コロナ後の世界Ⅴ ー 「中国離れ」が早くも顕在化。「台湾」がゲームチェンジャーに?
コロナの感染源について米中が激しいやり取りを繰り返しているが、これらの政治的パフォーマンスとは別に、ビジネスの世界でも「中国離れ」の具体的動きが起きつつある。主な動き :
・米国、欧州等から中国へ総額1京円を超える損害賠償請求
・オーストラリアが「独立機関」によるコロナ感染源調査を要求
・WHOへの台湾オブザーバー参加をアメリカ、ニュージーランドが支持
・日本、アメリカが半導体工場を国内誘致へ。 e.g. インテル、TSMC。
・アップルが台湾に新工場建設。
・日米欧豪など相次ぐ自国企業買収防衛策。外資規制、外為法(日本)
・「ワクチン開発狙ったハッキング」ーアメリカが中国に警告。
それに対し中国側の対抗策(?):
・尖閣諸島沖の日本領海内で日本漁船追尾。
・南シナ海で新たな行政区設置・ベトナム漁船沈没。
・WHO、台湾を「中国台湾」と呼称。
・香港で反中国活動家を次々と逮捕、監禁。
・オーストラリア4社からの牛肉輸入を停止。
直近の出来事をざっと挙げただけでもこれだけあるが、今後も続くバトル、両陣営とも勝算はあるのだろうか。中国が軍事を盾に「貿易」を人質に取って来る戦術はある程度織り込み済み。オーストラリアの牛肉などは1,200億円分というから、畜産企業にとってかなりの打撃ではある。
「コロナ前」ならこの程度の揉め事は「英国流」でまあまあとやり過ごしたかもしれないが、「マスク外交」など「コロナ後」の中国の対応を見ればそうもいくまい。「鉄の結束」の Commonwealth 諸国(旧英国領)は、こういう「脅し」めいたことを最も嫌う。一度屈すれば以降ずっと隷属することになるからだ。それは他国も同じだろう。
ただ標的を直接アメリカにしないところがいかにも狡猾な彼の国らしい。米、小麦などの「食料」はほぼ100%自給できるが、畜産用のトウモロコシなどの「飼料作物」はアメリカに頼っており「倍返し」が確実だからだ。
こうやって事例を並べると、今回の「コロナ危機」、「台湾」がかなりクローズアップされていることがわかる。防疫がほぼ完璧だったこともあるが、半導体などでもその存在感は際立っている。国土や人口では到底太刀打ち出来ないと思いきや、中国と堂々と渡り合っている "なかなかの国"だ。
日本でも「台湾」人気は高まっており、国内での存在感は急激に増している印象だ。確かに自動車は中国ほど買ってはくれないだろうが、東南アジアと並んで生産拠点としては有望だろう。コスト云々より何しろ安心だ。今回の「中国離れ」では重要な「ゲームチェンジャー」となりそう。
さはさりとてここまで足を突っ込んでしまった以上、足抜けは各国とも容易ではない。特に自動車の「お得意様」としている日本、ドイツは、この「脅し」をどういなしていくのか、難しい対応を迫られるだろう。
しかし対応が難しいのは中国も同じだ。「脅し」は諸刃の剣であり、返り血を浴びる可能性もある。特に生産拠点を失うことは雇用の喪失にも繋がり経済的疲弊を招いていくからだ。そうなればもう「お得意様」扱いはしてもらえない。
そして世界中の国家債務は今回の1,000兆円余りの財政出動を受けて8,000兆円を超えようとしている。8,000兆円...。歴史上でも見たことがない途方もない数字である。これは日米欧、そして中国も共通の重荷である。
- 膨張する国家債務と「ブロック経済」-
あまり考えたくはないが、状況は2回の大戦前と似通ってきている。
一点だけ前向きな出来事は温室効果ガス排出量の急減だろうか。何と中国だけで25%も減ったらしい。確かに中継で見る北京の空気は澄んでいるようだし、ロサンゼルスでも景色が大分良くなったと聞く。
リーマンショックの時は一時▼3%減ったそうだが、その後の景気回復ですぐに戻ってしまったらしい。今回は「禍転じて」いいきっかけになると良いのだが。しかし温暖化を防ぐために経済を殺す必要がある、とは人類にとっては何とも皮肉な話ではある。
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