見出し画像

「お金」が足りない?Ⅱ ー 日本でも「金利」について変わる「風向き」。

 ”全国コアCPI、11月は+0.5% 携帯値下げなければ上昇率は+2%に”

 "展望2022:日銀は緩和縮小方向のメッセージを、悪い円安防止で=今井・元首相秘書官" (共に12/24ロイター)

 「お金」が足りない? ー 突然の「円」不足で日銀が9兆円も資金供給。|損切丸|note で日銀による異例の大量資金供給オペについて書いたばかりだが、日本も「金利」について風向きが変わってきた

 黒田総裁の ”告白” を受けて、ロイターのようなメジャーなメディアを通じて携帯値下げによるCPI引下要因▼1.5%が公に報じられるのは大きな変化だ。見方によってはこれで日銀はCPI+2.0%を達成したことになる。

 ここで ”主役” に躍り出たのが「悪い円安」。まあ皮肉にも「アベノミクス」自体の目標だった「円安」がこれで達成。今井・元首相秘書官から ”緩和縮小方向のメッセージ” という発言が今出るのも一応筋は通っている。

 「テーパリング」は元々医学用語で薬剤(!)等を少しずつ減らす ”漸減法” のことらしいが、 ”薬抜き” は実は2020年10月から 日銀が ”こっそり” 「出口戦略」開始?|損切丸|note で始まっており、今年3月の 日銀「金融政策総点検」 @19 Mar 2021概要。|損切丸|note を経てやっとここに辿りついた。日銀のスタッフは優秀だと言ってきたが、ここまでのシナリオを描いていたはず。同じを業務を担当していた立場から言うと、半年先、1年先を見越して組み立てていくのが「資金繰り」の基本だ。

 そのことは「日銀バランスシート」に如実に表れている。

 日銀「資金繰り」のコアは保有国債の償還分、年間約40兆円をどうコントロールするか。国債買取額がこの償還額を超えなければ資金不足には陥らない。市場へのショックに配慮しながら ”漸減法” で国債買取減額を繰り返してきたのはそのためであり、「損切丸」でも3年越しの長期シリーズで伝えてきた。今日、明日の売り買いに神経を尖らせている方には気の長い話で恐縮だが、これが「資金繰り」であり「金利」の基本でもある。

 実際に日銀の「バランスシート」は筆者がデータを追って来た2019年以来、700兆円を大きく超えたことはないし「当座預金」も500兆円前後国債買取を "コッソリ" 減らした2020年10月以降かなり抑制されてきた。

 この ”漸減法” と反比例するようにコール市場での取引量は急増。12/20時点には19兆円台に達し、「ゼロ金利」前の水準に戻りつつある

 ここまで日銀はかなり上手くやってきたと言えよう。表向きTONAR(無担保コールO/N金利)は平穏推移しているが、取引量の急増を鑑みると、巨大な「円預金」を持たない外銀などは「資金不足」で調達側に回っているかもしれない円市場の ”温度” は中から徐々に上がっている状況で、12/10に上がった ”ボヤ” は「資金供給オペ」で消す必要に迫られた今後 "炎" が表に出てくることも想定される。

 パンに牛丼にドーナッツ… 身近な物の「値上げ」が相次ぐ日本だが、意外にもネットでは悲観的な見方が後退。むしろ原材料費の上昇を飲み込むような「価格据置」や「スティルス値上げ」には批判的な言説が目だつこの20年のデフレでそれらが自分達の「賃下げ」に繋がることを察知しているのだろう。「値上げ」を歓迎する意見すら見られる。

 借金の多いアメリカに比べると「預金」が家計債務の3倍以上もある日本では「利上げ」のネガティブ・インパクトは限られるそもそも銀行の不良債権処理のために導入された「異常な低金利政策」は、本来「金利」が持つ「所得分配機能」を殺してきた「財政健全化至上主義」がその根底にあったわけだが「悪い円安」がこれを駆逐しつつある+1%程度の「利上げ」は預金1,000兆円×1%=年利息+10兆円の「給付金」効果も期待でき、景気や株などにはむしろプラスだろう。「悪い円安」も抑止できる。

 ここからは政策のタイミングが重要になる。トルコリラを見ればわかるように、一旦売りが加速すると歯止めが聞かなくなるのがFX前倒しでアナウンスしていくことが ”円安抑止力” として働き、コストを抑制できる。これは実際の「利上げ」も同じで、上手く政策発動を行えば一気に「円高」とはいかなくても、現状程度に留める効果は得られよう

 既に飲食店等でパート、アルバイト不足が露見しているが、今後経済正常化に伴って2019年以前にも顕著だった「人手不足」は加速するはず最も高いコストである「人件費」が上がる時「物価」は下がらない。つまり「インフレ」「人件費」を削って安売りを得意としてきたデフレ型 "ブラック企業" は淘汰される運命に。「インフレ」が導く「付加価値」の時代。|損切丸|note がやってくるだろう。

 日銀としては過去2度「ゼロ金利解除」に失敗して再度「金融緩和」に追い込まれた "トラウマ" があるだけにハードルは低くないかもしれないが、今回こそFRBの「利上げ」を上手く利用してやり遂げて欲しい



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?