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「遊びから仕事が生まれる」関係性を生むお金の使い方

お金の学校『toi』は、参加者の「お金」にまつわる悩みや夢を、校長・井上拓美&MC・くいしんと様々なゲストを交えて本気で考えることで、それぞれに必要な“問い”を一緒に探していく学校です。このnoteでは、メンバーの一員でもあるライターが講義を聞き、感じたこと、気づきや学びについて記録していきます。

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●ライター:乾隼人
1993年生まれの編集者・ライター。ローカルを軸にした編集チーム『Huuuu』に所属し、外食文化、1次産業、移住などを中心に取材。趣味で酒場のメニューを収集している。
●ゲスト講師:徳谷柿次郎さん
Huuuu inc.代表取締役。WEBメディア『ジモコロ』の編集長を6年つとめるほか、長野県の移住メディア『SuuHaa』、海に特化したメディア『Gyoppy!』などに関わるなど、編集の仕事を通して全国47都道府県を行脚している。約3年前に長野県に移住し、友人を呼び寄せては長野の楽しさを伝えている。

今回、toiの講義に登壇してくれたのは、Webメディア『ジモコロ』編集長の徳谷柿次郎さん。取材のたびに現地に足を運び、ローカルに息づく文化や仕事、歴史を知っては記事にしていく編集者だ。

筆者は、柿次郎さんに憧れてフリーランスの編集者になった。出会ってからの1年半、たくさんのローカルで活躍する先輩たちと引き合わせてくれ、チャンスを与えてくれた。間近で見てきたからこそ、気づいたこともある。

柿次郎さんがすごいのは、持ち前の好奇心と、どこかウェットな性分で、その日に出会った土地の人々ともしっかりと人間関係を結んでいくこと。全国のどこに行ってもその土地の先輩や後輩を見つけ、「柿次郎!」「柿さん!」と呼びつけられる姿を見ると、いかに人に愛されているかがよくわかる。

多くのエピソードとともに今回の講義で力説してくれたのは、「遊びから仕事が生まれる」ということだった。

柿次郎さんは、取材先でよく遊ぶ。その土地の先輩に案内をしてもらい、できるだけたくさんの場所と人と出会い、お金を使う。そこで知った土地の歴史や、人との出会いが、新しい仕事に向き合うための土壌になっていくことを知っているのだ。

それと同時に「お金は接着剤みたいなもの」とも語ってくれる。「いい」と思ったものに迷いなくお金を使えば、その土地にいる店主や職人との関係性が強まっていく。遊びに金を落とし、仕事の糧にすることについて話を聞いた。


悲しかったことを人に話して、「面白い」と思わせたら勝ち

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柿次郎さんのなかで、お金への価値観はどのように変化してきたのだろうか。疑問を投げかけると、「ずっとお金がなかった」という経験を話してくれた。

柿次郎:
26歳くらいまでフリーターだったんですよ。それから「東京に行ったら、誰かに拾われるかも」と思ってバイトで50万円だけ貯めて上京してきて、こっちで最初にやったことといえば松屋とパチンコ店のバイト。ずっとお金はなかったです

その後、編集・制作の会社、株式会社ノオトに入社すると、人生で初めての"固定給"を手に入れる。毎月20万円の給料が振り込まれるのを見て「社会ってヤバい仕組みだな」と思ったという。

柿次郎:
世の中のことを何も知らなくて、あまりお金を持っていない状態が基準だった。でも貧乏だった分、「持ち物を売ればお金が手に入る」とか、「バイトを2個3個掛け持ちしたらなんとかなる」とか、いざという時の生き残る手段を知ってた。だから給料が低くても、なんとかなるだろうって思ってましたね
柿次郎:
貯金も、この十数年間は意識して貯めようとは思ってなかったです。ようやくここ2年くらいは貯金しはじめたけど、それはただ「あんまり大金を使わないから、入ってくるお金の方が多くなった」ってだけで。多分お金をいっぱい使うのが下手なんですよね
柿次郎:
差し押さえとかも、2〜3回なったことありますよ。住民税を払いそびれてて。郵便受けに溜まっていく書類をずっと見過ごしていたんですけど……ある日、色の違う封筒が届いて。なんだろう?と思って開いてみたら、ドリカムの歌詞みたいにカタカナ5文字で「サ・シ・オ・サ・エ」って書いてあって。みなさん覚えておいてください、住民税だけは死神みたいに最後まで追いかけてくるんで

矢継ぎ早に飛び出す「貧乏とお金」にまつわるエピソード。この話をする柿次郎さんを見るたび、筆者は「すごいな」と尊敬する。貧しかったときのことを、すごく楽しそうに、おもしろそうに語るから。

