我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?《深読み 千と千尋の神隠し&タイタニック》vol.29
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2019年12月XX日
途方もない考えに取り憑かれた男の夢の中
第一階層『千と千尋の神隠し』
国道21号の分かれ道
うふふ。それじゃあ『タイタニック』に戻りましょうか…
そもそもなぜジェームズ・キャメロンは、ルイス・ボーディーンに「HALF A MILE AWAY(半マイル先)」と言わせたのか…
その理由は、ルイス・ボーディーンによる「タイタニック号の物語」が「イエス・キリストの物語」に重ねられていたからだ…
水没前のタイタニックは「受胎告知」に…
そして、水没地点から HALF A MILE AWAY(半マイル先)の海底の丘へ落ちるタイタニックは「ゴルゴダの丘での十字架刑」に重ねられていた…
『Annunciazione di Cortona(コルトーナの受胎告知)』
Fra Angelico (フラ・アンジェリコ)
ボーディーンが着ていたTシャツの柄「スマイルマークに撃ち込まれた銃弾と飛び散る鮮血」は…
「処女マリアに撃ち込まれた銃弾(聖霊)」であると同時に…
「十字架のイエスに打ち込まれた大釘(聖痕)」を表していた…
老ローズが語った「タイタニックの愛の物語」もそうだ…
タイタニックにはイエス・キリストが投影されていた…
あのポーズを見れば一目瞭然…
こっちでしょ、クリス(笑)
すまん、つい…
人類の至宝を探し求めていた Brock Lovett船長は、まさにキリストの聖杯伝説に取り憑かれたトレジャーハンター…
ちなみにトランプの「ハート(心臓)」は元々「カップ(杯)」だった…
つまり、人類の至宝「the Heart of the Ocean(ハート・オブ・オーシャン)」とは、人類に永遠の命をもたらす救世主イエス・キリストこと…
だから「幻のエンディング」バージョンでは…
ハート・オブ・オーシャンに触れたトレジャーハンターが「My God…」とつぶやき…
ルイス・ボーディーンが「Jesus!」と叫んだ…
そして「ハート・オブ・オーシャン」が降臨して…
海底のタイタニックに眠る死者たちがよみがえり、永遠の命を得た…
『The Last Judgement(最後の審判)』
Fra Angelico (フラ・アンジェリコ)
だから、老ローズの回想「愛の物語」が終わった後に、ボーディーンはこう言ったわけだ…
BODINE : We never found anything on Jack. There's no record of him at all.
ボーディーン「我々はジャックに関するものを何も見つけられない。彼の記録は何一つ存在しないんだ。」
これに対して老ローズは、こう返す…
最愛の孫娘リジーへ視線を投げかけながら…
OLD ROSE : No, there wouldn't be, would there? And I've never spoken of him until now. Not to anyone, not even your Grandfather.
老ローズ「ええ。そんなものは見つかるわけがないわ。私は今この時まで彼のことを話したことはなかった。誰にもよ。あなたのおじいちゃんにさえも。」
そして例のキメ台詞が飛び出す…
OLD ROSE : A woman's heart is a deep ocean of secrets.
老ローズ「女の核心部は秘密だらけの深い海」
この一連のやり取りから導き出せること…
それはリジーの「おじいちゃん」が「ジャック」だという秘密…
ボーディーンは言った…
「我々はジャックに関するものを何も見つけられない」と…
そして「彼の記録は何一つ存在しない」と…
まるで『ユージュアル・サスペクツ』のカイザー・ソゼのように…
しかし「ジャックの記録」は存在した…
しかも、彼らのすぐ目の前に…
彼らがローズの回想話のトリックに気付いたら面白かったのに(笑)
残された「ジャックの記録」とは、リジーのDNAの中にある「父親由来の塩基配列」のこと…
ジャックとローズの間に生まれた子供の娘であるリジーには、ジャックの遺伝情報が受け継がれている…
それはまさにジャックという人間が存在したことの「あかし」となるもの…
それを「record(記録)」と呼んでいたわけだ…
だからローズは、わざわざリジーを見ながら言った…
そこに「答え」が隠されていたから…
映画女優でシングルマザーだったローズと結婚したカルバート氏は、おそらくそこに「深いワケ」があることを察して、過去を尋ねなかったのだろう…
結婚する際には役所での手続きも必要なので、ローズ・ドーソンという名前が偽名であることも知ったはず…
なにせ、そんな人物の出生記録は、どこにも存在しないのだから…
そして、あのやり取りには「もう1つの意味」がある…
だから老ローズは、こう言った…
OLD ROSE : But now you all know there was a man named Jack Dawson, and that he saved me, in every way that a person can be saved...
I don't even have a picture of him. He exists now only in my memory.
ローズ「だけど今、あなた方は知っている。ジャック・ドーソンという名の男がいたことを。彼はわたしを救った。ひとりの人間としてやれる限りの手を尽くして。わたしは彼の写真さえ持っていない。彼はわたしの記憶の中にだけいる。」
この言い回しは非常に意味深だ…
ある「人物」が、ひとりの人間としてやれる限りの手を尽くして、つまり自分の命を犠牲にして、人を救った…
しかも、その「人物」の写真は残っておらず、救われた人の記憶の中にしか存在しない…
そして、その「人物」の名は「Jack Dawson」だという…
「Jack」とは「Jacob(ヤコブ)」の愛称…
「Dawson」とは「Davidson(ダビデの子)」の短縮形…
つまり「Jack Dawson」という名前は、「受胎告知」で天使ガブリエルがマリアに告げたイエス・キリストの説明をそのまま名前にしたもの…
『Luke(ルカによる福音書)』
1:31 見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。
1:32 彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、
1:33 彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう
映画『タイタニック』の中では、タイタニックは「she」と呼ばれていた…
だからタイタニックの話をしながら、同時に「女体」の話にもなっていた…
聖書に出て来る「女体」といえば『ヨハネの黙示録』…
神の怒りによって水没させられた「大淫婦バビロン」と…
旧世界がすべて消失した後に現れた新天新地、「夫のために着飾った花嫁」こと「新しいエルサレム」…
やっと「時計と天使像のある大階段」に戻ってこれた…
『千と千尋の神隠し』冒頭シーンの標識に書かれた「route 21」を説明するのに随分と時間がかかったわね(笑)
まったく恐ろしいとしか言いようがない…
我々はもう何時間ここでこの話をしているのだろうか…
どうやら深読みの夢の中を甘く見ていたようだ…
「彼」もこうして帰って来れなくなった…
ミイラ取りがミイラにならないように気を付けましょ…
うむ…
私もサイトーみたいに皺くちゃの老人にはなりたくはない…
それじゃあ映画『タイタニック』の深読みを終わらせましょう…
すべての秘密は、あの大階段、『ヨハネの黙示録』第21章にある…
つづく
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