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本当は金利なんて上げたくないのに...。ー 「インフレ」で「お金」は "押し付け合い" 。

 ”8/14 アルゼンチン中央銀行は政策金利を+21%引き上げ@118%に”

 ゼロ金利に慣されている日本人にはにわかに信じられないかもしれないが、これが本当の「通貨安」「円安」騒ぎがいかに「お金持ち」の戯れ言か。実際物価上昇率は年率@116%に達しており、政策金利は整合的ではある。まあトルコリラ ↓ をもっと酷くした状態だ。

 同時に通貨ペソの▼18%の切り下げを発表。きっかけは大統領予備選で極右のミレイ候補が1位になった事。この御仁、「中央銀行を廃止して経済を "ドル化" する」とぶち上げているそうだが、それでもこういう候補に票が入ってしまうのは、それ程生活が困窮を極めているから。

 財務省の「財政健全化至上主義」もそうだが、どの国の財務当局も本当は金利なんて上げたくない。コストが嵩むからだ。それを極端に政策化したのがトルコのエルドアン大統領の「インフレには利下げ」。経済学的には完全に矛盾しているのだが、筆者に言わせれば "インフレにならない事を前提に" なんて但し書きがついたMMT(現代貨幣理論)も同列。マーケットは「通貨安」という形で明快な答えを出している。そのツケは大きい。

 CPIが低下して10年国債の「実質金利」が+7%台まで上昇しているブラジルなどは「利下げ」したくて溜まらない。だがFRBの「利上げ」が大きな阻害要因になっている。やはり世界の「需要」を引っ張っているのはアメリカ。そこで「インフレ」が起きればFXを通じて世界中が引っ張られる。

 YCC(イールドカーブ・コントロール)金利引上げ日本からの「お金」引き揚げ懸念など様々な要因が考えられるが、米長期債の下落(金利は上昇)がマーケットの雰囲気を悪くしている2年で+5%もの歴史的「利上げ」で中堅銀行の破綻程度で済んでいた事が "奇跡" だったが、いよいよ世界規模に拡大してきた感もある。まさに 「本物の危機」の時、金利は上昇する。|損切丸 (note.com)

 まずきな臭いのが戦争中のロシアルーブルは一時@101台まで対ドルで暴落したが、その後8/15に中銀の緊急会合が開かれるとの報で@97台まで戻している。おそらく+2~3%の「利上げ」でも決めるのだろうが、それでルーブルを買う投資家はいまい。開戦以降、国内銀行にドル売り・ルーブル買いを禁止してを強制的に「ルーブル安」を止めてきたが堰が決壊した状況「円安」と比較する向きもあるが(おそらくほとんどは彼の国のプロパガンダ)、比較には無理がある。

 そしてもっと気持ち悪いのが8/14に「利下げ」、e.g., 1週間レポ@1.9%→@1.8%、1年MLF@2.65%→@2.50%、を決めた 「デフレ」の沼に落ちた中国。|損切丸 (note.com) 一見楽観的に見えるが、実情は深刻。

 不動産会社のドル建社債の急落(金利は二桁台金利に急上昇)が如実に物語っているように、実際に足りないのは「ドル」だからだ。「利下げ」による「人民元安」は本来避けたかったはずそれでも「利下げ」せざるを得ないのは、それ程国内の金融情勢が逼迫している証拠。まさに「灰色のサイ」が草陰からひょっこり顔を出してきた様相だ。

 結論:「インフレ」→FRBによる「利上げ」の脅威は無くなっていない

 「運転手さん、100万円ではなくて100億円持ってると考えて見て」

 現役の頃、タクシーに乗るとよくお客さんの状況を聞いたりしたが、これが結構いい「先行指標」。不況になると例外無く利用率が低下するので、JGB(日本国債)なら鉄板の買いサイン(金利低下)。こちらが銀行員だと判ると「運用」について逆質問を受けた時の返答がこれ  。「インフレ」について考えるには丁度良い "頭の体操" になる。

 100億円もあれば生涯遊んで暮らせる。では1,000万円(預金保険の上限金額)ずつ1,000行に「預金」するだろうか?

 実際に100億円持って見ればはっきりするが、答えは「否」。わかりやすくいえばアルゼンチンの富豪やロシアのオルガルヒならペソやルーブルのまま持ってはおくまい「お金持ち」の最大の敵は「インフレ」「通貨安」。だから外貨不動産等に分散投資する。「お金持ち」の間では「インフレ」による減価を避けるべく「お金」の "押し付け合い" が起きる。「金利」が「インフレ」に相応する水準に戻るまで金利商品には戻らない

 マーケットが「お金持ち」の理屈で動く以上、彼らと同じ考え方で「投資」するのが正解運用結果は100万円でも100億円でも同じあとはどこまで「お金持ち」と同じ気持ちになれるか。あんな大金を払ってバフェット氏とのランチに人が殺到するのはそのためだ。なかなか手の内を明かさない彼らだけに、個々人の "推察力" がモノを言う。

 最後に。「通貨」は「信用」で成り立っている「お金」を基軸に経済を回す以上、資本主義も社会主義もない。本当は金利なんて上げたくないのに...、などと言っていられるうちは序の口安くなる「通貨」は「信用」の危機に直面している。ペソもリラも人民元もルーブルも、そして「円」も


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