井上:
見ていてすごいなと思うんですけど、なんで貧乏だった頃の話を全部笑い話にできてるんですか?
柿次郎:
こういう出来事を起こして、飲み会の場で話し続けたら、だんだん先輩からも話を振ってもらえるようになるんですよ。そうしたら、リアルな場で『なんかお前おもろいな』って覚えてもらいやすくなって。そこから酒を奢ってもらえたり、たまに仕事にも繋がったりする。20代では生き残るために、先輩方への気遣いとか後輩としての立ち居振る舞いを試行錯誤していましたけど、先輩やお世話になってる人達の前で『いかにおもしろい貧乏人であるか』ってことも同時に考えていたと思いますね。

人によっては、お金がなかった頃のことは「悲しい思い出」になるのかもしれない。けれど、その人自身の語り口が変われば、それは「印象の強いエピソード」にもなる。

柿次郎:
自分の悲しいことを話して、おもろいと思わせたら勝ち。これはいつの時代も、変わらないんじゃないですか

リアルな経験を持って、飲み会で話題を提供する。悲しかった自分をさらけ出しながらも暗くならず、遊びの場でも「おもしろくて、気持ちのいいヤツ」でいる。その姿勢だからこそ、多くの人や土地にめぐり合えているのだと思う。

遊びから仕事が生まれる。だからいくらでも旅に出る

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毎月のように繰り返す全国取材ツアーによって、旅のハードルが下がっているのか、柿次郎さんは友人からの「富山県にいい寿司屋がある」といった誘いにもすぐに反応する。

「◯日なら空いてるよ!」なんて都合がつこうものなら、数日後には長野県にある自宅からすっ飛んでいく。もちろん、仕事とは関係ない個人的な旅行として。

ただ必ず、そういう旅先での「人や土地との出会い」からあらゆる仕事のヒントを得て帰ってくる。

『ジモコロ』で取材するべきテーマや取り組み、イベントに巻き込まれてくれる地元の良い店、それぞれ背景の異なる相談相手…とりとめのない出会いをすべて受け止めて、懐であたためる。

柿次郎さんはよく「溜め」という言葉をつかう。それはきっと、職人の世界で言えば「下積み」のようなものに当たるのかもしれない。

その「溜め」とは「人のために足を動かした時間」や、「現地で顔を合わせ、酒量もわからなくなるほどに深夜まで話し込んだ時間」を指すのだろう。間近で見ているとそう思う。

そして、その時間は確実に、「柿次郎が困ったら、ほっとけないよな」と言ってくれそうな先輩方を各地に生み出している。いざという時に頼れる人がいる、というのは編集者という職業でなくとも大変貴重な武器だと思う。


お金を使っていたら、関係性が強くなった

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遊びの姿勢と行動原理をこれまで語ってくれた柿次郎さん。最後に、「気持ちのいいお金の使い方」を教えてくれた。それは、『人間関係を強固にするためにこれぞ、と閃いた時にお金を使う』ことだという。

柿次郎:
旅先で出会ったお店とかで、『いい!』と思ったものを迷わず即決で買うと、相手は驚いてくれるんですよ。『この短時間で買うんですか!?』『はい!買います!』って。そうすると、またそのお店の人に会いたくなって訪れたときに『ああ、あの時すぐ買った人ですよね?』っていう関係性に繋がる。

このお金の使い方も、「遊びから何かが生まれる」ことを知っているがゆえの使い方のように感じる。柿次郎さんはいつも、自分の持っている何か……時間や、体力や、お金を誰かに渡すことで、相手との関係性を育むきっかけを作っている。

柿次郎:
自分の中では、すぐに買うかどうか判断するのは大事なことなんですよ。遠い土地で立ち寄った店で出会った"良いもの"には、いつ再会できるかわからないから。それに、自分が気に入ったものにちゃんとお金を払って、その人が作ったものを着たり飾ったり、持ち帰って、日常の中で取り入れてはじめて、本当にその物の良さがわかる。買ったものについては厚く語れるから、周りの人たちにも勧めていくし。

そこまでやると、お店の人とも自然と友達になれるんですよね。結果的に、「ちゃんと自分のお金を使う」ことで、お店の人たちともコミュニケーションを取りやすくなっているのかもしれない。
井上:
確かに、自分も本気で『いい!』って思った時に、それを伝えるツールとしてお金を使ってるかもしれない。いいねを速く深く打つ時に、お金ってめっちゃいいんだよね。

大切なのは、よく遊ぶこと。それも自分と相手の気分がいい範囲のなかで。


経営する編集の会社『Huuuu』も5年目に入り、山盛りの案件と予定を抱えている。そんなはずなのに、どこから見つけて来たのかわからない時間に新たな遊びの予定をねじ込み、好きな人たちへ会いに行く。

「遊びから仕事が生まれるから!」といつも言っている柿次郎さん。自他共に印象付けられた「全国47都道府県を編集する編集者」のイメージはきっと、代表作『ジモコロ』だけを見て言われているのではない。

いつでもどこにでも遊びにいき、時間と体力とお金を好きなだけベットしていく「本気で遊ぶ」精神が、彼を「徳谷柿次郎」にしている。


テキスト:
いぬいはやと

イラスト:
あさぬー

編集:
くいしん

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