【大学新入生向け資料 その2】 大学の教員は「教授!」と呼ぶのが正解?
前回のメールの書き方の記事は、たくさんの方にお読みいただけたようで、なんと御礼のメッセージも直接、間接にいただきました。ありがとうございます!!
思い付きで書き始めたのですが、お役に立てて、本当に良かったです!何か「こんなことが知りたい」という内容がありましたら、twitterでリクエストいただけましたら、できる範囲で書きますので、どうぞご遠慮なく(^_^)(他大学の学生さんでも全然大丈夫ですよ)
さて、「その2」は、大学の教員をどう呼ぶかというお話。
「大変です!教授!!!」
って言いたくなりませんか?映画とかドラマとかで、ありますよね。こういうセリフ。「教授!!!大変です!実験体35号が暴走しています!!!」「何っ!?それはいかん!!」みたいな(一体どんな作品なのか…)。
前回の記事でも、「メールの冒頭には〇〇先生と書きましょう」という話をしましたよね。「あれ?大学に入ったら、先生じゃなくて教授じゃないの?」と思った方もおられたかもしれません。
大学の先生は教授だけじゃない
結論から言ってしまうと、確かに教授もいるけれども、実は教授じゃない人もたくさんいます。かくいう私も、准教授(じゅんきょうじゅ)です。准教授って聞いたことありましたか?
実は、2007年までは助教授(じょきょうじゅ)という名前でした。英語では、Associate Professorです。ちなみに台湾では副教授と言うそうです。
教授や准教授などの肩書のことを職階(しょっかい)と言います。この職階は、主に、上から「教授」「准教授」「講師」「助教」の四種類です。
四種類です。と書いたそばからなんですが、大学には本当に色々な肩書きの方がいらっしゃいます。「助手」を置いている大学もありますし、特別教授、客員教授、特任教授、など、職階の前に何かが付いている場合もあります。
私の場合を例に見てみましょう。2012年に初めて勤めた大学では、特任(任期付)講師、という肩書で大学教員をスタートしました。次の大学に移った時に専任講師になり、数年勤めた後に昇任して准教授になりました。その後、近畿大学に准教授として移籍してきました。
教授は偉いのか?
教授、准教授、講師、助教の違いは何でしょうか。皆さんご自身の大学のウェブページを見てみてください。自分の学部の先生方が一覧で載っているページがあると思いますから、そちらをご覧ください。
なんとなく、教授、准教授、講師、助教と見ていくと、いや、なんとなくですが、教授の方が年齢層が高くて、助教の方が年齢層が低そうではありませんか?私のキャリアを見てもらってもそうなのですが、年齢が上がっていくにしたがって、教授に近づいていっていますよね。一般的には、年齢が上がり、その間、研究成果をどんどん出していくと、職階が上がっていきます。
しかし、これは「必ずそうだ」と言い切れるものではありません。昇任については、ご本人の希望の有無、研究成果の質や量、組織内での規則、学部による違いなど、大学や組織によって、かなり多様です。
なので、たまにですが、とある大学で教授だった先生が、別の大学に移籍した時に准教授になったなんていうこともあります。いわゆる降格ですが、この先生は何も悪いことをしたわけではありません。大学によって教授や准教授の基準が違うので、移籍先の大学の基準が厳しかったということですね。
また、一般的に、「上の職階の先生の命令を下の職階は聞かなければならない」みたいな上下関係もありません。(ただ、これも大学や学部、組織によって違う場合があります)
大変なのは35号じゃなくて教授の方だった
…というわけで、そこ!!
「なんだ、岡本は准教授どまりか、ザコだな」
とか思わないように!!!(笑)
大学の先生方は、それぞれがそれぞれの分野の専門家でプロフェッショナルです。「この分野では右に出るものなし!」と言われている講師の先生も普通におられます。ですから、どんな先生にも敬意を持って接しましょうね(おねがい)。
じゃあ一体何が違うんですか。気分ですか?という話になってしまうのですが、基本的にはお給料は教授の方が多いです。「同じように授業してるのに不公平」と思われるかもしれませんが、職階は上がっていくほどお給料とともに色々な仕事も増えていきます。
出席しなければいけない会議が増えたりもします。学長とか学部長とか、そういった「お役目」も、多くの場合、教授が務めます。なので、実は「大変です!」なのは実験体35号の方では無くて、教授の方なのです。
…で?教授!って呼んでいいの?良くないの?
