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市場を支配する ”恐怖” 。ー 市場の歴史は "Bubble & Crash" の繰り返し。

 「景気後退懸念から株価が急落」

 日本でも朝からこういうニュースが流れているが、これはおかしい。景気が後退するなら「利上げ」など不要なはず「悲観」が大好きな日本らしい伝え方だが、今問題となっているのはむしろ景気の「過熱」。つまり「インフレ」である。「過熱」していない日本では上手く伝えられないので「アメリカのせい」となってしまうのだろう。「黒船」以来繰り返される「何でも人のせい」≓「他人依存」の悪しき慣習である。

 さて、 "風雲急" を告げる国債市場。ー "暴風雨" は為替、株式市場へ。|損切丸|note で昨日からずっと見てきたが、今は ”恐怖” が市場を支配している。明日(6/15)のFOMCでは+0.5%の「利上げ」が確実視されてきたが、今は「+0.75%、ひょっとすると+1%もあるのでは」に変化。株式市場は完全に怯えている

 ここで状況を客観的に整理してみよう。暴落したと騒いでいる株価だが、NYダウも日経平均もドイツDAXも2020年終値近辺に戻っただけ。 ”リセッション” 騒ぎには違和感がある。英FTなどは大幅にプラスだ。「コロナ前」2019年末のNYダウが@28,000ドル台だからまだ距離がある。

 投資資産で下落率の高いナスダックやビットコイン(BTC)は、バイデンーパウエルコンビがばらまいた2兆ドル余りの「過剰流動性」の恩恵を受けていた可能性が大。まさに "Bubble & Crash" であり、膨れた分が戻していると整理できる。*「コロナ前」2019年末のナスダックが@9,000ドル台、BTCが@7,000ドル台であったことを考えるとまだ "道半ば" 。

 今のBTCを見ていると1998年に破綻したLTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント)が5倍、10倍と ”レバレッジ” を拡大していく中で最後に "掴まされた"「ルーブル建国債」を彷彿とさせる「デフォルト」で被った巨額損失のレパトリ(損失穴埋め)で落ちたドル円が3日間で@145円→@120円、▼17%の下落。あの時は先進国で唯一「超金融緩和策」を発動していた「円」が「過剰流動性」の基地だったが、ジャブジャブの「お金」が最後に行き着く先はいつも「危ないモノ」今回は日米欧の3極が基地なので規模が全然違う。心してかかるべきだろう。

 **下落幅の大きい中国株には別の事情が存在する。

 ** ”中国規制当局、クレディスイス、ゴールドマンサックス、UBSにトップバンカーへの報酬の方法について詳細を報告するよう指示”
  トランプ大統領の時代から米中対立を避けるよう必死にロビー活動をしていた投資銀行業界だが、ここにきて「共同富裕」が大きく立ちはだかっている。14億人のマーケットは魅力的だが、ボーナスを貰えないのに一生懸命働くバンカーなどいない。この時点でこういうニュースが流れると言うことは、裏で数年に渡り暗闘が繰り広げられきたのだろう。欧米の「お金」が継続的に抜けて言っていることがその「結果」を証明している

 繰り返しになるが、混乱している株式市場の中で日経平均は英FTに次いで健闘している部類だ。要因はいくつかあるが、やはり「過剰流動性」の恩恵をほとんど受けてこなかったことだろう。 「公的マネーが大株主 8割」 ー 日銀・GPIFによる「株買い占め」。なぜ今更 ”表沙汰” にするのか?|損切丸|note で欧米投資家が "ソッポ" を向いていたのが幸いした。まさに  "怪我の功名""Bubble" が無ければ "Crash" もない

 もう一つ、QT(量的引締)でいえば 「お先に!」 ー 着々と進む日銀による「ステルス・テーパリング」。|損切丸|note で実は2021年央に日銀は既に "発動" している”政治的体面” があって表向き「テーパリング」と発表されていないが「量」の増加は停止米国など「過剰流動性の宴」を謳歌した市場とはそもそも根本が違う

 こんなマーケットの中、こんな事を言うと "天邪鬼" とのご批判を受けそうだが、日本株について「損切丸」は必ずしも否定的ではない。いや、むしろ前向きでさえある。これは不動産市場にも言えるが、PERや「イールドスプレッド」から考察すれば圧倒的に「割安」だからだ。「利上げ」も欧米ほどドラスティックにはなり得ない。実はグローバル投資家の中には日本市場を虎視眈々狙っている向きも多い。

 ではなぜ "ソッポ" を向かれたのか。やはり政策、特に金融・財政政策の間違いの側面が大きい。最大の問題はマーケットを生かしてこなかったこと「理想の社会主義国」日本では、市場は国が全てコントロールできるという「昭和の幻想」が消えず、ずっとマーケットを敵視してきた「投機筋」なんて言い様で、まるで地下組織やショッカー扱い(笑)。日銀に株を買わせるのは、まさに「水戸黄門」的発想。いかにも古い。

 本来市場は非常に効率的で、金利や為替、株価などを通して最小限のコストで社会を最適化する機能を持つ。だから金融政策を「正論」に基づいて展開すれば、「金利」を通じて効率的に所得の再分配が行われる。「印籠」など必要無いのである。もう少しマーケットを信用すべきだろう。

 邦銀で7年、英銀で22年働いてきた「損切丸」日本人のポテンシャルを信じて疑わない当たり前の事を普通にやっていけば「日はまた昇る」問題は「既得権益」で、永田町や霞ヶ関が邪魔さえしなければ「円安」という武器を手に入れた今、普通に日本は勝ってしまうだろう。そう言う意味では「XXXミクス」などと余計な事をした前々政権より何もしない現政権の方がまだまし(苦笑)。邪魔だけはしないで欲しい。

 この30年、マーケットを最大限に生かしてきたのは他ならぬアメリカ。だがそれも "やり過ぎ" で苦境に喘いでいる。FRBが長年市場の信頼を勝ち得てきたのは "Forward Looking" で先見性の高い金融政策を実行してきたからで、その点はグリーンスパン元議長の貢献が大きいバーナンキ、イエレンと何とか繋いできたタスキが、今パウエルで途絶えようとしてる。明日、FOMCでどのような決断がなされるだろうか。

 6/16、17の日銀政策決定会合も注目。「利上げ」できない状況は理解するとして、「無制限国債買取オペ」などという "間違い" を正せるかバブル以降の日本の政策は、この "間違い" を正せなかったことが全て。30年も賃金が上がらず苦しんだが、「団塊」が引退していく中、いい加減もう「当たり前」に戻す時。筆者はまだ日本を捨てていない。

 

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