見出し画像

マーケットで満ちる「不穏な空気」。

 金利市場がここ数年で初めて注目を浴びているのはいいのだが、最近の米国債市場を見ていると、10年債が数日で@1.60~1.69%の間で行ったり来たりと動きが激しすぎる。原因はマーケットで満ちる「不穏な空気」

 「インフレ」を起点にトレーダーやファンドが「イールドカーブ取引」「BEI」(予想物価上昇率)等等必死に仕掛けているのだろうが、ちょっとやり過ぎ感もある。ここは少し腰を落ち着けて冷静に見ていこう。

$  FF- 2- 5- 10 -30y(グラフ)22 Oct 2021

画像1

画像2

 何だかんだいいつつ、NYダウナスダック年初来運用利回りが+17%程で推移しており、業界にとって悪くはない。ETFを上場したばかりのビットコイン(BTC)も数日で±7,000ドルも上下するなど "相変わらず" だが、次の ”飯の種” を発掘中のウォール街にとっては狙い通りかもしれない。

画像3

  ”飯の種” という意味で最近不気味なのが、*大手の投資銀行がこぞっての「中国株買い推奨」。確かに欧米株が高値で張り付きBTCも史上最高値を更新する状況では、年初来安値に沈む「中国株」は魅力的にも映る

 だが今の「不穏な空気」の最大の源は彼の国の「不良債権問題」。ここに手を突っ込むということは、元金が返ってこない「信用リスク」に挑むことになる。NYダウやナスダックとは ”リスク” が根本的に違うBTCに次ぐ ”二匹目のドジョウ” なのだろうが、果たして上手くいくのか。これも「業界の事情」と割り切っておいた方がいい。

 もう1つ不可解なのが突如やってきた「人民元高」。アメリカ向け輸出が増えているので理屈はあっているが、あれほど「通貨高」を嫌っていた中国当局が今のところダンマリを決め込んでいるのも不気味一体何を考えているのか海外投資資金への ”呼び水” なのか、そこにウォール街も一枚噛んでいるのか。最近では「家庭のしつけ」まで法制化するなど、我々の ”常識外” の事ばかり。ここでも「不穏な空気」が醸成されている。

  ”ドル金利が上がる時は相場が荒れる" 

 「世界恐慌」「ブラックマンデー」「メキシコ通貨危機」「アジア通貨危機」「リーマンショック」etc., etc.  過去のパニック相場は例外なく「ドル金利上昇」が密接に絡んでいる「お金」の観点から見ると、資金力の乏しい「新興国」=エマージング市場が ”犠牲” になることが多いが、今回も例に漏れず "兆候" が見えている。

 代表的なのは大幅「利上げ」を続けているブラジル9月に+1%(5.25% → 6.25%)、10月にも更に+1%が予想されている。だが、マーケットは更なる「利上げ」を ”くれくれ” 状態で、10年国債@12%を超えている。

 ヨーロッパではかつての「高金利国」、イタリア、ギリシャの金利上昇が早く、10年国債金利は@1%を超えてきた。これだけ「金利」が世界的に上がると、年金ファンドなど保守的な金利投資家は無理をする必要が無い「@1.60%台の米国債で充分」と考えれば、その分「お金」はいわゆる ”貧しい国” には向かわなくなり "パニック" を引き起こす

画像5

 1国だけ ”鯉の滝登り” 宜しく大幅な「利下げ」に踏み切っている国がある。トルコだ。CPIは+20%近くになり国民は「インフレ」に喘いでおり、教科書通りなら「利上げ」が必須の状態。だが景気悪化が気にくわない**エルドアン大統領が強権発動で中銀総裁の首を切り、▼2%「利下げ」を強行した(10/21@18%→@16%。市場予想は▼0.5%)。

 **大統領を支持する意図はないが(苦笑)、確かに@20%もの金利ではどんな事業も成り立たない。複利で考えれば、20%の5年複利は@30%程度、10年なら@50%を超える ↓ 「経済」的発想なら破滅的だ。サラ金などから高利の「お金」を借りるのも同じ結果を招く。しかも今度は米独仏など10カ国の大使を ”ペルソナ・ノン・グラータ” (好ましからざる人物)として国外追放とは...。ますます「不穏な空気」である。

画像6

 まさに「大バクチ」。経済の立て直しで「お金」を呼び戻すことができれば良いが、歴史的に成功した例を筆者は知らない。当然のように為替レートは対ドルで最安値を更新 ↓(e.g. 2008~2021で通貨価値▼8分の1)。どうしてもベネズエラの影が浮かんでしまう。「インフレ」は怖ろしい

トルコリラ(長期)

 一見株価も堅調でBTCも値上がりし「万事順調」に見える投資銀行業界だが、過去に身を置いた筆者には「不安だらけ」。今年のボーナスを期待するトレーダーやファンドは気にもしていないが、今後5年、10年と生計を立てる生活民としては「不穏な空気」が広がるばかり「かつて無い規模での "過剰流動性" からの脱却」という壮大な社会実験を実行中であり、相場が荒れるのは当然。「中央銀行軍団」のお手並み拝見、といったところだが、 ”最悪の事態” (株暴落?戦争?)は想定しておく必要があるかもしれない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?