1290-1335『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日
スナックふかよみ
それじゃあ、話を戻しましょうか。
いよいよ『ダニエル書』第12章《終わりの時》の、終わりの時ね…
よろしく、ジョー…
はい。
ダニエルのビジョンに現れた《亜麻布をまといし男》は、両腕を上げるポーズを見せ、《真理》の顕現《終わりの時》について語りました…
「それは、ひと時と、ふた時と、そして半時までに。聖なる人が力尽きる時までに、すべては完遂されるでしょう」
「3時半までにはメシアが十字架上で力尽き、預言は全て成就する」
という意味でしたね。
しかしダニエルは、この《終わりの時》の意味がわかりませんでした…
これまで数々の謎を読み解いてきたのに?
そうなんです…
ダニエルをもってしても「聖なる人が力尽き、3時半までには全てが完結する」の意味が分からなかったのです…
しかしダニエルには、夢に見たビジョンを後世に書き残すという、重大な使命があります…
だからダニエルは、《亜麻布をまといし男》に対し、正直に質問しました…
「Oh my Lord!これで終わりですか?この話のオチは?いったい、どうまとめればいいんです?」
ここまでダニエルは散々カッコいいとこ見せて来たんだもんね。
意味不明の夢まぼろしを見事に言葉にしてみせ、ライオンと一緒に一晩過ごしても無傷の生還を果たした…
なのに、最後の最後で「え?意味わかんない!」じゃ、カッコつかないわ。
《亜麻布をまといし男》は、何て答えたの?
ダニエルの質問に対する《亜麻布をまといし男》の返事が、『ダニエル書』最後の文章となります…
非常に重要なメッセージがいくつも隠されているので、順を追って見ていきましょう…
まずは冒頭から…
Go your way, Daniel, because the words are rolled up and sealed until the time of the end,
Go your way…
あなたの道を行け…
つまり「己の信ずるままに書け」ってことですね。
そしてまたスクロールの話。この章で二度目よ。なんで?
《roll up》は重要なんです。いろんな意味がありますから…
スクロール、到着する、車で行く、やって来る、いらっしゃい、などなど…
どゆこと?
まあとにかく、《亜麻布をまといし男》は、こう言っているわけですね…
「今わたしが話した言葉の中に、《終わりの時》に関する全てが落とし込まれている。あとはあなたが信じたことを書くだけだ。」
ん?
映画『ライフ・オブ・パイ』のラストシーンで、パイが作家にこんなこと言ってませんでした?
さらに《亜麻布をまといし男》は、こう続けます…
Many will be purified, made spotless and refined, but the wicked will continue to be wicked. None of the wicked will understand, but those who are wise will understand.
「賢き者は、これらの言葉を読みこみ、考え、精錬し、己の血肉とするでしょう。しかし、悪しき者は、悪しきままであり続けるでしょう。悪しき者は悟ることなく、賢き者だけが悟る。」
心構えが大事ってわけね。
そして《亜麻布をまといし男》は、《終わりの時》に関する具体的な数字を出します…
From the time that the daily sacrifice is abolished and the abomination that causes desolation is set up, there will be 1290 days. Blessed is the one who waits for and reaches the end of the 1335 days.
「日々の生贄が廃される時から、大きな悲しみをもたらす忌まわしき出来事がセットアップされるまでの期間は1290日ある。幸いなるかな、待つ人よ。1335日の終わりに至る人よ。」
1290日と1335日? 何この数字。
1290日の最後の日にセットされる《大きな悲しみをもたらす忌まわしき出来事》は、《イエスの十字架刑》って意味でしたよね…
1290日って3年?4年?
えーと…
ちょうど3年半です。
3年半?
《終わりの時》の時刻《3時半まで》みたいじゃん。
そこに被せてるとか?
《三くだり半劇場》なんてのもあったわよね。
それを言うなら《みこすり半劇場》!
うふふ(笑)
大事な何かを、忘れていないかしら?
《3年半》といえば?
3年半…
あっ!
イエスが宣教活動した期間《公生涯》じゃないですか!
その通りです…
この《1290日》という数字から、メシアであるイエスの活動期間が定められました…
じゃ、じゃあ… 1335日のほうは?
