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続・「ジャクソンホール」@ 27 Aug 21概説 ー 米国債の「需給変化」見通しと「利上げ」。

 重要イベント「ジャクソンホール」を通過し、マーケットはほっと一息。「テーパリング」の影響について、直接影響を受ける米国債の「需給変化」見通しについて、具体的な考察を行ってみよう。

 現在のFRBによる資産買入額:(月間)米国債 800億ドル MBS 400億ドル

 米国債発行額(JPモルガン推計。グロス、除.償還、米短期国債):

 2021年 4兆4,070億ドル → 2022年3兆5,460億ドル(▼8,610億ドル)

 2021年10月3,740億ドル → 2022年10月2,860億ドル(▼880億ドル)

 元々来年にかけての米国債の発行減額が国債の買い要因として指摘されていたが、当然FRBもこの事実を承知の上で「テーパリング」に踏み出している。ここで仮にFRBが米国債買入800億ドルをゼロにしても、計算上は「需給変化」に影響はないことになる。マーケットへのネガティブ・インパクトを最小限に抑えるという観点からもドンピシャのタイミングだ。

 だから*米国債も「キャリートレード」狙いで買いから入ってくるのはある意味合理的だし、金利が上がらないのだから株や商品に買いが入ってくるのも「予定調和的」ではある。

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 1つ ”盲点” を指摘するならば、これまでの "低金利" は米国債発行減額+FRBによる買入800億ドルを前提に形成されてきたため、FRBによる "買入減額" は金利上昇要因として働く可能性もある。まあそれも実際に "買入減額" が実行されてからの事になるし、金利マーケットが本格的に動き出すのは「利上げ」が現実的になってからだろう。

 そうなると次に鍵を握るのは「米雇用統計」。今週末発表予定では:

 8月 米失業率 (予想)@5.7% (前月)@5.4%

 非農業部門雇用者数 (予想)+23千人 (前月)+943千人

 今後は「利上げ」を巡って米国債市場では激しい売買が為されるだろうが、「利上げ幅」を巡っては「マクロ的視点」から無視できない事もある。

 世界の有力金融機関が参加する国際金融協会(IIF)推計:

 2021年1-3月期 世界債務残高 289兆ドル = 3京1,790兆円 @110円

 金融機関の債務残高が減少したことで2年半ぶりに減少したが、政府債務は引き続き増加している。「京」単位の巨額債務であり、仮に金利が1%上昇すればそれだけで "利息負担" が▼318兆円も増えてしまう新興市場の債務残高は86兆ドル(9,460兆円)もあり依然として過去最高。その多くはドル建債務であり、経済基盤の弱い国々に "利息負担" が直撃する

 「中立金利」=政策金利@2.5%がFRBの中長期的目標とマーケットでは見做されているが、そうなると年間の世界の "利息負担" 増は単純計算で▼795兆円と膨大な額になり、複数の国のデフォルトが不可避になる。現在の利上げ予想が+1.5%止まりなのには "そういう事情" も透けて見える。

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 こう考えると「損切丸」で度々指摘している「低金利+インフレ」の世界はまんざら絵空事とも言い切れなくなる。それほど借金が膨張し過ぎて、もう手が付けられない状態と言っていいのかもしれない。

 あとは「誰がコストを負担するのか」

 インフレが本格化すれば焼け死ぬのは「国」ではなく「個人」「民間企業」ということになる。物価上昇に見合う「利息」も受け取れず、壮絶な "サバイバル" になりそうだ。徐々に「お金」の量が減る、或いは「お金」の価値が減価していく中、その過程で**どこに "ツケ" が回るのか、今後見極めていかなければならない。

 **中国国民が「人民元」減価「インフレ税」を払わされるのか、あるいは「通貨安」フィルターを経て日本、あるいはブラジルトルコなどが「高金利」とともにコスト負担を強いられるのか。株価のパフォーマンスだけ比較すると、主要国では中国と日本に「請求書」が回ってきているようにも見えるが、さて...。

 歴史を振り返れば第一次、第二次世界大戦を代表例として、膨張した国家債務は「インフレ」+「戦争」で精算されてきた。令和の時代、「戦争はコストに合わない」と考える国々も増えてきており、その分「請求書」のツケ回しが激化するだろう。

 「お金」に疎く「貯金好き」で「お人好し」の日本人が格好のターゲットになりそうで怖いああ、日経平均...。↓(8/17)がその "予兆" でなければ良いのだが。個人としては「投資」というよりも「資産防衛」を考える局面に差し掛かっている。


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