深読み バック・トゥ・ザ・フューチャーvol.2(第169話 ポール・サイモンの HEARTS AND BONES ㊳「Rene and Georgette Magritte with their dog after the war」XⅤ~『深読み ライフ・オブ・パイ&読みたいことを、書けばいい。』)
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2019年9月19日
スナックふかよみ
なるほど…
「DOGのEINSTEIN」に、そんな意味が隠されていたとは…
徹底して作りこまれているわね…
まだまだこんなもんじゃないよ。
ここから映画の主人公マーティが登場する。
マーティの発する言葉や行動は、完璧に『受胎告知』の再現になっているんだ…
それでは、もう一度オープニング・シーンを見てみましょう。
2分55秒からです…
何が描かれていたかな?
まずマーティは、玄関マットをめくって、ドアの鍵を隠すわ。
これはもう気付いたでしょ?
「アインシュタインのDOG FOOD」の元ネタのすぐ近くに映っていたから。
フラ・アンジェリコの『受胎告知』夜バージョンに描かれていた、マリアの家のマットね…
まったく同じ色をしていて、同じように、めくれていたわ…
そしてマーティは、こう言いながら、家の中に入ってくる。
Hey, Doc? Doc. Hello, anybody home? Einstein, come here, boy.
What's going on?
これまでの映像の中で「DOC」と「EINSTEIN」は何を意味していた?
「DOC」は「神」で…「EINSTEIN」は「イエス・キリスト」です…
それじゃあ、マーティは何と言っている?
「神よ、神よ、なぜ答えてくれないのですか?子イエスよ、ここに来たれ。何が始まっている?」
だね。
そしてマーティは、ドクの全自動システムが引き起こしていた「大惨事」を見て、こう言う…
Oh, God... Oh, Jesus...
いきなり答えを言っちゃってるわ。
物語の導入シーンとは、そういうものだからね。
非常に重要なことが、さりげなく提示される。
その時は意味に気付かなくても、あとからジワジワくるようになっているんだ。
映画でも小説でもクラシック音楽でも、名作と呼ばれる作品は、とにかく導入部が素晴らしいです…
そこですべてが決まると言ってもいい…
その通り。
さて、マーティは次にこんな行動をとる。
背負っていたリュックサックをスケートボードの上に乗せ、軽くキックするんだ。
そしてスケボーは、隠されていたプルトニウムの箱に向かって、ゆっくりと走って行く…
これが何を意味しているか、わかるかな?
あの「プルトニウムの箱」は、旧約聖書のモーセ五書に出てくる「契約の箱」…
ドクの全自動システムについていたテレビのニュースで「失われたこと」が報道されていました…
そうだね。
ドクの発明した「全自動システム」とは「旧約」を表していた。
「無数の時計」があったのは、旧約聖書が「様々な時代」を描いたものであることも意味している。
そして様々な時代にまたがる旧約の預言が、人の原罪を背負って死んだナザレのイエスによって成就される、というのが新約だ。
だからイエスは言った。「モーセは私のことを書いたのだ」と。
つまり「荷物を背負ったスケボー」は「新約」ということ?
「4つの車輪」は4つの福音書だね。
それが「箱」とくっつくことによって「預言の成就」が暗示されている。
モーセ五書の物語が、そのままイエスの物語になるように。
「海を歩いて渡る」は、ガリラヤの海で再現され…
「失われた契約の箱」は、墓に収めた遺体が消えることで再現され…
「モーセが石板を破棄する」は、「人は律法のためにあるのではない」という言葉で再現され…
「天から与えられた食べ物マナ」は、5つのパンと2匹の魚で5000人の腹を満たしたことで再現される…
ドクの全自動システムで描かれた「旧約」が、すべて「新約」につながるということですね。
そういうこと。
さて、ここからマーティは、急にアンプをいじり始める。
いくつもの「ダイヤル」がアップで映されるんだよね。
中でも強調されるのが、最後に映し出される「2つのダイヤル」…
あっ!これだわ!
その通り。
宗教画で聖人の頭の後ろに描かれる「光背」は「ダイヤル」によく似ている。
これは様々な小説や映画で使われる定番のネタだ。
ちなみにカズオ・イシグロは、この「光背」を「頭がボール状になるまでグルグル巻いた包帯」として描いていましたね…
あれは確か短編集『夜想曲集』の中の「Noctune」だったと思います。
その通り。カズオ・イシグロはこの手のジョークが上手いからね。
さて、マーティは、アンプとギターをシールドでつなぎ、ピックを構える…
そのピックは銀色のものなんだけど、光の反射で水色に輝いていた…
なんだか魚の鱗みたいですね。
そう。あれは「ウロコ」だ。
え?
