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生産者さんを訪ねて。vol2


飲食店さんからのお仕事で食材の背景を辿る「生産者を訪ねて」という企画をやっています。取材・撮影・ライティングと色々とやらせていただいていて、せっかくなのでnoteでもご紹介したいなと、アップしてみました。
第2回は兵庫県北部 豊岡市の『北村わさび』さん。飲食店のスタッフと共に、5代目を受け継がれた北村さんにお話をお伺いしました。



収穫が待ちどおしい食材


イタリアンで『わさび』というと、あまりイメージがないかもしれませんが、実はオリーブオイルとの相性が抜群。
兵庫県北部の豊岡にある『北村わさび』さんのわさびは、辛みだけでなく甘みもあり、風味も豊か。収穫の時期を待ちわびている食材のひとつです。

区分けされたわさび田の間をさらさらと流れる湧き水


この水は70〜2万年前の火山の噴火によって湧き出たもので、火山灰の黒ボク土を通ってくるから栄養分も豊か。
足下に敷き詰められた石ころも、そのほとんどが火山岩で、通気性や透水性も良く、良質なわさびを育てるのに最適なのだそう。古からの自然の恵みを受け、この土地ならではの風味あるわさびが生まれます。

300年前から変わらずある火山岩。先人がひとつひとつ割って敷き詰めたもの


『北村さわさび』さんでは自家採種・自然交雑の栽培を60年間続けています。蜂が自然と受粉して実ができ、そこから種を取って苗を育てるのに約1年、育った苗をひとつひとつ丁寧に手植えし、収穫できるまでにさらに1年の月日がかかります。
そうして約2年をかけて丁寧に育て上げても、気候や自然の影響で、収穫できるわさびが全体の3分の1程度になることも。

「野生の鹿が増加し、山に生えている草を食んでしまい、豪雨になるとわさび田の水にも土が流れ込んできます。それに加え、昔に比べて水温や気温が上がったことで、わさび栽培に適した水質を保ちにくくなってきているんです」

1年後の収穫に向けて育てている苗


過去と未来を背負う


300年もの間、代々この場所で続けられてきたわさび栽培。
五代目を受け継いだ北村さんは、日々、温暖化の影響を感じています。

「水温が上がると虫も増えてわさびを食べてしまい、食んだところが黒くなってしまうんです。味に変化はないけれど、出荷するのは難しくなります」

暑さに強い苗ができたり、様々工夫を凝らして実践してきましたが、今後はわさびの栽培を縮小せざるを得ないのだそう。

5代目を引き継いだ北村さん。やさしい口調の後ろにどっしりとした覚悟が感じられる


先人から受け継がれてきたものが失われつつあることや、刻々と変化する自然環境に日々向き合い続けることは、果てしない不安を抱えながら生きていくことのように思います。

それでも北村さんは、この場所が与えてくれる自然の恩恵を守りながら、できる限り栽培を続けていきたいと話してくれました。

2年の歳月と自然の恵を受けて育てられたわさび。奇跡のように感じられる


知ることで変わる。


自然から離れて生活していると、気候変動を実感する機会は少ないかもしれません。今回北村さんのわさびを通して、普段扱う食材がなくなってしまう未来があることを、自分の体験として感じることができました。
それと同時に、今あるものが失われていくことをわかっているのにどうすることもできない現状に、心がぎゅっと縮こまるような思いです。

火山岩や湧き水のような自然の恵を受けて育つわさびと同じように、人間だって自然があるから生きていることを、本当の意味で理解して行動を変えることが、自分たちのできる「未来を守ること」なのだと、北村さんの姿勢から教わりました。





西日本での数少ないわさび栽培を守り続けている北村さん。イタリアンにも合う自然の力強い風味をもつ北村わさびも、湧き水が光るきれいなわさび田も、間接的でも守っていけるようにできることから始めたいと思います。

もうすぐクリスマス。電気を消してキャンドルを灯せば雰囲気もすてきな上に節電にもなります。ごはんもなんだかおいしく見えるかもしれません。
お店でも食品ロスを減らして旬の食材も食べられる「日替わりランチ」の提供や、電気使用量の少ない照明の設置など、お客さまも地球にも優しくあれる工夫を日々凝らしています。

身近なことから少しでも。未来の食を守る行動を。


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