人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのか。 ー 「通貨安」と「ドル建債務」の問題。
激しい「お金」の戦争が続く中、「独裁主義」陣営にも支援の動きが見られる。道義的な観点は別にして、ここは「損切丸」らしく「お金」やマーケットの観点から考察を加えてみよう。
まずは「原油購入」の話。
「お金」の面を考えると、例えばインドなら代金を払う側となる。問題は何の通貨で払うのか。当然インドはルピーを主張するだろうが、そうすると受け取った側は即座にルピーを為替市場でドルやユーロに換える。つまり「ルピー安」を引き起こす。
ルピーはFXでは主要通貨ではなく流動性も限られる。実際1995年以降、対ドルでルピーは半値以下に下落( ↑ 標題添付)しており、トルコリラ ↓ 程ではないにしろ「通貨安」によるインフレに苦しんでいる。ルピーによる「原油購入」は「お金」的には「ルーブル売り圧力」の一部を「ルピー」で引き受ける行為であり、いくら「原油」を安く購入しても本当に "割" に合うのか、大いに疑問。
エネルギー需給については、中国やインドに別ルートで「原油」が渡ればその分他国からの購入が減るので、全体では中立。むしろ欧州が「脱炭素」路線修正を迫られる中、イランとの「核合意」再建やベネズエラやブラジル、あるいはアメリカのシェールガスの増産が "鍵" となる。
では中国による「武器供与」はどうか。
今度は何の通貨で「代金」を受け取るのかが問題。為替市場でほとんど取引されないルーブルでは困るので実質「原油」等との「物々交換」になる。だが、結局 ”人民元/ルーブル” の交換レートで揉めそう。切羽詰まっている援助を受ける側は、かなりの ”ルーブル・ディスカウント” を飲まざるを得ない。つまりエネルギー資源の叩き売りになり、国力は衰える。
このケースでも間接的ながら「ルーブル売り圧力」の一部を「人民元」が引き受けることになる。最近人民元安に振れ始めたのはこれが主因だろう。
平たく言えば「独裁主義」側の援助は「武器」でも「原油」でも「自国通貨安」のコストを伴う。まさに「ルーブルの避難回廊」といったところ。
判断を困難にしているのは、各国とも大なり小なり「ドル建債務」が存在し、「通貨安」は「借金」を膨らませてしまう事。「中国」も不良債権問題で揺れている不動産開発会社を中心に8,000億ドルもの「ドル建債務」 ↓ があり、「人民元安」はデフォルトの引金になりうる。
「3兆ドルも外貨準備があるから大丈夫でしょ」
「中国」のバランスシートに詳しい方の指摘を受けそうだが、これも実は心許ない。3兆ドルの内、換金可能な「米国債」は1兆ドルしかないからだ。
詳しく精査できていないが、残る2兆ドルはAIIB(Asian Infrastructure Investment Bank、アジアインフラ投資銀行)や「一帯一路」のバックファイナンス、あるいは「ハイイールド債」などのリスク投資に回っており、すぐには換金できない。そう言う状況で "8,000億ドル" の債務は結構重い。
そして根源的問題は*GDPが1.5倍のアメリカとほぼ同額の「借金」59兆ドル(約7,000兆円)の「資金繰り」。この点は 中国に異変? 急落・低下に転じる中国株・中国国債金利。|損切丸|note 続報:中国に異変? 着実に進む「お金」の「中国離れ」。|損切丸|note でも触れてきたが、不動産市況の悪化で「国有不動産」の売却難航が大問題となりつつある。
中国は「資金繰り」のために国外から「お金」を集める必要があるが、「通貨安」は障害になる。中国国債の「高・実質金利」e.g. 10年@+1.28% > 米10年▼5.96% もそのせい。「人民元安」は輸出には有利だがこの状況では「資金繰り」が最優先。デフォルトしては元も子もない。
「東芝COCOM事件」などアメリカに酷い目に合わされる日本を目の当たりにしてきた「損切丸」も、実はアメリカを盲目的に是認してはいない。確かに酷い事をいくつもしてきた。「反米」の国が多いのも理解できるが、今回の ”侵略” はあまりに無理筋。
「弱い者は強い者に喧嘩を売るべきではない」
こう言い放った総領事がいたそうだが、自分達こそ「お金」の真実を良く見つめ直した方が良い。アメリカに物を売って稼いでおきながら、それは ”自己矛盾” というもの(これは日本も然り)。
ここに来て "絶妙なタイミング" でWTIも100ドル割れ。「お金」の攻撃を緩めるつもりはないようだ。「反米」結束で「武器」「原油」支援もいいが、「通貨安」で「ルーブルと心中」も考えもの。おそらく "利に聡い" 中国首脳部はこの点を熟慮している。今後の動向が注視される。
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