新約聖書の有名な逸話「衝撃的な出来事によって目からウロコが落ちる」を再現している。
でも、それって『使徒言行録(使徒行伝)』でしょ?
福音書ではないわ…
その理由は、いずれわかる。
とても重要なことなので、後程たっぷり話すとしよう。
「後程たっぷり」ばかりよね…
あれ?
どうしたの?
そういえば、ダイヤルの下に貼られていた「PRIMARY」という文字…
プライマリー?
そうそう。言い忘れていた。
「PRIMARY」のダイヤルとは「マリア」のことだ。
そしてもうひとつの「OVERDRIVE」とは…
「人を酷使する」という意味…
うわあ…
だから「SPEAKER」は「衝撃波」を発したんだよ。
天使ガブリエルの発言に、マリアが衝撃を受けたように…
スピーカーの「2か所」から噴き出る「火花」は、天使ガブリエルの「衝撃発言」だね…
天使ガブリエルの衝撃発言は「3つ」じゃないの?
セリフのラインが3本あるでしょ?
直線状になっているセンターの言葉は、マリアのものだ。
だから「スピーカーの火花」ではなく、真っ直ぐ伸びているギターの「シールド」として表現されている。
あ、なるほど。うまい…
そして衝撃で吹き飛ばされたマーティは、サングラスを外しながら「Rock and Roll...」と呟く…
岩が転がる…
これね。
今まで顔が映りませんでしたが、マーティは「サングラス」をしていたんですね。
顔が映ったと同時に、サングラスを外す…
1955年の「ロレインの上着」みたいだわ…
これも何か意味があるのかしら?
そもちろん。
つまり、こういうことだ…
今までマーティには、この部屋の中が「暗く」見えていた…
だけどここから「明るく」見える…
あっ!
今までは『受胎告知』の「夜バージョン」の再現で…
ここから「昼バージョン」に切り替わるということ…
『The Annunciation』夜&昼
Fra Angelico
その通り。
だからサングラスを外した後は、こんな描写が続く…
まず、警報装置が鳴り響きました…
電話に繋がれたベルですが…
これ、要る?
わざわざアップで映す必要ないと思うんだけど…
意味のない描写などない…
これは「昼バージョン」に変わった『受胎告知』の再現だよ。
「黒い線状のものにとまっている白黒の鳥」が「電話線につながれた警報装置」に置き換えられたんだ。
確かに電話線みたいに見えます…
だけどなぜ「白黒の鳥」が「警報装置」なの?
忘れたのかい?
あの「白黒の鳥」は学名を「Pica pica」といい…
英語では「magpie」と呼ばれる鳥…
つまり「カササギ」だ…
あっ…
カササギといえば…
イエスが生まれた家畜小屋の屋根にとまり、耳障りな声で「悲しみの子の死」を予兆した鳥…
『キリストの降誕』
ピエロ・デラ・フランチェスカ
あ…『スリー・ビルボード』の…
いつも「白黒」の服装で、頭部が「ピカピカ」していて、「悲しみの子アンジェラの死」について知っていた「ウィロビー署長」のことだったね。
彼の初登場シーンは「汚い言葉」を家族の前で発するというものだった…
まさにカササギのように…
マーティにサングラスを外させて、見える世界を明るくし、それから「受胎告知の昼バージョン」を再現する…
なぜなら「昼バージョン」にしか「イエスの運命を知るカササギ」は描かれていないから…
なんというコダワリ…
それがプロフェッショナルというものじゃ…
まさに匠の技じゃのう…
そしてマーティは、ここから不思議な行動をとる…
電話機を手に持ちながら、ドクのガレージの中を歩き回るんだ…
異常なまでに長い電話線でしたね…
なぜあそこまで必要だったのでしょう?
すべてに意味があるんだよ。
マーティが電話線を引っ張りながら歩いた経路は、こうなっている…
「F」を横にした形だね…
「FUTURE」の「F」?
違うよ。
昼バージョンの『受胎告知』に描かれている「電話線」の再現だ。
え…
すごい…
「夜バージョン」では、この電話線が「L字型」なので、途中でアンプのスイッチを切りに行けない…
だから「F字型」になっている「昼バージョン」に変える必要があったというわけだ…
BTTFを作ったロバート・ゼメキスやスティーヴン・スピルバーグは…
いったい何がしたかったのでしょう…
『受胎告知』の完璧なる再現だよ。それ以外に何がある?
