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迫り来る「インフレ」。 ー 「減少するお金」の奪い合い?

 標題添付のグラフはFRBが金融政策決定において重視している「コアPCE価格指数」迫り来る「インフレ」の足音は次第に大きくなっており、こういう指標をベースに「テーパリング」の議論をしている。一部「9月FOMCで議論を集約し、11月開始に向けて準備」と報道されているが当然だろう。

 これは米国に限った事ではない。例えば高インフレに苦しむブラジル ↓ 

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 CPI(消費者物価指数)は二桁@10%に迫り、10年国債は@11%超利上げを続けてもインフレは収まらず、市場に ”もっと、もっと” と催促されている(現在の政策金利は@5.25%8/4に+1.00%引き上げたばかり)。米国が*ボルカーFRB議長(1979~1987)時代に経験した「スタグフレーション」と酷似しており、一旦こうなると手が付けられない。

 *「アメリカはデフォルト寸前」。1990年頃良く言われていたが、ボルカー議長の急速な金利引上げにより訪れたリセッション「ボルカー・モーメント」と呼ぶらしい。超低金利の今では想像も付かないかもしれないが、1979年に@11%だったFFレートは1981年に@20%まで引き上げられた

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 「金利が上がるのは ”お金” のない証拠」

 20年以上「資金繰り」に関わってきた筆者が強く実感しているのが、「お金」が足りなくなると「金利」が上がること。邦銀が不良債権問題で格下げを喰らった時は「ジャパン・プレミアム」と言ってドル金利に+1~3%も上乗せされたし、「リーマンショック」後は欧米の大手行でさえ金利が上乗せされた。コストの問題より何より、とにかく「お金」が調達できなかった。この ”恐怖” 「資金繰り」を担当した人間にしかわからない

 実質「ドルペッグ」(米ドルを裏付けとした通貨政策)のブラジルトルコレバノン等の「高金利」はまさに「お金」に窮している事の裏返し株でも不動産でも叩き売って「資金繰り」をつけるしかない。万策尽きれば「デフォルト」であり、IMF(International Monetary Fund、国際通貨基金)が入ってきたりする。これは民間企業も同様で、最近なら中国恒大の2年社債が@30%台に急騰(前稿.「中国」から聞こえてくる "足音" 。↓ )。

 筆者が「金利」を扱った22年間は、日本の「ゼロ金利」に始まり、途中日米欧で「利上げ」はあったものの、趨勢としては「金利低下」局面だった。背景としては中国の台頭に伴う「グロバリゼーション」=安価な製品の大量供給による「ディス・インフレ」がある。

 それが「トランプ現象」からの「米中対立」、そして「コロナ危機」を経た「サプライチェーン」の分断「反・グローバリゼーション」(Anti-Globalization)へと大転換 ↓ 

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 「損切丸」が執拗に(笑)「ディス・インフレ」から「インフレ」への回帰を主張する根拠だ。この3年間の株価上昇も「インフレ」回帰を先取りしたものであり、20年周期の大きなトレンドとしてはまだ道半ばであろう。

 ただ1点「理屈」からずれたのは「低すぎる金利」

 本来ここまで物価が上昇すれば中央銀行は金利を物価相当に引き上げる。だがそうしない(できない)のは3京円を超える「大借金」のせいだ。多くはドル建で、新興国だけで86兆ドル(約1京円)もある。ドル金利が+1%上がるだけで利払い負担は▼100兆円も増え、おそらくデフォルトが起きる(8/31 続・「ジャクソンホール」@ 27 Aug 21概説 ↓ ご参照)。

 「 "低金利" + "インフレ" の世界」

 つまり現在の「低金利」「金融緩和」は「預金税」と読み替えるのが正しい国の "ツケ" を民間、特に "預金者" に押しつけているだけで、「預金大国」日本がその多くを負っている。決して歓迎できるものではない。なまじ「お金」があるだけに危機感が薄く、その事実に気付きにくいのが悔しい。

 ただここに来て日銀の「スティルス・テーパリング」にFRB、ECBが続く日銀同様「振る袖」がなくなりつつあるのかもしれない10年米国債金利2020年4月の@0.50%から様々な過程(8/26 おかしいのは株価ではない、金利だ!!  ↓ ご参照)を経て現在の@1.30%台に至っている。これが「減少するお金」を示すなら金利上昇傾向は続くはずだ。

 最近ウォール街には珍しくモルガンスタンレーが「米株弱気レポート」を出したようだが、もし「減少するお金」の「奪い合い」を示唆しているなら、まあ有り得る話ではある(おそらくは安値での買い直しが狙い)。こんな時に日本だけ選挙のために「日経@30,000円維持」? ↓ (9/9)。そうでなくても巨額の「預金税」を負担しているのに...。気をつけた方が良い。

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