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すべては「お金」。 ー 「ウクライナ危機」をマーケット面から斬ってみる。

 ”ロシアが東部の親露派支配地域であるドネツク人民共和国ルガンスク人民共和国の独立を一方的に承認”

 NY市場が3連休(2/19~21)、日本が祝日(2/23)の間隙を縫うように「ウクライナ危機」が一気に緊迫化。まさか休日を狙った訳ではあるまいが、連休明けの米株式市場が急落するなど、風雲急を告げている。

 やはり "ニュースより相場" 。 ー 日本人の理解を超える「スラヴ民族」の歴史。|損切丸|note 通り、東スラブ民族双方共に「戦いから退く」という選択肢は取り得無かった彼らにとって「降伏」は政治的にも「死」を意味する。この地方が "世界の火薬庫" たる所以でもある。

 「一方的侵略」「国連安保理、緊急会合を開催」「第3次世界大戦か?」

 随分と扇情的なニュース、言説が出回っているが、「ウクライナ危機」の "FACT" とはなんだろう。ここは「損切丸」流に「お金」に焦点を当ててマーケット面から斬ってみる

 まずはロシアウクライナと、今回ロシアに加勢しているベラルーシ基礎的データから比較してみよう  。

 はっきり言ってロシアから見れば、ウクライナなど「お金」の面では取るに足りない小国人口はロシアの3割弱なのにGDPは1割程1人当りGDPはヨーロッパ53国中最下位穀物が豊富とはいえ、”併合”はむしろ重荷ロシアべったりのベラルーシとは違う。

 そうすると今回の「侵攻」の肝は「お金」ではないのか?

 いや、実は大きく絡んでいそうだ。鍵は「プーチン大統領の個人資産」。これは長期独裁政権の特徴でもあるが、権力者により "べらぼうな個人資産" が築かれる。一説には22兆円というから、年間GDPの14%にもなる。

 だから2024年の大統領選では何が何でも再選しなければならない*権力の座を降りれば不正蓄財が暴かれるのは不可避だからだ。「ルーマニアのチャウシェスクやイラクのフセインのようになりたくない」というのが独裁者共通の思いだろう。2014年の「クリミア併合」で支持率を上げた事にあやかって ”2匹目のドジョウ” を狙ったのが今回の「ウクライナ侵攻」だ。

 政敵に毒を盛ったり、ロンドンでスパイが不審死を遂げたりと、今回のオリンピックのドーピング問題同様、何かと「薬」に縁のある国ではある。

 「今回の "経済制裁" には効果が期待できない」

 米英主導でまず「個人」をターゲットにした制裁を発動したのは、プーチン大統領の ”事情” を慮っての策だろう。この辺りは一種の心理戦で、必ずしも経済的ダメージを狙ったものではない。では "経済制裁" には本当に効果がないのか答えは "YES" でもあり "NO" でもある

  はドル・ルーブルの長期チャートクリミア併合前は@31~34台だったが "経済制裁" 発動後に一気に@60台、そして現在は@80台とルーブルの通貨価値は半分以下になってしまった。つまり大ダメージを受けたのは大統領ではなく多くのロシア国民。大統領は権力の座に留まれば痛くも痒くもない。欧米サイドとしては "内部崩壊" を狙いたいが、他の独裁国家同様「恐怖政治」が浸透しており、なかなか崩せない。

 今回ドル決済からの追放等の強烈な制裁を課せば、通貨安から来る「インフレ」「金利高」を引き起し、「ロシアのトルコ化」、最悪なら「ベネズエラ化」まで考えられる。欧米はそこまで腹をくくる必要がある。

 実際、ロシア国債のロンドンでの発行禁止など、10年金利は@9.8%台から@11%近くに急騰5年CDS@268.5と、2020年3月の「コロナ暴落」以来の高値「お金」の面からは「ルーブルの悲鳴」が聞こえてきている。

 「戦争では一般市民が犠牲になる」

 これは何も爆撃や戦闘の犠牲者だけでなく「お金」にも言える教訓。このまま「通貨安」「インフレ」を放置すれば国民生活は困窮を極める最終的には市民の選択になるが、何度も「革命」を起こしてきたヨーロッパやスラブ民族の歴史に照らせば、(日本も含む)東アジアの国々のような、半ば社会主義的な ”長いものには巻かれろ” とはならないだろう。今後は「欧米 vs ロシア」と同時にロシア国内の動きにも注意が必要だ

 最後に:今回の「ウクライナ危機」に関するマーケットの反応で最も興味深かったのが米国債の動き。冒頭のニュースが出た2/21(米国休日)には海外で10年米国債金利が@1.93%→@1.85%に急低下したが、米国市場が明けると@1.93%に戻し、今日(2/23)にはもう@1.97%

 「お金」の面で冷静に考えれば至極当然なのだが、軍事措置には国債の増発は付き物だし、エネルギー価格が上昇するなら、むしろ「利上げ」を急がなければならない。その結果「利上げ」予想は年内+1.5% → +2.0%に

 ついでに言うと、株式市場も2021年前半までのような「過剰流動性相場」なら、どんな「危機」であっても 便利なマジックワード「織込み済み」。|損切丸|note で何事もなかったかのように値を戻しただろう。こちらはやはり「金融正常化」が未だにメインテーマであり、「戦争」は「売るための理屈」という事になる。

 「いかなる "脅し" にも屈しない」

 これは安全保障だけの話ではなく、相場にも同じ事が言える。今回の米国債のショートスクイーズ(急激な買い戻し)が典型だが、金利上昇でショート(売り)に張ったトレーダーやファンドに対する一種の "脅し"原油や天然ガスを高値で煽っている連中もそう。内心「危機」を喜んでいたりする。世の中もマーケットも "脅し" に屈した者は果実を得ることは出来ない

 ただ、今回の株式市場のように "FACT" が別の所=「過剰流動性」にある場合もあるので見極めは必要。相場は本当に難しい。今回のような騒乱時なら尚更で、最後は「人間性」の勝負になる

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