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続・「ドル建日経平均」戦略の崩壊 ー 「溺れた犬は棒で叩け」?

 「ドル建日経平均」戦略の崩壊 ー 巻き込まれた「新NISA」|損切丸 (note.com) の続編

「溺れた犬は棒で叩け」(『打落水狗』= 中国の「孫子兵法」)

 この場合の「溺れた犬」=「狂犬」の事らしいので若干語弊はあるが、「ゼロサムゲーム」のマーケットにはピッタリの諺かもしれない。今回 "棒で叩かれている" のは膨大な額の「円キャリートレード」を積み上げてきたヘッジファンド年初来リターンがマイナスに落ち込んだ所も続出している

 前財務官が彼らの "手口" を研究していたというから、今回は珍しく財務省+日銀の勝ちこれまで散々やられてきた側がやり返したという事。「新NISA」を始めたばかりの人には気の毒だが、そう言う意味では全体としては「国益」に適っている。「為替介入」や「利上げ」等「国家の意志」に背いたトレードは分が悪い。特に今回のように "手口" を研究されていれば尚更で、あまり ”相手” を舐めない方がいいという教訓でもある

 前稿.奴らに儲けさせるな!Ⅲ|損切丸 (note.com) でも解説したが、昨日(8/7)今日(8/8)と東京時間オープン直前に①まずドル円を売り崩す②連れて日経平均先物を売り崩す、というような仕掛けをしているがいずれも空振り。どうせドル円を「損切り」するなら日経平均先物売りで「新NISA」勢の「損切り」を誘発して取り返そうと「溺れた犬」が暴れているようだが、諺通り「棒で叩かれて」返り討ちにあって血だらけになっている

 どうせ "首" になるなら、と再度「暴落」に賭けたのだろうが、こういう追い込まれた「犬」のあがきは成功した例しがない。そもそも*「取り返そう」としている時点で主観が入りすぎて冷静な判断を欠いている

 *英銀で株のアービトラージ(金利裁定取引)のファンディングを担当した「損切丸」的考察では今回の暴落は「ゼロ金利解除」に伴う一時的なもの。それだけ「ゼロ金利」というのは「過剰流動性」を生みやすい政策であり、「プラス」金利に引き上げると「お金」を取り巻く環境が激変する

 ここからの「利上げ」は日銀にとってそれ程大変ではない@0.25%だった "コスト" が@0.50%→@1.00%と変化していくだけ「市場流動性」には今回のような大きなショックは及ぼさない。それはFRBが@5.25%まで「利上げ」した局面も同じだ。株価やドル円を見ながらじっくり取り組んでいく事になろう。「市場が不安定な時は利上げしない」は "常識"

 筆者が注目しているのは米国債、特に10年超の長期債の動き

 昨日の10年債入札も不調に終わったが、9月FOMCで「利下げ」確実なのに長期債の頭が重い( ≓ 金利が下がらない)。やはりドル建債券で大やられした邦銀が引っ込んでいる影響がでかい

 この10年は「ゼロ金利」に苦しめられ挙げ句に「異次元緩和」「XXバズーカ」で保有しているJGBをもぎ取られ、半ば押し出されるようにドル建債を買い続けてきた邦銀。その額や400~500兆円。 おかしいのは株価ではない、金利だ!!|損切丸 (note.com) の「過剰流動性相場」を主導してきた

 グリースパン元FRB議長の言葉を借りれば ”Conundrum" (低金利の謎)がずっと続いてきたわけで「円キャリートレード」や「新NISA」を通じてナスダックや「マグニフィセント7」を持ち上げる原動力となった。財務省(2兆ドル)や人民銀行(3兆ドル)の「外貨準備」も一役買っている

 だから 続・「過剰流動性」の総本山は日本 ー 気になる「円キャリートレード」の行方|損切丸 (note.com) と解説しているわけで、今回の日銀の「利上げ」は相当重い意味を持つ。即ち低すぎた長期金利の是正に伴い高すぎた株価等の資産価格や異常な「ドル高」が "正常化" することになる。今回の「ドル円」+「日経平均」の暴落はそのコンテキストの中にある

 だから「溺れた犬」がいくら暴れようと慌てることはない。マイルドな「インフレ」が続く以上、日経平均は再び@4万円に向かうと筆者は推定している。その途中で「利上げ」があるだろうが今回ほどのショックにはならない"慣れ" もあるだろう。ドル円も適正値の@130~135円に向かって "正常化" すると見ている

 「過剰流動性相場」の終焉で「円キャリートレード」を主体にした「ドル建日経平均」戦略が崩壊したヘッジファンドの苦況は今後も続く。だがこれは日本人にとっては千載一遇のチャンス「溺れた犬は棒で叩け」は我々のメンタリティーには合わないが、ここは「棒で叩いていい」。これまで散々叩かれてきたわけだから。この国の "逆襲の芽" は案外こういう所に潜んでいるのかもしれない。 "正常化" の後は大分リスクを取りやすくなる。あとはへこたれずに果敢に挑むのみだ

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