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マーケットは刻々と変化する。

 「この前まで円高って言ってたじゃないか」

 友人から罵声(?)を浴びたことがある。どうもFXで損したようなのだが「損切丸」としては苦笑いするしかない。マーケットは刻々と変化する。読者の中にも同じ様な感想を抱いて読むのを止めた方がいるかもしれない。言い訳ではないが、元「金利」の専門家としてはどうしても半年~5年先の中長期の見通しが中心になる。今日明日の売買のヒントが必要な方にはあまりお役に立てないかもしれない(陳謝)。

 「2016年以降、世界はインフレ時代に転換、突入」

 タイミング良くというかなんというか、筆者が前職を退いたのが2016年10月、「損切丸」を始めたのが翌年の4月だ。当時は「金利は死んだ」といわれ、アメリカは「ゼロ金利」、ヨーロッパと日本は「マイナス金利」全盛で、ようやくアメリカが「利上げ」に向けて重い腰を上げたところ。こんな ”自説” を掲げてもなかなか理解を得にくかった。

 だから「インフレ」とか「利上げ」に力点を置いても???という反応が多かったのも事実。まして日本の30代以下の世代はモノの「値段」が上がった経験がない「貯金」して待って買えば、どんなモノも必ず安く買えた。これが20年も続いたのだからピンとこないのも致し方ない。ただ「バブル」を経験した筆者としては「インフレ」転換時にどう切り替えるかヒントを提示したかった。だから現在の「インフレ」騒ぎには隔世の感がある。

 幸か不幸か、2019~2020年には「コロナ危機」が勃発「デフレ」マインドは益々強化されてしまった。反面、アメリカを中心に起きた現象が「過剰流動性相場」。筆者には一種の "デジャブ" だったが、ドンドン上がるNYダウやナスダックを理解できない日本人も多かったのではないか。

 天邪鬼の金利トレーダーらしく、これは「インフレ」を強化する要因、と「損切丸」は逆読み。理由については コロナ後の世界 - 「グローバル分業」は断裂へ。|損切丸 (note.com) コロナ後の世界 Ⅱ - これから起こりそうなこと。|損切丸 (note.com) 辺りをご参照願いたいが、危機直後に書いた割にはおおよそ外れてはいない( ↓ 一連のシリーズ)。
 コロナ後の世界 Ⅲ - コロナ危機と株価|損切丸 (note.com)
 
コロナ後の世界 Ⅳ - 「インフレ」「デフレ」どちらに向かうのか?|損切丸 (note.com)
 
コロナ後の世界Ⅴ ー 「中国離れ」が早くも顕在化。「台湾」がゲームチェンジャーに?|損切丸 (note.com)

 だから2021.3.17.の記者会見でパウエル議長が「インフレは一時的(transitorry)」と発言した時は大きな違和感があった。それでも政策を決めるのはFRBでありそこは "Respect"  していたが、やはりというか パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸 (note.com) ”バイデンフレーション” の衝撃。|損切丸 (note.com) の流れに急変。これは推測だが、大統領選にギリギリ勝ったバイデン大統領からの政治的プレッシャーが大きかったのだろう。大統領が代った途端に株価が下がったのでは面目がたたない。

 ここで筆者がまず思い起こしたのが1994年2月からグリーンスパン元議長が敢行した半年で+1.50%もの急速な「利上げ」。当時沸騰したのが「中立金利」の議論だ。突然の「利上げ」どこまで「利上げ」があるのか、マーケットは慌てふためいたが、結局「@4.0~4.5%」に決着。いみじくも「潜在成長率@3.0~3.5%+1%」がその根拠だった。

 こんな事は今のウォール街の経営陣やベテラントレーダー達も認識しているはず。それなのに2022年初からFRBの「利上げ」の上限を「@2%運動」「@3%運動」を展開したのは、完全に株価を下げたくない業界の "都合" 。そこから生み出された「偽りの逆イールド」には何度も警鐘を鳴らしてきたが、結局政策金利は@5%超え今頃になって「中立金利」などと言い出すのは不謹慎極まりない

 ただ、さすがに@5.25%はかなりの「高金利」なので「ドル金利」主導の相場は終わったと考えていい。「利下げ」はベビーブーマー引退に伴う「人口動態」→「人手不足」の 続・米「インフレ」の粘着力。ー 日本では「タクシー行列」に "異変" 。|損切丸 (note.com) を考えれば時期尚早。それは日本も同様で、むしろ1年遅れでアメリカを追う立場になる。

 ここからは「円金利」が主役日本で「円安」が政治問題化するのを初めて見たがドル円が150円、160円とこれ以上「円安」になるのは放置できないので「ドル売り介入」「利上げ」は不可避。あとはタイミングの問題。「財政健全化至上主義」の財務省もこの流れには逆らえまい

 前稿.「ドル高」「円安」の終焉(?)。ー 「GDPギャップ」プラス転換が示唆する事。|損切丸 (note.com) で「円買い」の可能性に言及するのも、あくまで中長期的な見方。残念ながらFXの短期売買には貢献できない。

 シナリオがひっくり返るとすれば+2%「利上げ」しても「円売り」が止まらなかった時ドル円が150円を超えてとんでもない「スタグフレーション」が日本を襲えばまさに ”阿鼻叫喚” 。日本への観光客も減る。「利上げ」は前倒しの方がコストが少なくて済むと個人的には思うが...。71歳の日銀総裁に決断できるのか、少し不安もある。 

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