平塚市美術館『土田泰子展』へ行く
平日にちょっとマイナーな美術館に行くことにしている。都内上野近辺の超メジャーどころは確かに興味深いコンテンツがいつも並んでいるのだけれど、そのぶん人で混雑してゆっくり観られないイメージがある。だったら余裕がある平日昼間に、メジャーではないけれど面白そうな展示をしている美術館に行ったらいいんじゃないか。
実際に「これはいい」と思ったのは上田市美術館の経験からで、比較的時間が自由な仕事をしているので自分が住んでいる近辺でも試している。
今日行ったのは、平塚市美術館。常設展の観覧料200円も安いのだけれど、目的だった特別展の観覧料は無料。無料ですか。そのまま観て出ていいんですか。かなり立派な施設なのにいいのかな。
ポスターになっている黒鳥は、実は黒いマドラーを何百本(否、12321本とご本人ツイッターで教えてもらいました、ありがとうございます)も組み上げて作られている。そのほかの作品も、分度器や安全ピン、絆創膏、ハイヒール、プラスチックのコーム、指ぬきなどの日用品が材料。それらが新しい形と概念になって置かれている。
公式サイト↓では3点紹介されているので、ぜひ見てほしい。なぜこの形に?どうやって? と謎が謎を生む。これは行ってみるしかない。
会場では小さな作品から順番に並んでいて、2階に上がると人の背を超えるような作品も置かれている。
パッと見たときの造形は曲線や丸みが特徴で、DNAのような、どこか有機的な感じがする。でも近づいて材料を確認してびっくり。どれも日常で目にしている何てことのない製品がぎっしり(もしくはびっしり)配置されて、この形になっているとわかるからだ。
言ってしまえば工業製品の塊。でも遠くからみると丸みを帯びてどこか優しい。生き物のようでもある。近づくとピカピカ光る安全ピンだったり、白い歯ブラシが無数に刺さっていたり。遠くから「へー」、近くに寄って「はー」をずっとくり返していた。
面白いなと思ったのは、赤い線で温度を見る棒状温度計の作品。放射状に何百本も並んでとげとげしている。それは室内の日なたに設置されているので、陽が当たるところの温度計の温度は高い。30℃超え。でも日陰の部分の温度は低い。20℃くらい。夜になると冷えて、厳密な意味で作品の形が変わっていく。棒状の温度計をセレクトしたことがすごい。
安全ピンでフロアに作られた「山」も迫力がある。直径2mくらい、高さも1mくらいある。びっしりと山肌を形作る面もあれば、地表から何かが噴き出した地割れのように少し綻びた部分もある。そこでは安全ピンが安全ピンとして露出していて、ちょっとドキドキする。山として観ている途中で日常がはみ出しているのを見ちゃったような。
小さな作品、コームのような硬い材質で組んだものならともかく、大きな作品、柔らかい作品はどうやって運んだのだろう。鉄と砂鉄で独特の模様になっている作品もある。鉄と磁力の関係が変わったら模様も変わってしまう。それも織り込み済みなのかな。
何で作っているのだろう、どうやってつながってるんだろう、全体の形が何て楽しいんだろう。平日昼過ぎに着いて、ほとんど独り占めの状態でグルグル楽しむことができた。併設されていたレストランのパスタランチも美味しかった。
土田泰子さんのツイッター。
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