深読み バック・トゥ・ザ・フューチャー vol.15(第185話)
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2019年9月19日
スナックふかよみ
なんてこった…
完璧に歌詞が『BACK TO THE FUTURE』の中で再現されています…
まだまだこんなもんじゃないよ。
フィナーレを飾る3番が残っている。
それでは歌詞を見てみよう… 2分40秒からだ…
3番の前半部はこうね…
And when the night is cloudy,
there is still a light that shines on me
Shine on 'til tomorrow, let it be
厚い雲に覆われた夜に
一筋の光が私の上に輝く
光は私を明日へと導くだろう
レット・イット・ビー
ポール・マッカートニーはイエスの十字架刑の場面をモチーフにしている。
イエスが十字架に掛けられた時、太陽が厚い雲に覆われ、まるで夜みたいに暗くなったからね。
そしてBTTFでは…
マーティが1955年から1985年へ帰るシーンで再現されています…
あっ! デロリアンが突っ込んだ建物…
そう。マーティの乗ったデロリアンは「ASSEMBLY OF CHRIST(キリストの集会)」という名の教会の入口に突っ込んで止まった。
「John Crump」というカリスマ牧師の主催する、いかにもアメリカ的な福音派の教会だ。
1955年は映画館だった建物ですね。
ロナルド・レーガンの映画をやってました。
「crump」って「ドカーン!」って意味でしょ?
そう。何かが激しく衝突した時の音だ。
「John Crump」という名前は、あの時のマーティのことを表現したもの。
なぜならマーティは、「ジョン」を演じていた…
タイムトラベルの前に『Johnny B. Goode』を歌いましたからね。
マーティの使命は、運命の子マーティ・マクフライを誕生させることだった…
1955年にタイムスリップしたマーティは、まだ処女だった母ロレインに運命の子を「受胎」させるために行動し、それが確定してからは洗礼者ヨハネの役割を演じた。
「受胎告知」が描かれる『ルカによる福音書』では、天使ガブリエルがマリアに「ヨハネの存在」を告げるからね。
救世主イエス・キリストが完全なものになるためには、主の道を整える存在、聖霊である白い鳩をイエスの身体に招き入れる前駆ヨハネの存在が必要。
だからマーティは、最後に洗礼者ヨハネのことが歌われている『Johnny B. Goode』を演奏して、1955年の世界を去ったんだ。
使命を果たして世を去った洗礼者ヨハネと同じように…
だから「John Crump(ヨハネがドカーン!)」なのね…
ロバート・ゼメキス、ボブ・ゲイル、スティーヴン・スピルバーグは、細かいところまでホントこだわってる…
それだけではない。
え?
教会の隣は「ELMO'S RIBS」というレストランだった。
エルモ?
そのエルモじゃなくて「St. Elmo's Fire」のことだ。
セント・エルモス・ファイアー?
ちょー懐かしい!
この映画も「St. Elmo's Fire」をモチーフにした物語だったね。
タイトルそのまんまだけど。
セント・エルモス・ファイアーとは確か…
船のマストの先っぽや、尖塔の天辺など、空に突き出した物体の先端部分に現れる不思議な現象「コロナ放電」のこと…
時計塔に落ちた雷のエネルギーを吸収し、タイムトラベルする際に光や炎を放ったデロリアンのことじゃん…
その通り。
ちなみに「St. Elmo's Fire」の名前の由来を知ってる?
