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中国にも舞い降りる?「ハゲタカ」( "Vulture" )。

 2007年2月にNHK BSで始まった*「ハゲタカ」(英題 "Vulture" 、原作:真山仁、主演:大森南朋)。「バブル」真っ只中、邦銀で融資業務を行った後1994年に「外資」に転職した「損切丸」としては大変興味深かった。

 当時 "バルクセール" (Bulk Sale)と呼ばれる不良債権「まとめ売り」を主導したのが、米国を中心にしたこの「ハゲタカ・ファンド」。不良資産を処分できなくて困っている邦銀につけ込んで安く買い叩く、いわば「バッタ屋商売」で、脚色もあって随分「外資」=「悪役」として書かれていた。ちなみに筆者の転職先は「ハゲタカ」ではなく英国の商業銀行です(笑)。

 中国で再びこの「ハゲタカ」が蠢きだしている。といっても** ”歴史” は意外に古く、2001年10月「華融」からモルガンスタンレー、リーマンブラザーズなどが4社合同バルク資産108億元で購入したのが「外資」の「特殊資産市場」デビューであり、翌年にはゴールドマンサックスが中国4大金融資産管理会社の1つ「長城集団」から80億元分購入。その後、ブラック・ストーンKKRなど名だたるファンドが続々参入している。

 **この「特殊資産」1つを取っても "ウォール街" がいかに中国市場に食い込んでいるのかがわかる。道理であれだけ熱心に「中国制裁」阻止のロビー活動を展開する訳だ。「プライベート・エクイティ」が金融ビジネスとして確立している今、「ハゲタカ」の呼び名はもう相応しくないのかもしれないが、今も昔も「お金が全て」なのは変わっていない

 こうした流れの中、2020年4月には中国最初の「外資」(香港資本)による株主の資産管理会社「海南新創建設資産管理企業」が成立。その他、深圳、広州、浙江省などの自由貿易区改革案の中で、不良資産の外資企業への譲渡が検討されるなど、いよいよ動きが本格化している。

 そんな中、ただでも少ない「中国」の材料を示す面白い記事があったのでここで紹介しておく(いずれも8/25 現代ビジネス記事より抜粋 ↓ )。

  "ここ数年は大国有企業は破産させない「剛性兌付」(=国家や党が後ろ盾となっている企業の社債はデフォルトしない)という "神話" から「ゾンビ企業」が跋扈(バブル期以降の日本とよく似ている)。それが今や破産を通じた「再建ムーブメント」が起き、状況が大きく変化。"

  "こうした倒産企業の不良債権を含む資産など取引する「特殊資産投資市場」が倒産急増で拡大。2021年第2四半期「特殊資産取引指数」は@338.18と、第1四半期より+21.9%、前年同期比では+12.8%上昇。”

  "最近では中国半導体国産化政策の核心企業であった清華大学運営の半官企業「紫光集団」が債権者の徽商銀行によって破産再建の申し立てが行われ大きなニュースになった。その他にも中国最大の大学運営企業「北大方正集団」、非国有の「平安集団」、国有の「珠海華髪集団」「深圳特髪集団」等が合同で投資し立て直すことになった。中国紙 ”21世紀経済報道" によると、この破産再建スキームの鍵は「平安信託」が受け持つ財産権信託だ。" 

 「バブル崩壊」から「不良債権処理」に至る道筋は、日本の不良債権処理とかなり似通っている。だが規模は日本の数倍に及ぶだろうし、独裁政権である点は大きく違う。いかに「ハゲタカ」といえどもお人好しの "米属国” 日本のように簡単に儲けることは難しいだろう。

 こういう事情を最も反映しているのが中国国債金利だろう(10年国債金利 ↓ )。「不良債権阻止」で高めの金利を維持していた中国人民銀行だが、今話題の「中国恒大集団」が「資金繰り」に行き詰まると途端に人民元の "蛇口" を開き始めた → 金利が低下

中国10年国債金利(5年)

 ポイントは「誰が損失を負担するのか?」

 「日本」では20年もかけて「低金利」「増税」等、結局「国民」から薄く広く徴収 "らしい" やり方だが、これが国の体力を奪い「デフレ地獄」に陥れた全体で負ったコストは膨大でありはっきり言って「大失策」

 「中国」はどうか。「日本研究」も進んでいるので同じ轍は踏むまい。どこかで強権発動をしてくるはずで「北京オリンピック」後がかなり怪しい。おそらく大半の「損失」は「中国国民」が負う事になるので、今のIT企業や学習塾業界への締付はその「序章」かもしれない。

 対象をアメリカの「ハゲタカ」に向けてくる可能性も十分にある「特殊資産」にデフォルト宣言すれば「損失」は米国金融機関が負うことになり、場合によっては「対米外交カード」としても有効だ。ただ「ハゲタカ」も黙ってはいまい。債権者として「表には出ない情報」を秘密裏に収集するはずで、直近の「中国株売り」を見るとそういう "臭い" がプンプンする。

 アメリカ対中国:「お金」の闘い ー こういう視点も持っておくと「何かの時」役に立つかもしれない。「お金」が動く時、「金利」には必ず変化が現れる

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