《1335日》は、十字架刑の後の出来事に関する数字…
十字架刑の前、イエスが語る言葉を信じていた者たちは、イエスの有罪&公開処刑で離れていきました…
しかも一般人だけでなく、常に行動を共にしてきた弟子たちでさえ、イエスが残した最も重要なメッセージ《復活》を信じていなかったのです…
しかし、ただ一人だけ、うっすらと信じていた弟子がいました…
その弟子もイエスの言葉の真意を悟ってはいませんでしたが、空になった墓と、置かれていた亜麻布を見て、すぐに《復活》を信じたのです…
誰?
使徒ヨハネ…
『ヨハネによる福音書』『ヨハネの黙示録』などのヨハネ文書を書いたとされる、福音記者ヨハネです…
『Apostle Johannes(使徒ヨハネ)』
ピーテル・パウル・ルーベンス
ああ、すっかり忘れていました…
そもそも今わたしたちが『ダニエル書』の話をしているのは…
『ライフ・オブ・パイ』と『ヨハネによる福音書』の関係を深読みするためだった…
そうだったわね…
なんだか今夜って変…
十分前のことが大分前のことのように感じられる…
じゅうぶん前のことが、おおいた前?
そんなこと言ってないでしょ!どんな耳してるの?
10分前のことが何日も前のことみたいに感じるってこと!
あなたもそう思わない?
そう言われてみれば、そんな気もするかも…
さっき外に出ていった良ちゃんと、もう何日も会ってないような…
ここだけ時空が歪んでたりして…
え?
今夜、ここにいるアタシたちは、世界から切り離されてしまった…
本当の世界はもう、とっくに2020年…
こ、怖いこと言わないでよ!
まだラグビーW杯だって見てないし、紅白歌合戦も見てないのに、もう2020年だなんて…
・・・・・
そんなどうでもいい話は良子ちゃんよ!
今は《1335》と使徒ヨハネの話でしょ!
あ、そうだったわね…
いったい《1335》って何なの? ジョー、教えて頂戴。
はい…
共観福音書と呼ばれるマタイ・マルコ・ルカでは、《復活》は1日程度の出来事として描かれています…
しかし、イエスの復活を唯一信じて待っていたヨハネによる『ヨハネによる福音書』だけは、そうではありません…
最後にイエスは、ガリラヤ湖で漁をしていた弟子たちの前にも現れ、魚やパンなど食べ物を勧めます…
『ヨハネによる福音書』の世界観によれば、イエスの十字架刑から昇天までは四十数日間…
つまり…
イエスの公生涯の始まりから、復活後の昇天までは、約1335日なのです…
なんてことなの…
使徒ヨハネは、自分のことを《信じて待ち、1335日目に至る人》に重ね合わせたのね…
さすが自分で「先生にとても可愛がってもらった弟子」とか書いちゃうだけあるわ…
ヨハネは、この《1335》という数字を、どうしても成就させたかったのでしょう…
だからラストシーンでの魚の数も《153》にしたのです…
『ヨハネによる福音書』
21:10 イエスは彼らに言われた、「今とった魚を少し持ってきなさい」
21:11 シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三びきの大きな魚でいっぱいになっていた。そんなに多かったが、網はさけないでいた。
確かに「何で153匹?どんだけ?」って思ってた…
1と3と5が使いたかったのね…
旧約聖書『ダニエル書』最終章の《1290》と《1335》が、こんなふうに再現されたなんて…
福音記者ヨハネのライター魂って、すごい…
《1290》と《1335》の預言を再現させたのは、福音記者ヨハネだけじゃないよ…
もうひとりのヨハネも…
え? もうひとりのヨハネ?
洗礼者ヨハネのことですか?
そっちのヨハネではない。
もうひとりのヨハネとは…
フランスのブルトン語(ブルターニュ語)でヨハネを意味する、Yann のこと…
パイの物語『LIFE OF PI』を書いた、Yann Martel(ヤン・マーテル)です…
・・・・・
ええ?
『ライフ・オブ・パイ』でも《1290》と《1335》が再現されているんですか?