いいえ。知りません…
まだキリスト教がローマ帝国で公認される前、エラスムスという人物が人々にイエス・キリストの教えを説いていた…
すると、すぐ近くに大きな雷が落ちて、地面を激しく焼き焦がした…
当然のことながら人々は怯えたんだけど、なぜかエラスムスは何事もなかったかのように説法を続けている…
その様子を見た人々は、こう考えた…
「彼は雷が落ちることを知っていたに違いない。あの稲妻と炎は神のしるしなのだ」
1955年11月12日22時4分に、ヒル・バレーの時計塔に落ちることがわかっていた雷…
その後エラスムスは弾圧によって殉教し、聖エルモとして人々の尊敬を集めるようになった。
そして「St. Elmo's Fire」は「地上世界に現れた神の姿」なので、別名「corposant」と呼ばれるようになる。
「corposant」とは「聖体」、つまり「キリストの肉体」という意味だ。
だから教会の隣が「ELMO'S RIBS」だったのね…
キリストの肋骨…
そして「RIB」は「LIVE」の駄洒落にもなっている。
「神は生きている」という意味だね。
だからドクは生きていた…
そういうこと。
そして3番の歌詞は、こう続く。
I wake up to the sound of music,
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it be
家に帰ったマーティは…
翌朝、「音楽の音」で目を覚ましました…
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの『バック・イン・タイム』で…
そのまんま…
というか、このミュージックビデオは…
この歌が何のために必要なのか完璧にわかった上で作られていますね…
いきなり水に顔を沈めて、それから生首みたいに砂から首だけ出す…
「洗礼者ヨハネ」のこととしか思えません…
だよね。BTTF制作陣から、そういうふうに指示されたんだろう。
さて、『BACK IN TIME』で起きたマーティが1階に降りていき、リッチになった家や兄姉の様子に驚いていると、母ロレインと父ジョージが外出から戻って来た…
あのシーンでロレインは「words of wisdom」らしき言葉をささやきましたっけ?
これといって含みのあるようなセリフを言ってなかったような気がしますが…
そうかな?
マーティの前に現れた二人はまるで別人で、外ではビフが車にワックスをかけていた…
唖然とするマーティに対し、ジョージは高校時代のビフについて話し始める…
そして例の武勇伝に差し掛かったところで、ロレインが割って入って来て、ジョージの話を中断させて、こう言うんだ…
「だけど《彼》がいなかったら、私たちは恋に落ちることはなかった」
あっ!
ロレインはマーティのことをほのめかしてるじゃん!
その通り。
実はあのシーンでは、ロレインが「すべて気付いている」ように描かれている。
これは考えれば当たり前のことだ。
自分の息子が、18歳の時に恋したマーティと瓜二つなんだから。
そういえば…
マーティは1955年の二人と別れる時、未来に起きることを言っちゃってました…
「8歳になった君たちの息子がリビングのカーペットを燃やしても怒らないであげて」と…
だからロレインは、マーティに「夜の湖ドライブ・デート」をプレゼントした…
心から愛する人と、望んでいることを最後までしてきなさいと…
これはロレインとマーティだけにしか通じない秘密…
これが意味することをジョージは知らない…
なぜなら…
かつてロレインが「夜の海」でそうしようとしたところを、ジョージは見ていないから…
その通り。
そしてマーティはガレージを開けて、そこに置かれていた憧れの車トヨタ・ハイラックスを見ました…
「Hi-Lux」が何を意味するのかわかるよね?
ラテン語の「LUX(光)」を人名にしたのが「LUKE」…
つまり福音書『LUKE(ルカ)』の「受胎告知」です…
この車でドライブ・デートすることで、マーティとジェニファーの間に子供が出来るということ…
そしてジェニファーが現われ、1955年のロレインと同じ動作で同じセリフを言う。
驚いたマーティは視線を感じて後ろを振り向いた…
そこには、微笑みながらマーティのことを見ているロレインとジョージの姿が…
二人は「現実をあるがままに受け入れなさい」みたいな顔をして、消えていったわ…
息子マーティに、運命を決定づけるキスを促したんだね。
まさに「あなたがしようとしていることを今すぐにしなさい」だ。
そしてマーティはジェニファーに口づけをした…
それが答え…
3番のサビは、これのことですね…
Let it be, let it be
Let it be, yeah, let it be
There will be an answer
Let it be
なんてことなの…
『レット・イット・ビー』の1番から3番まで、完璧にBTTFで再現されてるなんて…
まだ終わりじゃないでしょ。
『レット・イット・ビー』もBTTFも。
え?
3番の後にはサビが2度歌われる。
「an answer」と「words of wisdom」のバージョン両方がね。
まずは「an answer」のバージョンから…
Let it be, let it be
Let it be, yeah, let it be
There will be an answer
Let it be
あのキスの後に起こることといえば…
ドクの登場だわ…
NEWデロリアンですね。
プルトニウムの核分裂ではなく、生ゴミとビールの核融合で動くデロリアン…
あれって本当は珈琲豆を挽く「コーヒーミル」なんでしょ?
80年代に売ってたドイツ製のマシンで、未来っぽいデザインだから映画『エイリアン』にも使われた。
その通り。
そしてあの「MR. FUSION」こそが、「let it be」と歌われる「an answer」だ。
は?
