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「分断」に向かう世界 Ⅲ。ー 金利から見る「ドルからちぎれた経済圏」。

 彼の専制国家の外貨建国債が "遂に"「デフォルト」になった。とは言っても格付会社も既に格付を止めているし、海外投資家保有のルーブル建資産は実質売却禁止になっているため、マーケットには波風も立たなかった。折しもG7が開催されている最中で象徴的意味合いしかなかったのだが、まさに「ドルからちぎれた経済圏」ということになる。

 こうなるとアメリカが作り上げた「マーケット資本主義」からは離れた経済圏を作ることになるので、1ルーブルが対ドルでいくらでかなど何の意味もない。どうせ通貨同士のやり取りはなくなるのだから、極端な話明日から1ドル=1ルーブルでも構わない。実際為替取扱高は激減しており、相場は形骸化している。

 いくらSWIFTから排除されているといっても、為替取引可能な銀行は残されている訳で、何度も書くが直近3ヶ月の「ルーブル高」が "リアル" ならさっさとルーブルをドルに換えてユーロ建・ドル建国債の利払いなり元金支払をすればいい。そうすれば*「デフォルト」などあり得ない

 *未だに元利払いを「ルーブル建」に拘っているということは、ドルは戦費補充のため欠かせない事の裏返し。「ルーブルで払うと言っているのに受け取らないのは単なる嫌がらせ。デフォルトではない」という言説を目にするが完全な事実誤認だ。「ドル」「ユーロ」に換えられない「ルーブル」を受け取る投資家はいないし、仮にFXで換えようとすれば「ルーブル」大暴落は必定。つまり通貨としての "正しい価値" を証明できる状態にない。

 まあ300年以上前のピョートル大帝や100年前の毛沢東などと言っている時点でかなり現実離れしている訳で、いっそのこと為替取引や金融政策など止めてしまえばスッキリする。だが、どうもそこは捨てきれないらしい。

 「実質金利」=物価、信用リスクを加味した正味の金利が現在のマーケットの根幹を成しているが、既に他国とはまともに比較できなくなっている「損切丸」でも ”ランキング” から外してしまった ↓(苦笑)。

 もう「実質金利」を軸に為替や株価を「投資」対象として比較するのは妥当ではない「ドルからちぎれた経済圏」の国々も出始めた。代表的なのが「インフレには利下げ」のトルコ

 15年程前までドルとは等価に近かったトルコリラは10分の1以下にまで下落。打つ手無しの状況で開き直った状態だ。マックも iPhone もいらないと覚悟を決めればいいのだが、これだけ世界的にSNSが拡散してしまった現状下、特に若い世代がそれを許容するとは思えない

 ただ不幸なことに人口動態の変化から「シルバーデモクラシー」が「独裁型政治」を許してしまう政治的背景があり、「コロナ危機」が多くの貧困国の左傾化を促している。実際は「共同富裕」なんてのは幻想だし、社会主義国家の方が余程「富の集中」が起きやすいのだが、これも大いなる「歴史の皮肉」「非・グローバル化」で起こった「インフレ」が一般民衆の "激しい感情" を揺り起こし、「ミサイル」「暴動」に化けている

 微妙な位置にいるのがブラジルで、為替・金利政策は俵一枚「ドル」に残っている。ただ南米諸国の「米国離れ」は深刻で、賄が横行している状況下、人民元で半ば ”買収” された国もある。もっとも行き着く先は「スリランカ」であり、厳しく言えば「デフォルト」の過程が変わるだけだ。

 インドもかなり微妙原油を格安で買えるのは良いが、副作用としてルピー安が進行。こちらもかなりの額の「お金」が裏で流れているのは確実だが、一部の政治家、企業家の懐を潤すために多くの国民が「インフレ」で犠牲になっている。BRICSにもG7にも参加してバランス外交を展開しているが、隣国スリランカ、パキスタンでは暴動が起きており、いつまでこんな状況を続けられるか、注意が必要だ。

 完全にアメリカ寄りと認識されている日本でも、実はトルコ・インドと同様な状況が生まれている。原因は「独裁的な金融・財政政策」「通貨安」を促すような「金融緩和」の続行は他のG7諸国のそれとは対称的で、まさにトルコ的政策「預金」というバッファーがある分我慢しているが、さてどこまで続くか。7月の参院選が1つの試金石にはなる。

 JGB(日本国債)の長期チャートを見ると、この10年水面下に潜っていた飛行機が離陸する寸前に見える。ここから ”テイク・オフ” すると考えるのが自然で、ヘッジファンドが金利上昇方向に賭けるのは当然だろう。

 これを力尽くで抑える「無制限国債買取オペ」はまさに「社会主義的政策」であり、悪く言えば「アメリカ型マーケット市場主義」の否定だ。今は「インフレ」抑制のため「ドル高」を米国政府が容認しているが、彼らが嫌う「人為的介入政策」の代表例でもある。丁度来年4月に日銀総裁も変わるし、極めて「時限的政策」と見ておいた方が良いだろう。

 日本の「インフレ」体温を測るには、10年より30年JGBを見る方が正しく認識できる。期間が長すぎてさすがの日銀も「無制限」には買えないからだ。ヒストリカルに見ても@1.30%は極めて重要な転換点で(今日6/28到達)、抑え付けられている10年に先立って ”テイク・オフ” する可能性が高い。住宅ローン金利も連動し、保険会社の運用が集中するゾーンでもあり、金利上昇は「低収益」に喘ぐ金融機関のサポートにもなる。

 そうなると短期の「普通預金」「定期預金」を大量に抱える「預金者」が「インフレ」の最大の犠牲者になる。そう言う点で多少の違いはあれど状況はトルコやインドと同様であり、実は日本も「ドルからちぎれた経済圏」入り? この30年間賃金が上がらなかったのが良い例であり、既に「たかられる側」に位置づけられているのかもしれない。

 この世は所詮「ゼロサムゲーム」今自分が苦しい分、おいしい思いをしている人がいる「投資」や「リスク」はそれをひっくり返すための方法の1つであり、自らの現状を把握して ”やるべき事” をやるだけ。だから一助になればと「損切丸」をこんなに(苦笑)書き綴っている。

 外資系で22年勤めた者として、これ以上日本人が喰い物になるのは耐えられない今回の「インフレ」は日本人が覚醒する良い機会だ。何もしないのも「リスク」であり、まずは自分の「資金繰り」を考えて直して見るのをお薦めする。例えば筆者が励行しているのは保険料等「必要経費」の前払い11年前に「太陽光パネル」を設置したのも昨年5月にPHEVを買ったのも電気代、ガソリン代の「前払い」という位置づけだった。意外と「抜け道」があったりするものである。

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