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2022年J2第29節横浜FC-いわてグルージャ盛岡「メン食らう」

Jリーグから9月以降のゲームスケジュールが発表になった。それを目にすると、ホームゲームは土日でも14時開始のゲームはなく、すべてナイトゲームに。最近は夏場でなくとも暑い日が多くなり、先を見越したら秋でもジリジリするよりも、少しでも涼しい方が観戦体験としては良いと考えたのだろう。今後も14時キックオフの試合は減っていくのかもしれない。
この日のゲームは18時キックオフであったが思いのほか涼しく感じる。残留争いをしているいわて相手だからなのかスタンドは閑古鳥が鳴いていた。いわて側はともかく、ホーム側の集客は首位を走るチームの試合とは思えない客足である。制限はかかっていないが、心理的に首都圏は新型コロナの影響も出てきつつあるのかもしれないが、それだけではないだろう。

制限はない

とは言え、フィールド上では制限はない。選手はマスクをしてプレーをする訳でもないし、プレーの間にこまめに手洗いや消毒をすることもない。前半9分、いわてのカウンターを受けた時に、相手選手に制限が全くかからずパスがいわて・モレラトに通り、モレラトへの寄せも甘いまま左足で放たれたシュートは横浜のゴールに突き刺さってしまう。

開始早々に先制点を許した横浜は、この試合小川が欠場。スタンドでチームメイトと観戦していたのでコロナ関係ではなさそうだが、ここまで全試合出場の疲労を考慮して欠場させたのならその代償は90分後にやってくることになってしまう。

カウンターを得意とするチームに先制を許してから、チームは中々戦い方を統一できないでいた。それでも当初のプラン通りに裏のスペースを狙ってボールを入れて主導権を握ろうとする。ゼインの飛び出しからのシュートは狙っていた形。ただ、徐々にいわてもラインを下げ対応をしてからこれが難しくなった。それでも裏に蹴って無理やりこじ開けるのか、時間もあるので一旦しっかり組み立てながら崩すのかバラバラなまま。そこに制限をかけて、選択肢を決めて送りだすのがベンチワークのはずだが、動く気配はなし。

失点する前のプランでは、前線にサウロを置いて両サイドのゼイン、山下に裏に入れたボールの支配をして、ラインを下げさせて2列目の選手が飛び出す形を考えていたと思う。でも、サッカーに限らずスポーツは想定外のことが起きるのが常であるが、それが起きた時に変化するのかステイするのか状況判断がよくなかった。いわては、大柄な選手がディフェンスラインに揃っているチームでクロスボールは中々綺麗に入らない。さらに先制点を奪って守備のラインは下がり気味。
秋田戦は結局小川の個の力でこじ開けて終了間際に同点にできた。小川が欠場したこのゲームではどうする予定だったのか。彼はスタンドでチームメイトと観戦していたので、新型コロナ関係はなさそう。小さな怪我などで全試合出場のFWの大事をとったのか、あるいは違う理由なのかはわからないけど、その部分の想定が甘かった。

ワクワクしない

早川監督代行は、運も持っていないかもしれない。後半ガブリエウが負傷して退き、選手を変えて始まった後半直後。右サイドの横パスをカットされていわてのカウンター発動。これをいわて・弓削に決められて0-2となった。後半の立ち上がりの所謂集中力の欠けやすい時間帯に失点。

横浜の目が覚めたのはいわて・ブレンネルに3点目を叩き込まれてからだった。もっとも目が覚めたのか、いわてが店じまいを始めたのか、その両方か。

横浜も近藤を入れて攻勢を強めるが1人気を吐いた彼の突破から渡邉が放ったシュートは枠に飛ばず。決定力のかけらもないゲームはタイムアップまで続いた。小川がいないだけで空砲を放つチームになってしまうとは。

左サイドでは山下が奮闘するもチャンスメイクまではには至らない。彼に必要なのは足元へのボールではなく、スペース。ただし彼よりゼインの方がスペースを使うことには長けているから彼は右でスタメンなのだろう。
基本的に右利きの選手がボールを持つと相手選手はボールに近いので、瞬間的なスピードが圧倒的にあるか、出し抜くスキルがあるか、チームで連携した崩しがあるのか、長い距離を走ることのできるスペースがないと苦しいだろう。
シーズン前に山下はサイドではないと思っていたが、開幕から数戦好調だったのでこの位置での起用が続いているが適正とは思っていない。

(そういった課題の中で山根加入は左サイドのテコ入れなのだろう)

花は咲く

後半は横浜が一方的にボールを支配して、攻める横浜耐える岩手の構図が続いた。
いつからか懐かしく思える自分がそこにいた。順位は低迷し、上位のチームには耐えてゴールを奪ってわずかな勝利に酔いしれていた時代があった。攻撃的、ボールを支配、ゴールを量産、お決まりのフレーズに何度騙されてきたことか。現実は、川崎や大宮に敗戦を繰り返し、水戸や鳥栖と傷をなめあう日々。ある時は月に1回の勝利で降格圏を逃れては安堵と落胆が交じり合ったため息をつく日々。いわてにありし日の横浜を重ねていた。残留圏ギリギリで数少ないチャンスを全員で身体を張って守り切る姿を。
そこに石井がいたのもあるだろうか。彼は2018年限りで横浜を離れ当時J3の盛岡(現いわて)へ。袂をわかった横浜は皮肉にも翌年J1昇格。J3では最下位も味わう屈辱に耐えながら、それでも徐々に階段を上ってここにきた。きっと横浜にいたかったはずだが、新たな土地で花を咲かせている。彼が歩いてきた歴史はいわての歴史の一部である。敵とか味方とかではなく、横浜から出て行った選手たちの活躍を見ると目を細めてしまう。
横浜の猛攻に全員で1点すら守ろうとする姿勢は尊い。その1点で崩壊してしまう可能性が見えているから。3点リードしても、FWの選手に深追いさせない為何度もいわての選手は「バック!」と叫び自陣を固めて、まさしく一岩となっていた。そして、タイムアップの笛が鳴る。

0-3。完敗である。これがJ2。小川がいないと攻撃陣は機能せず、相手の先制点でプランが崩れたのか全体のバランスが崩れてしまう、手を打つもそれが裏目に出る。
ライバルたちはキックオフが横浜より1時間遅かった。負けている横浜をほくそ笑みながら戦った彼らもまた勝利できず。今節は上位陣が軒並み勝てなかった。
少なくとも布陣を見ていると横浜はいわてを舐めていたのは否定できない。この戦いを良い糧にしなければならないだろう。残り13試合である。石井がいわてで花を咲かすなら、横浜も花を咲かせよう。今年すぐに戻るために。もっと大輪の花を咲かせるために。

そんなことを考えながら三ツ沢の丘を降りてラーメン屋へ。試合では面食らったが、ここでは麺喰らう。お腹一杯になって試合のことは仕方ないと受け入れる。もう週末は次の試合である。

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