結論から言うと、大学の先生に誰彼構わず「教授!」と呼びかけるのは、あまりふさわしくありません。
だって、もし相手が教授じゃなかったらどうします?なんだか、スーツ着てる人を見たら誰にでも「社長!社長!!しゃ・ちょ・う!!!」と声をかけている人のようですよ。ちょっとやな感じですよね…。
だからと言って、職階を全員分調べて「あ!岡本助教!!」とか「岡本准教授、ここがわからなくて…」とか、それも何だかおかしな感じです。
「シャア大佐!」とか「ラインハルト上級大将!」とかとは違いますからね。そんなの学生さんも大変でめんどくさい。
実に簡単な解決策があります。全員「先生」と呼びましょう。それで全く問題ありません(^_^)
問おう。皆さんは「生徒」なのか
なんだよ、せっかく大学に言ったら「教授!」って呼ぼうと思ってたのに…。と残念がっているあなた、実は、呼び方が変わったのは、皆さんの方なんです!!
高校までは、皆さん自分たちのことを「生徒」と思っていたでしょうし、先生方も「私の生徒には指一本触れさせませんよ!」(だからどういう状況なんだよ)という感じで、生徒だと認識していたはずです。地域の方々も「いや~、感心な生徒さんじゃわい」(誰?)とか「おたくの生徒さんなんじゃないのぉ?」(何?)みたいな感じで生徒と呼んでいたと思います。
大学生の皆さんは「学生」です。何が違うか。まず、端的に「生徒」は中学生、高校生のことです。「学生」は短大生、大学生、大学院生、高専生などのことです。小学生はどこに行ったか?「児童」です。
「学生」とは何か?
名前が変わっただけではありません。「生徒」までは、基本的には教科書に書かれている内容を吸収することに重きが置かれていました。だからテストもほとんどが「知識がちゃんと身についているか?」「知識がちゃんと使えるか?」を試すものでしたよね。
たとえば、テストで「1+1=」と書かれていたら「2」じゃないと正解ではありませんよね。皆さんの中には理不尽な採点だと思ったこともあるんじゃないでしょうか?「いや、これでも正解じゃん」みたいな。
おそらく先生は少し悲しそうに笑って「確かにそうなんだけど、テストの回答的にはこれが正解なんだよ」とおっしゃったのではないでしょうか。
では、「学生」はどうか。これも分野によって異なるので一概には言えませんが「教科書を覚えるだけ」では終わりません(知識は重要ですが、それは次のステップに行くための準備)。より深く「考える主体」になります。
たとえば、「1+1=2」とされているが、「答えはほんとに2でいいのか?」とか、「そもそも1+1と問う意味はなんだ?」とか、「待て待て、そもそも1の定義が怪しい」「というか『+』とか『=』ってなんなんだろう…」とか考え始めます。
アホなのか…。と思いますか?
実は、これができるようになるためのトレーニングが大学での学びです。考える力、問う力、調べる力、論じる力、対話する力などを鍛えます。
つまり、単純化して言うと、既に知られている「知識」を吸収するのが生徒で、それでは終わらず、まだ広く知られていない「知識」を明らかにするのが学生です。
未知の状況に立ち向かう力
実はこの力、これからの人生でめちゃくちゃ役に立ちます。というのも、たとえば今の状況を考えてみてください。新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の移動が著しく少なくなってしまいました。
私の専門は観光学で、これまで観光関係の授業の中では「今は、世界中で人の移動がものすごく増えていて「移動社会」と呼んでも良いくらいなんですよ」とドヤ顔でぶちかましてましたし、2018年に出した『巡礼ビジネス』(KADOKAWA)という本でも、そう書いてます。ところが、この数か月で状況は一変しました。
「インバウンドの観光客が多すぎて、オーバーツーリズムだ!なんとかせねば!」と言っていたのが嘘のように、観光地には人がいません。これまで「観光振興による地方創生」を掲げて観光客誘致を頑張っていた自治体の中には「来ないでください」と真逆のメッセージを発信しているところもあります。
そんな時、「生徒」的な考え方のままだとどうでしょう?対応不可能です。だって、教科書に書いてあることと違う状態になっちゃったんですもん。いきなり「1+1=2じゃない何かに変わりました」とか言われても、「じゃあ何?」と言うばかりで、教えてもらわないと何もできません。
そこで頼れるのは「学生」的な考え方です。
人の移動がここまで減ってしまった世界で、どうやったら社会をうまく回していけるのだろうか。人の移動の代わりになるものは何か、どういうシステムを作ればあまり人と会わずに経済活動を行えるのか、元通りに人が移動することができるようになるにはどうしたらいいのか…。
皆さんが大学で「学生」として身に着けるのは、未知の状況に立ち向かう時に使える「考える力」です。様々なことに興味、関心を持って、どんどん学んで、どんどん考えてくださいね(^_^)
それでは今回はこの辺で♪つぎは、「その3」でお会いしましょう!お互いに自分の心身を大切に、過ごしましょうね。
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