ここまでする必要があるのでしょうか?
必要はないかもしれない。だけど「やる」んだ…
それがクリエーターという人種の性(さが)…
それに…
それに?
この映画の「原案」と言っても過言ではない「ある作品」が、そうなっているからなんだよね…
その作品に敬意を込める意味で、こんな手の込んだことをしているんだ…
原案? ある作品?
それについては後程たっぷりと話す。
また「後程たっぷり」?
ずいぶん「後程たっぷり」が溜まってるような気がするけど…
そうだったね。それじゃあ速足で行こうか。
マーティとドクとの会話も非常に興味深いものだった。
まず興奮気味のドクがまくしたてる…
Doc: Thank god I found you. Listen, can you meet me at Twin Pines Mall
tonight at 1:15? I've made a major breakthrough, I'll need your assistance.
Marty: Wait a minute, wait a minute. 1:15 in the morning?
Doc: Yeah.
ドク「やっと見つけたぞ!神よ感謝します!よく聞け!今夜1時15分にツイン・パインズ・モールに来れるか?私はついにブレイクスルーを成し遂げた!お前の助けがいるんだ!」
マーティ「ま、待ってよ。1時15分って午前の?」
ドク「Yeah」
また時刻だわ…
「午前1時15分」って何のことかしら…
これは簡単だ。「AM1:15」だからね。
何の時刻? エガちゃんの約半分ってこと?
これは時刻ではない。
「ACTUS APOSTOLORUM 1:15」のこと。
アクトゥス アポストロルム?
『使徒言行録(使徒行伝)』第1章の第15節のことだよ。
さっきマーティは「ウロコ」そっくりなピックを持ってポーズをとったでしょ?
あれが「使徒言行録ネタ」の始まるサインだったんだ。
そこには何が書かれているの?
使徒ペトロの演説。
裏切り者に与えられる「死」について…
そして「復活の証人」について…
『使徒言行録』1:15-22
そのころ、百二十名ばかりの人々が、一団となって集まっていたが、ペテロはこれらの兄弟たちの中に立って言った、「兄弟たちよ、イエスを捕えた者たちの手びきになったユダについては、聖霊がダビデの口をとおして預言したその言葉は、成就しなければならなかった。彼はわたしたちの仲間に加えられ、この務を授かっていた者であった。(彼は不義の報酬で、ある地所を手に入れたが、そこへまっさかさまに落ちて、腹がまん中から引き裂け、はらわたがみな流れ出てしまった。そして、この事はエルサレムの全住民に知れわたり、そこで、この地所が彼らの国語でアケルダマと呼ばれるようになった。「血の地所」との意である。)詩篇に、『その屋敷は荒れ果てよ、そこにはひとりも住む者がいなくなれ』と書いてあり、また『その職は、ほかの者に取らせよ』とあるとおりである。そういうわけで、主イエスがわたしたちの間にゆききされた期間中、すなわち、ヨハネのバプテスマの時から始まって、わたしたちを離れて天に上げられた日に至るまで、始終わたしたちと行動を共にした人たちのうち、だれかひとりが、わたしたちに加わって主の復活の証人にならねばならない」
これって、午前1時15分以後のドクのことじゃん…
テロリストを騙してプルトニウムを手に入れたから、裏切り者として死の罰が与えられた…
真ん中部分の「荒れ果てる土地と屋敷」の記述も、その通りだし…
最後の部分で語られる「復活の証人の必要性」も、その通りになる…
そして「わたしたちの間を行き来した時間」つまり「タイムスリップ」についても、その通りに再現される…
「ヨハネのバブテスマの時」から「わたしたちを離れて天に上げられた日に至るまで」が…
「天に上げられた日」は「ラストそのまんま」だからわかるんだけど、始まりの「ヨハネのバプテスマの時」は?
洗礼のシーンなんて、あったかしら?
あったでしょ。午前1時15分から、ツイン・パインズ・モールで。
これのことだよ。
デロリアン?
バプテスマ(洗礼)とは、水を通じて「聖霊」を体内に迎え入れる行為…
聖書で言及されるように、絵画では「光輝くハト」として描かれる…
よく似てると思わない?