ロゴをよく見てごらん。
何か気付かない?
これが「let it be」の「an answer」なの?
そう。「主の思し召しの通りに」の「答え」だ。
どういうことなのでしょう?
核分裂エネルギーが動力源だった時のデロリアンは、運転席の後ろで「エネルギーを3つに分割するマシーン」が輝いていた…
だけど新しいデロリアンでは、あのマシーンを作動させることなくタイムトラベルが行えるようになっていた…
なぜなら、動力源が「MR. FUSION」に変わったから…
わけわかめ。ちゃんと説明してよ。
あのロゴが「答え」なんだよ。
「8つの点と4本の線」からなる形を、よく見てごらん…
え?
フィーリングカップル4X4?
ち、違いますよ!
あれは十字架です!斜めになった十字架!
へ?
その通り。
あれは聖アンデレ十字、セント・アンドリュー・クロスだね。
スコットランドの国旗にもなっている。
だからドクの口癖は「Great Scott!」だったのか…
そういうこと。
そして「MR. FUSION」は「MR. WHO SION」と読む。
ミスターWHO? シオン?
「SION」とは、エルサレムにある「神殿の丘セィヨン」をラテン語で表記したもの。
レゲエでお馴染みの「ZION」は、それを英語にしたものだね。
イエスは十字架に掛けられる前に、こんなことを言った。
「私は神殿を三日で立て直す」
形あるものはいつか必ず無くなってしまうけど、神の愛の力は永遠…
つまり、自分こそが人々にとっての心の拠り所「新しいシオン」になるということ…
まさに「There will be an answer」だ…
そして名曲『レット・イット・ビー』のラストである「words of wisdom」バージョンのサビは、BTTFのオチで再現された…
Let it be, let it be
Let it be, yeah, let it be
Whisper words of wisdom
Let it be
BTTFのオチ?
マーティとジェニファーの子供たちの危機を救うため、ドクは二人を乗せて未来へタイムトラベルをしようとした。
するとマーティが慌てて止めようとする…
Hey, Doc, we better back up, we don't have enough roads to get up
to 88.
「ドク!もっとバックしなきゃ!時速88マイル出すには、道が足りない!」
確かに座席後部の「三位一体マシン」の電気は消えてるわ。
作動してない。
そして、大騒ぎするマーティには見向きもせず、ドクはつぶやいた…
まさに「words of wisdom」を…
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の最後のセリフだ…
Roads? Where we're going we don't need roads...
「ロード?我々の未来に、ロードなど必要ない…」
え?
まさか「road」と「Lord」の駄洒落?
未来は「神なき世界」ということですか?
もしくは「load」だね。
「背負う荷」、つまり「原罪」のことだ。
うん。やっぱり「load」の方じゃない?
以前のドクは「神のように未来を知り、都合よく歴史を書き換える」ということを最大の罪だと考えていたけど、あっさり放棄しちゃったから。
なるほど。
そもそもよく考えてみれば、ドクがタイムマシンを作った時点で、それはもう定められていた流れ…
まさに「let it be」です。
それにしてもマジで驚いたわ。
名曲『レット・イット・ビー』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に、こんな関係があったとは…
しかもあの『Dig it』からの流れでしたからね…
実は、これだけじゃないんだ…
は?
BTTFで再現されているのは、アルバム『LET IT BE』全体なんだよ…
ぜ、全体?
曲全部ということですか?
そう。
それで初めてBTTFの全てが説明できる。
まだ取り上げていないシーンとかネタとかあるでしょ?
フランク・シナトラ主演作『It happened in Brooklyn」と、ビートルズのアルバム『LET IT BE』の全曲が揃って初めてBTTFが完成するんだ。
あと10曲もあるけど…
そうなんだよね。そこが問題だ。
もうすぐ朝の5時だし…
どうしようかな…
レット・イット・ビーじゃ。
え?
そんなこと気にして何になる?
BTTFの話題を出した時点で、こうなることは必然じゃった…
ドクのように、己の欲望に正直になれ。
はい…
それでは、出来るだけ速足で…
ふふふ。
これまでも速足だった試しがないけれど(笑)
さすがに、もうすぐ夜明けですから…
今回は本当に急ぎますよ。
まずは1曲目『TWO OF US』から…
つづく
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