景気が強いから株は買い」とか言ってくるのだろう。実際WTIも@104ドル台後半まで持ち上げてきた。
だが「現実主義者」米国債の反応はシビアだ。@2.9%台前半だった米国10年国債は一気に@3.1%まで売られ(金利は上昇)、7/27のFOMCでも再度+0.75%「利上げ」の見方が強まった。こちらは筆者同様、 ”リセッション運動” を支持する向きは少ない。@2.8%台での耐久時間があまりにも短かったことがそれを証明している。
何度も書いてきたが、「QT」で「過剰流動性プレミアム」が剥落すれば価格が下がるのはシンプルに物理的現象。はっきりいって「戦争」とか ”リセッション運動” とか全く関係ない。あとは①ここまでどれだけ織り込んできたか②市場流動性や規模、で今後の下落率は変わってくる。
もっともこんな状況を創り出したのが「バイデンーパウエル」コンビであり、「お金」のバラマキ過ぎが主因。まさに「放火魔の消防士」状態であり、しかも2021年前半に ”ボヤ” を消し損なっている。
ここまで火事が広がって住民が「インフレ」で焼け死にそうになっているのだから、水浸し=大幅「利上げ」+「QT」になっても火が消えるまで消火活動を続けざるを得ない。厳しい言い方をすれば、エネルギー価格の高騰が今回の「戦争」を起こすに気にさせたとも言えるし、今後の「被害」=株価等下落、景気後退は甚大なものになる蓋然性が高い(もうなってるか...)。
何度も苦渋を舐めてきた(苦笑)経験から、筆者は「量」の減少→「過剰流動性プレミアム」剥落による "物理的現象" の見方を変えない。だからこそ ”Forward Looking" (先見性)が重要なのだが、今のFRBにも日銀にもそんな気概は感じられない。残念ながら予見される ”悪い方” に近い結果を招くだろう。もっとも4京円もの「大借金」を抱える財務当局にとっては 今の「値上げ」は「インフレ税」。結局は「お金」の問題。|損切丸|note であり、 "予定通り" かもしれない。
1つ付け加えると、「インフレ」は人の ”凶暴性” を顕わにする。自省などとかくベクトルが内側に向かう「デフレ」と真逆で、「インフレ」の力は外に向かう。自分のせいではないのに食えなくなるからだ。世界各地で多発する暴動や今起きている戦争はその結果とも言え、決して偶然ではない。治安のいいはずの日本でさえ ”銃撃テロ” が起きるのは衝撃的ですらある。今後世界の ”凶暴化” は避けられず、マーケット云々以前に社会的対処が必要になる。その点は数字ばかり追う財務当局の思い通りにはならないだろう。
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