ドアが鳥の翼「ガル・ウィング式」になっているデロリアンと…
『ヨハネによるイエスの洗礼』
グレゴリー・ガガーリン
やられた…
またしても『受胎告知』昼バージョンの再現です…
ドクの言っていた「重大なブレイクスルー」とは、これのこと…
それまで唯一であり絶対だった「神」が「子」を作る…
しかも産ませる相手は人間で、あろうことか「処女懐胎」させるという…
確かに旧約の世界からしたら、とんでもないブレイクスルーですよね…
そして「TWIN PINES MALL」という地名の由来も『受胎告知』から来ている…
2本の松が生えていたから、そう名付けられたんでしょ?
だけどタイムスリップしたデロリアンが1本倒してしまったから、「LONE PINE MALL」に変わってしまったのよ。
この逸話は、『受胎告知』の昼夜バージョンにおける「聖なる木」の本数の違いが元ネタだ。
昼バージョンでは、楽園に「知恵の木」と「命の木」の2本が描かれている…
だけど夜バージョンでは、「知恵の木」1本だけになっているんだよね…
うひゃあ…
あれってバナナの樹じゃない?
日本人は「知恵の実=林檎」と考えるけど、世界には「バナナ」だったと考える人も多い。
もう忘れたのかい?
あっ…
バナナの学名は「Musa spp」…
「Musa(ムーサ)」は「Moses(モーセ)」…
『ライフ・オブ・パイ』で「バナナは水に浮くか?」が問われたのは、これが元ネタでした…
イエスの言葉「モーセは私について書いた」を実験するために…
そうだったわ…
今夜のことなのに、なんだか何ヶ月も前の話のように感じる…
そしてドクとマーティは、聖書に因んだ小ネタを連発する。
Marty: What's going on? Where have you been all week?
Doc: Working.
Marty: Where's Einstein, is he with you?
Doc: Yeah, he's right here.
マーティ「何してたの?この一週間のあいだ、ずっと…」
ドク「働いてた」
創世記… 天地創造…
マーティ「アインシュタインは?君と一緒なの?」
ドク「Yeah。私の右にいる」
神の右に座するイエス・キリスト…
超ベタなギャグ…
あまりにもベタ過ぎて、誰も気がつかないパターンだね。
そして、軽いギャグを飛ばしたところで、二人はオープニング・シーンの「オチ」に向かう。
まず、「3時15分」だったアインシュタインの時計を除いた全ての時計が「8時」になって目覚ましのベルを鳴り響かせる…
でも、それはドクが細工をした時刻…
本当は「8時25分」なのよね。
その通り。
ドクから「8:25」と知らされたマーティは、何かを思い出したかのように、ヒル・バレーの街へ飛び出し、学校へ向かった…
これがオープニングの「オチ」だ。最高だと思わない?
オチ?
遅刻だから慌てていたんですよね?
これのどこが「オチ」なのですか?
そうじゃないんだな…
このあとマーティは、「4つの車輪がついたスケボー」に乗り、「ヒル・バレー」の街の中を走り回り、女性たちに手を振って笑顔を振りまく…
そして「学校」につくと、タイミングよく彼女ジェニファーが現われ、「こっちからは入れない。あっちから行こう」と言われる…
だけど結局先生に見つかり、屈辱的なことを言われ、散々な目に遭う…
そして下校時には、トヨタの高級車ハイラックスを目撃し、見知らぬ人からチラシを渡される…
そしてチラシの裏に、ジェニファーがメッセージと電話番号を書き込む…
それがどうかしたの?
これらはすべて「8:25」から始まったことなんだ。
そうよ。すべて8時25分からの出来事。
そうじゃない。
は?
「8:25」とは、『使徒言行録』第8章25節のことなんだよ。
8:25
使徒たちは力強く《あかし》をなし、また主の言を語った後、サマリヤ人の多くの村々に福音を宣べ伝えて、エルサレムに帰った。
ええっ!?
じゃあ、マーティが愛想を振りまいてたエアロビ教室のママさんたちが「サマリア人」ってこと?
そうだよ。
聖書に出てくる「サマリア人」といえば、「人妻」と相場は決まっているから。
「わたしの渇いた心に水をください」の人妻ね…
『愛の水中花』じゃな。
しかもこの場面が絵画に描かれる際…
サマリアの女は踊っているように見えるポーズで描かれ…
イエスは「長方形状」の石に足を乗せて、バランスをとっているように描かれることが多い…
『キリストとサマリアの女』
ベネデット・ルティ
『キリストとサマリアの女』
フランチェスコ・トレヴィザーニ
なにこれ…
エアロビをする人妻と、スケボーに乗ったマーティだわ…
ファッションが「赤と青」なのも一緒だし…
なんてこった…
「8:25」の続きはどうなっているのですか?
