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裏腹の関係にある「為替」と「金利」。ー 「為替介入」は良いサンプル。

 昨日(10/3)は眠れなかったFXトレーダーも多かったのでは?

 NY時間にドル円が@150円を超えたと思ったら「損切り」も巻き込んで▼3円近く暴落「ドル売介入」があったかどうか現時点で定かでは無いが、いずれにしろ「キャリートレード」はかなり積上がっていた模様。

 「金利差相場」ー。

 FXでは良くこういう言い方をするが「金利差」だけで決まるほど「為替」は単純なものではない「為替介入」は裏腹の関係にある「為替」と「金利」を知る上で良いサンプルなので、ここで改めて触れておきたい。

(参照) 大規模介入政策の”歪み”。ー(例)「円売介入」における金利と為替の連関性。|損切丸 (note.com)
 
「米国債金利上昇」と「ドル安」の相互メカニズム。|損切丸 (note.com)

 過去財務省・日銀が主導してきたのは「円高」阻止のための「ドル買+円売介入」。積み上げた金額は140兆円余りで、買ったドルの80%以上は米国債で運用されている。その額は世界一であり、いわば巨大な「キャリートレード」。どんな大手のヘッジファンドも真っ青な規模だ 

 売るための「円」は "輪転機" を回しているわけでは無く、実は政府短期証券(Financial Bills、FB)を発行して円資金市場から調達している。その額75兆円余り(外貨準備の約半分)。まあ循環式温泉のようなもの。

 これをドル・円の「為替」と「金利」に分解してみよう:

 <ドル>
 為替 ドル買 → ドル高
 金利 ドルの運用 → 米国債買い → ドル金利低下
 <円>
 為替 円売 → 円安
 金利 円の調達 → FBの発行 → 円金利上昇

 勘の鋭い読者はこれをパッと見てある "矛盾" に気が付く。「為替介入」は短期的に為替レートを動かす効果はあるが、反対側の「金利」は逆方向に作用する。例えば「ドル買+円売介入」 ↑ ならドル金利低下+円金利上昇=「金利差」縮小を生み出す。こちらは中長期的に「ドル売・円買」要因となるため「介入」効果を打ち消す。筆者が「介入は為替水準には影響しない」と主張する所以でもある。

 ちなみに今マーケットを騒がせている「ドル売+円買介入」ではこれと真逆の事が起きドル金利は上昇、円金利はFB発行減少により低下する。「為替介入」が米国債の売りを促し 続・「金利」の上昇が止まらない。ー 主要国債は「@4~5%時代」へ突入。|損切丸 (note.com) の一因を成しているのは間違いない。30年債などはもう@5%寸前

 このメカニズムの "真逆" を起こしたのが、そう、2022年2月に「国債無制限指値オペ」を発動した黒田元日銀総裁。これは歴としたとした「金利介入」で、これまでの「為替介入」とは逆のルートを辿ることになった:

 「国債無制限指値オペ」
 金利 円の供給 → 円金利低下
 為替 円の余剰 → 円安

 この時点では「ドル金利」には何の変化も起こさなかったが、「円安」により結果的に「ドル売+円買介入」を呼び込んだ。この無謀なオペが無ければ、ドル円はせいぜい@130円台だったはず。▼20円以上の「円安」起爆剤となったのは間違いなく、皮肉にも日銀の「利上げ」を前倒しする事に。

 因みに「インフレ」については人口動態による「人手不足」から2016年以降流れが反転 ↓ しており、「異次元緩和」「バスーカ」はいたずらに「円安」を煽っただけで物価には殆ど影響しなかったと筆者は分析している。特に最後っ屁の「国債無制限指値オペ」は "蛇足" でしか無い。

 筆者は英銀で「円金利」を担当し、財務省の外貨準備のドル運用の窓口も努めるという特殊な立場にあったため、年柄年中こんな事を考えていた。20年余りの間検証を重ねてきたのでこのメカニズムには確信があり、今の「損切丸」の骨格を為す部分でもある。目先の売った・買ったもいいが、大枠のキャッシュフローで理屈を理解して置くことも有用だ。

 当然ながらこれでJGBにも売り圧力が増す。ファンドFXトレーダーによる「キャリートレード」"投機" とするなら株も同じだし、住宅ローンを借りて自宅を建てるのだって立派な「キャリートレード」。生業で手掛けているかどうかの違いがあるだけで、どれも「お金」を得ようとして行う行為に違いはない。そんなことを言い出せば財務省こそ世界最大の「キャリートレード」= "投機" に認定されてしまうだろう。

 筆者はこの「ドル売+円買介入」を「低金利時代」「ディスインフレ」時代から「インフレ時代」への大転換の総仕上げと位置づけており、財務省・日銀の果たす役割は大きい今の日米欧の株価下落は「過剰流動性」プレミアムの剥落に過ぎず大騒ぎするような事でもない。

 「円金利」に関しては、仮にドル円を@130円台まで引き戻したければ「利上げ」も含め「国債無制限指値オペ」の "蛇足" で買った数十兆円ものJGBを市場に戻すことが大前提。その時に10年JGBが一体何%になるのか。市場ではその均衡点を探して動いていく事になる。

 最後に。行き過ぎた「清貧思想」で「儲ける」事を忌避するのはもう止めよう。何しろ世界最大の「キャリートレード」で国のトップが荒稼ぎしているのだから。アルバイトでも転職でも「お給料」のいい会社を選ぶのは当然だし、銀行にタダで「お金」を貸す=「預金」の義理も無い「インフレ」なのだから、もう少し自分の「お金」に働いて貰う事を考える方がいい

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