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”バイデンフレーション” の衝撃。

2021年12月 個人消費支出(PCE) 前月比▼0.6% 前月+0.4% ← 速報+0.6%
コア価格指数(除. 食品とエネルギー) 前年比+4.9%  1983年以来の伸び率
貯蓄率+7.9% ー 昨年の大半で低下していたが2ヶ月連続上昇

1月 米ミシガン大消費者マインド指数(確定値)67.2 予想 68.8  前月 70.6
現況指数72に低下し、2011年8月以来の低さ期待指数も64.1に低下
インフレ期待 :  1年先 +4.9%
 5-10年先 +3.1%、それぞれ2008年、2011年以来の高水準

 いつも関心するのが欧米マーケットのネーミングセンス。今回の「インフレ」”バイデンフレーション” と称するらしい。 ”レーガノミクス” のもじり(日本でもあったような…)のようにも映るが、米国民の不満を象徴するように ”悪意” が感じられる(苦笑)。

 その衝撃は経済指標にも現れつつある。速報性から相場を動かすことの多いミシガン大消費者マインド指数 ↑ だが、今回は「インフレ」が消費者心理を冷やしている姿が如実に出た貯蓄率が再度上昇に転じ、FRBが重視するコアPCEの低下も気になるところで、米国債のショートカバー(金利は低下)を促した。

 一時@1.22%、@1.70%まで突っ込んだ2年、5年国債の金利水準は「3月に@0.50%利上げして2022年内に@1.25まで一直線に上がる」を織り込んでいたので、買い戻しのタイミングだったとも言える(引けの2年@1.16%も3月+0.50%を前提にしないとシミュレーションが厳しい水準ではある)。

 ショートカバーという意味ではナスダック指数が▼15%も下げていた株も頃合いだった。物価 ≠ 株価 ≠ 金利上昇Ⅱ。 ー 一躍主役に躍り出た 「金利」。|損切丸|note でも触れた「金利低下」→「イールドスプレッド」拡大が株価上昇のエンジンだとすれば、今回も「金利が主役」

 最大のリスクは バイデン大統領の "心変わり" (?)。|損切丸|note。降って湧いたようなFRBによる突然の「利上げ」転換も、元を正せば ”バイデンフレーション” で支持率が落ちたから。大統領中間選挙で劣勢が伝えられる中、FRBの尻を叩いた恰好だ。しかし「利上げ」が「株価下落」を誘発し「インフレ」より不人気になれば、もうどう転ぶか判らない。最悪FRBに責任転嫁し、「利上げ中止」を叫び始めるかもしれない

 そうなればまさにウォール街の思う壺嬉々として株を買い上げるだろう。一時的にはいいかもしれないが、中途半端な「利上げ中止」は「インフレ」を再加速させ、長期金利を急上昇させる。最終的には破滅的結末=株価のクラッシュをもたらし、そうなれば金利が10%以上に上昇した1970年台の "悪夢" の再現だ。「スタグフレーション」が現実味を帯びる。

 筆者は「バイデン ー パウエル」コンビを全く信用していない「インフレ」に対処が遅れたのも人気取りのために株価の下落などを気にしたからアフガニスタン撤退にも全く戦略性が感じられず、全てが場当たり的。再度の ”心変わり” も十分あり得る。まあ70過ぎのおじいちゃんに "先見性" を求めるのは ”酷” なのかもしれない。それはこの国も同じ。

 ただ消費者心理については、感染症の毒性低下から「出口」も見えてきており、落ち込みは一時的と捉える向きが大勢。株価には前向きな材料だが、同時に「インフレ」要因でもあり、やはり金利は上がらざるを得ない。すると「イールドスプレッド」が縮小して株価が下落、そして...(苦笑)。

 中国の不良債権問題といい、東欧の揉め事といい、あちこちで「黒い白鳥」「灰色のサイ」がウロウロしている。 ”寅” といえどもこの ”千里を走る” のはかなり大変だ。デフォルトリスクという意味では、アルゼンチントルコレバノンなど「国富」が不十分な国々がこれから起こる本格的なドル金利の上昇に耐えられるのかSWIFT からの排除を宣告された ”彼の国” のCDSプレミアムも急上昇、e.g. 5年CDS @212BP > ギリシャ 115.6BP <  ブラジル 225.8BP @1/28 など波乱含みだ。

 パンデミック終了と同時に「インフレ津波」が襲う ー

 過去に「スペイン風邪」(1918~1920)「世界恐慌」(1929)→ 第2次世界大戦の誘因になった事を今のパンデミックになぞらえる向きもある。「独裁国包囲網」も「ABCD包囲網」「ブロック経済」を彷彿「灰色のサイ」も上手く扱えればいいが、あまり追い詰めると暴れ出すかもしれない今の株価の「調整」からはそういう "臭い” も漂ってくる

 思えばイラク戦争(2003~2011)以降、大規模な「戦争」が10年余り起きていない。変な言い方になるが、アメリカの根幹を成す「軍需産業」は商売になっておらず、ここらで ”在庫一掃セール” をしたくてうずうずしているはず(あのアジアの独裁国家がミサイルをバンバン撃っているのも実は同じ事情かも)。「戦争」が割に合わないことは誰もが承知しているはずだが…。「歴史は繰り返す」は勘弁願いたい。

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