まず、学校の入口でジェニファーが現われて「こっちからは入れない。別のルートから行こう」と言い、結局そっちでも悲惨な結果になった…
その元ネタが「8:26」だ…
8:26 しかし、主の使がピリポにむかって言った、「立って南方に行き、エルサレムからガザへ下る道に出なさい」(このガザは、今は荒れはてている)
そして、マーティが「いつか手に入れる」と宣言したTOYOTAのハイラックスは…
「8:27~29」に出てくる、エチオピアのお偉いさんが乗っていた馬車…
8:27 そこで、彼は立って出かけた。すると、ちょうど、エチオピヤ人の女王カンダケの高官で、女王の財宝全部を管理していた宦官であるエチオピヤ人が、礼拝のためエルサレムに上り、
8:28 その帰途についていたところであった。彼は自分の馬車に乗って、預言者イザヤの書を読んでいた。
8:29 御霊がピリポに「進み寄って、あの馬車に並んで行きなさい」と言った。
トヨタのハイラックスは「ピックアップ・トラック」…
まさに馬車だわ…
うわあ、ホントだ…
それでは「8:30」からは「時計台を救う会」のチラシ…
その通り。
8:30 そこでピリポが駆けて行くと、預言者イザヤの書を読んでいるその人の声が聞えたので、「あなたは、読んでいることが、おわかりですか」と尋ねた。
8:31 彼は「だれかが、手びきをしてくれなければ、どうしてわかりましょう」と答えた。そして、馬車に乗って一緒にすわるようにと、ピリポにすすめた。
8:32 彼が読んでいた聖書の箇所は、これであった、「彼は、ほふり場に引かれて行く羊のように、また、黙々として、毛を刈る者の前に立つ小羊のように、口を開かない。
8:33 彼は、いやしめられて、そのさばきも行われなかった。だれが、彼の子孫のことを語ることができようか、彼の命が地上から取り去られているからには」
これが「SAVE THE CLOCK TOWER」のチラシの元ネタ?
イエス・キリストのことじゃないですか…
そうだよ。
歴史的に大きな価値のある「時計台」とは、「ゴルゴダの丘に立つ十字架」のことだから。
1955年のあの夜に雷が落ちるまでは、ちゃんと天辺に「十字架」があったんだよね…
あ、ホントだ…
避雷針が十字架っぽく見える…
だからマーティの恋人ジェニファーは、チラシの裏にあんな番号を書いたんだ…
「I love you!」という言葉と一緒に…
そういえば、555で始まる電話番号って、存在しない架空の番号ですよね?
その通り。いたずら電話を防ぐために、映画やテレビドラマなどで使われる架空の番号だ。
なぜジェニファーはそんな嘘の番号を?
別にこの番号は何の意味もなかったんだから、わざわざ画面に映す必要もなかったはず…
必要だから、わざわざ映したんだよ。
「歴史的価値のある十字架を救おう」というチラシだから「I love you!」で「555」なんだよね…
は?
「555」には別の意味が隠されている。
獣の数字?
それは666。
555は「LOVE」つまり「愛の人」を表す数字だ…
まさか、イエス・キリスト?
その通り。
なぜ「555」がイエス・キリストなのですか?
KJVだよ…
KJV?
キング・ジェームズ・ヴァージョン、つまり『欽定訳聖書』のことですか?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では「KJV」が「JVC」に置き換えられていた…
どちらも「過去」がレコードされたものであり、また、未来の出来事がレコードされたものでもあるから…
そして、キリスト教徒のバイブル新約聖書の中で、最も大事な言葉は、もちろん「キリスト」という言葉…
その「キリスト」という言葉が「KJV」の中で登場するのは…
555回…
えっ…
KJV愛読者の間では「555」といえば「キリスト」を意味する…
だからジェニファーは「I love you!」と一緒に「555」の電話番号を書いたんだよ…
なんと…
鳳凰拳。
いや、ここでそんなダジャレ要らないから…
みんな衝撃を受けているところでしょ…
ずっと真面目なハナシをしとるから、ちょっと気分転換にでもと…
そうですね。小難しくてマニアックな話が続いていましたから、ここらでムードを変えましょう。
マーティが街を快走する際に流れるBTTFの主題歌『The Power of Love』について、深読みしましょうか。
やっほう!ダンシング・タイムじゃ!
ミュージック、スターティン!
つづく
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