”チャレンジング" な日銀「資金繰り」Ⅲ ー 国債発行減で平仄を合わせる財務省
続・ ”チャレンジング" な日銀「資金繰り」 ー 「国債買取」減額を探る|損切丸 (note.com) からの続き。
日銀は着々と「国債買取意オペ」の金額を減らし、12月には3~5年と5~10年を更に減額 ↓ 「下限金額」=年66兆円買取に近付けている。これで10月対比で約▼27兆円減ったことになる(年換算)
平仄を合わせたのが財務省。2024年度の国債発行額が発表になったが、総額で▼19兆円もの減額 ↓ 。いよいよ*真の「財政健全化至上主義」に乗り出している。これ以上国民負担を増やせなければやむを得まい。
この共同歩調からも日銀と財務省が綿密に打ち合わせていることがわかる。裏を返せばそれだけ「JGB暴落」を怖れているということ。おそらく大先輩から受け継がれている "大事件" が2つ:
記録によると当時まとめて売られたJGBは数十億円とか数百億円。今のマーケットなら蚊に刺されたぐらいの規模だが、マーケットが成熟していなかった事もあって大混乱になった。
今は国債入札に一定額の入札を義務づけられた「プライマリ-ディラー制度」が出来上がっており、決済システムにはRTGS(即時決済制度、Real Time Gross Settlements)で金融機関に担保を入れさせる等金融の高度化が進んで「パニック」「クライシス」は格段に起きにくくなっている。FRBが一気に+5%も金利を引き上げても中堅行の破綻程度で済んだのはそのお陰。
だが人間は "自分に甘い生き物" 。「安全」をいいことに取引規模がドンドン膨らんだ。国債市場なら米国債やJGBでは今や数千億円規模の取引は当たり前で、投資銀行やファンドは儲けを増やそうと金額を膨らます一方。これは深刻な「モラルハザード」だ。
そして「モラルハザード」は金融機関を飛び越えて「国」に及んでいる。今でもMMT(現代貨幣理論)などに "洗脳" され「国債は国民の資産」「税は財源ではない」などと言いたい放題の人がいる。「インフレ」に直面してようやく影を潜めつつあるが、まだ「国債」=国の「借金」は国が返すと信じて疑わない。「国」には "打ち出の小槌" も "ドラえもん" もない。あるのは「徴税権」だけ。つまり「借金」は我々がいずれ返さなければならない。その "FACT" から目を背けるのも一種の「モラルハザード」だ。
いくら金融システムが高度化したといっても、日銀が国債の半分以上を買占めている現在の状況は前代未聞。これを解きほぐすのは並大抵ではない。年間▼60~70兆円の償還だけでやろうと思えば10年近くかかるし、その間日本経済がどうなっているかなど誰にも見当はつかない。まして今も年間+70兆円近くJGBを買っており、これでは「資金繰り」は改善しない。
今回の日銀+財務省の措置は、これ以上「資金繰り」が悪化しないようにしただけ。本当の "手術" はこれからだ。思い起こせば ”安宅暴落” も「資金繰り」支援がきっかけだし「ブラックマンデー」も「リーマンショック」も銀行の「資金繰り」悪化がトリガー(引金)だった。
筆者も含めて「資金繰り」を担当した方は理解できると思うが、あの "体中から汗が出る感覚" はやった人にしかわからない。何しろ「お金」が足らなければ会社が潰れるのだから。個人ならダメと判っていても "闇金" に走ったり夜逃げするのも同じ。人は追い詰められると理屈では考えられない行動に出る。MMTも一種の "思考停止" だろう。
過去に類を見ない ”バズーカ” の後始末 ー 「10年日本国債@0.25%無制限買取オペ」の深層。|損切丸 (note.com) の処方箋などない。経済が堅調なアメリカだから+5%の「利上げ」なんて荒療治が出来たが、今の日本では無理。だから「増税」と「インフレ税」を組み合わせてジワジワ「借金」を減らそうと試みている。それが今の「生活苦」の正体だ。
「デフレ」克服に20年以上要したが、今度は 「大緩和」のあとしまつⅡ。|損切丸 (note.com) ≓「インフレ」克服に同じくらいの時間がかかるかも。CPIが+2%台に下がったなんて喜んでいると "ぬか喜び" になる。 "稼ぐ力" がなければ「大借金」はそんなに簡単に無くならない。「インフレ」=貨幣価値減少で気が付けば1,200兆円もの「借金」が目減りしてた、となる蓋然性が高い。日本人も心してかかる必要がある。
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