再現されているのは、原作の小説だけ…
残念ながら映画版ではカットされています…
ですよね、岡江さん?
その通り…
しかし、僕以外に気付いていた人がいたとは…
あら、あたしも気付いてたわよ(笑)
千葉と岡本のドライブ… 長い長い自動車の旅でしょ?
千葉と岡本の自動車の旅?
そんなシーン、確かに映画には無かったわよね…
千葉と岡本が登場するのは、いきなり病室だったわ。
ヤン・マーテルの小説では…
千葉と岡本は、ロサンゼルスのロング・ビーチからレンタカーを借りて、奇跡の生還を果たしたパイが入院しているメキシコの病院へ向かう。
なぜなら…
二人の外交員《千葉と岡本》には、イエスの復活シーンに現れた《二人の天使》が投影されているから…
『イエスが納められた石棺の両脇に座る二人の天使』
だけど、LAからの自動車の旅とか関係ないでしょ?
LAには天国が投影されているんだ。天使たちの住む街《Los Angeles》だからね。
しかも Angel(天使)と Agent(外交員・代理人)のダジャレとの複合技だ。
つまり…
《LAから二人の外交員が、奇跡の生還を果たしたパイのいる病室へ向かう》
というのは…
《天国から二人の天使が、奇跡の復活を果たしたイエスのいる石室へ向かう》
という意味になってるんだよ…
マジで!?
ちなみに《Los Angeles=天国》のギャグは、多くの作品で使われている…
クリストファー・ノーランの代表作『INCEPTION(インセプション)』で、最後にディカプリオたちがロサンゼルス空港に着いたのも、それだ…
ディカプリオ演じる主人公は、自分がターゲットにインセプションしたつもりになってたけど、本当は自分がインセプションされていた…
自分の夢の中の存在だと思っていた妻からね…
実はディカプリオのほうが、夢の中の存在だったというオチ…
そんなこといいから、《1290》と《1335》は?
そういえば『インセプション』でも、暗号めいた数字《528491》が鍵になってたよね…
あれは、サッカーの元イングランド代表監督スヴェン・ゴラン・エリクソンの誕生日《1948年2月5日》を逆さにしたものだった…
だから今はノーランのことはどうでもいいってば!
『LIFE OF PI』で再現される《1290》と《1335》の話でしょ!
ごめん。クリストファー・ノーランの話になると、つい…
教官は、クリストファー・ノーランにもうるさいですからね。
トム・ウェイツやボブ・ディラン、そして米津玄師と同じように…
それでは『LIFE OF PI』で再現される《1290》と《1335》を解説しよう。
LAについた千葉と岡本は、パイが入院する病院の町トマトランを、地図で読み間違えてしまった…
LAからトマトランまで約800kmだと思ったから車で行ったのに、そこはパイのいる町《Tomatlan》ではなく《Tomatān》だったんだ…
二人はそこからさらに約200km南下し、Santa Rosalia という港町から200km弱フェリーに乗ってカリフォルニア湾を渡り、Guaymas という町へ着いた…
ここまでが千二百数十km…
なんかドライブしながら町の名前が次々出て来て『ルート66』みたい…
そして、Guaymas から南へ千三百数十kmひたすら車を走らせる…
ようやく二人が《Tomatlan》にあるパイの病室へ辿り着いた時は、LAを出発してから41時間、およそ2600kmを移動していた…
ああっ!千二百数十kmと千三百数十km…
1290と1335だ…
よ、よくこんなマニアックなことに気付くわよね…
何者なのアンタたち…
僕らは特別でも何でもありません…
ただ、放っておけないんですよ…
作品中に意味有り気に出され、そのまま回収されない数字や固有名詞が…
ある意味、病気だわ…
かもしれませんね…
だけど、いつか誰かが拾わなければならないんです…
作者は決して口にしませんが、心の中のどこかでは、それを望んでいるはず…
・・・・・
あらあら、しんみりしてる場合かしら?(笑)
まだ『ダニエル書』第12章は終わりじゃないのよ。
大事な大事な、最終章の最終節が残ってる…
《亜麻布をまといし男》による〆の言葉…
よろしくね、ジョー。
はい…
つづく
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