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2023年J1第19節横浜FC-ガンバ大阪「こうきに」

ガンバ大阪GK・東口はリズムを変えようと様々な手を使っていた。ゴールキックのボールがすでにフィールドにあるにも関わらず水を飲みながら味方選手と話したり、FKなのに悠然とゴールキックを蹴ろうとしたりと、間合いをとったり息をいれさせていた。日本代表経験のある彼がなぜそこまでしないといけなかったのかといえば、横浜が後半押し込んでいる時間が長かったからだ。後半だけで何度もシュートがポストを叩き、東口でなかったらゴールになっていたものもある。連勝中のガンバを横浜は追い込んだ。好機はあった。

航基の移籍

とうとうと言うべきか、やはりというべきか。概ね報道があった通り、小川航基の移籍がほぼ確定の状態になった。クラブがリリースで名前を出すくらいなので、クラブ間では合意し、本人も合意済。残りはメディカルチェックなどだけになるのだろう。

前週に行われた京都戦でも、その前のルヴァンカップの神戸戦でも小川航は欠場していたので、その準備段階に入っているのだろうとは思っていたが、やや唐突なお知らせではあった。心の準備がまだ出来ていないサポーターもいると思うが、これが移籍であり、これがサッカービジネスでもある。このリリースが出て私が最初にしたのは、惜別の記事を書くでもなく、ゲーフラを用意するでもなく、オランダリーグの23/24シーズン日程の調査だったりする。横浜サポなら熱くなるだろう斉藤光毅対小川航基のKOKIダービーは9月1日の金曜か。覚えておこう。
コロナ禍で横浜FCの試合をメインで見る機会が増えたが、元々は旅が好きだし、横浜の選手が代表に選ばれたらその試合を出来るだけ見に行く姿勢の人間なので、そういう熱がまた自分の中でムクムクと頭を起こしつつある。コンフォンとアインが出場したハノイのゲームとか、斉藤光毅が出場したU19ワールドカップだとか、古くはシルビオのワールドカップ予選とか。
悲しさよりもワクワク感が先にくる。

航基の代わり

その小川航基が不在になった後にどうするか。Jリーグのウィンドウはまだ開いていないので、当面マルセロ・ヒアンが担うことになりそうだ。ボールを収める場所が欲しいのだが、この役割を担えるのは現状彼かあるいは高井になるだろう。ヒアンは大柄でいかにもセンターFW感がある。ボールを収めることも出来るが、全体的にまだプレッシャーを受けるとボールロストする部分やトラップが上手くないこともあって軸としては厳しい面はあるが、サウロとの比較で彼を軸にしないといけない面もある。
サウロは爆発的な加速力やタフな選手であるが、前節京都戦みたくハイボールを競らせるのではなく、裏へ抜けさせることでより活躍できる。そう考えると入りは、まずヒアンで、状況に応じてサウロをどこかで投入という算段が今の流れでは最も良い形なのかもしれない。

ただし、それが机上の計算通りに中々うまくいかないのもまたサッカーである。前半は15分くらいまではボールをガンバ大阪に握られて苦しい展開が続く。握らせているのか、握られているのかでは大きく違う。徐々に横浜の形になりだしたのは、山下と小川慶がポジションチェンジを始めてからだろうか。右に山下をもってきて揺さぶったり、左の山下でガンバ大阪・半田を大きく下げることでガンバの右サイドを止めてからは横浜の時間だった。
ガンバ大阪・半田はもっと右サイドから攻勢に出てくるかと思ったが、5バックでしっかりとそれぞれのレーンを守っている横浜に隙が生まれなかった。裏を通すボールは、マテウスが跳ね返し続けガンバの攻撃を止めていた。
カウンターらしいカウンターも最初のパスを止めることが出来たし、スローダウンさせてからは、浦和戦のように斜めに入ってくるボールや選手を跳ね返すだけで時間が過ぎていった。

好機を前にして

山根は前節ファーサイドへのクロスが殆ど形にならず、ニアで伊藤翔のゴールをアシストするも課題は残った。その課題に対して、この日早速修正がされていた。後半8分好機到来。
山根上げたクロスはファーサイドに流れたかに見えたが、林が走りこんでおり、ヘディングでボールを中に戻してゴールのお膳立て。ヒアンが左足で放ったシュートは、ポストを叩いて枠を外してしまう。小川航基なら決めていたのではないか。

この日調子が良い山根はドリブルでガンバ守備陣を一人で突破してシュートを放ったがこれは枠の外。フリーだったのでもう少し落ち着いて打ってもよかったのだが。彼はその約10分後に退くのだが、フィールドの外にあったペットボトルを蹴ろうとした。蹴ってしまうと警告などになってしまう可能性があるので思いとどめたのだが、苛立ちは伝わってきた。クロスもコントロールされていたし、シュートで決めるチャンスもあった。ただ、何かが足りていなかった。

同じタイミングで退いたヒアンも悔しそうに首を振る。この日、ガンバ大阪のディフェンス相手に優位に立つ局面も多く、決定機もあったが仕留められず。神戸戦でのゴール以降、京都戦でもボールを収めることが出来始めて調子もよいのだろう。ブラジル人は夏にコンディションが上がってくるケースもある。小川航基が移籍した後、若干21歳の彼に伸し掛かるものは大きい。

なまくら刀

ヒアンと山根に代わって入ったのは、サウロと近藤。鋭さが武器の二人にゴールへの期待は高まる。右サイドに入った近藤は出場してからすぐに右サイドからのクロスを上げ、またペナルティエリアにも侵入しチャンスを作るが、その先が形にならない。
ならばとクロスボールは、自分のところに落ちてくると思っていなかったのか準備ができておらず、緩い当たりとなりゴールを割るまでには至らず。

終盤には井上をシャドーの位置に上げて、ユーリララと和田で中盤で組ませてまで前線に力をかけていったのだがゴールをこじ開けるまでには至らず。ガンバ大阪・東口の巧みな時間稼ぎの前に、攻撃する時間を失っていった。

アディショナルタイム7分、横浜が敵陣深くでスローインを獲得。丁寧にボールを近藤が吹く最中にタイムアップの笛。抗議をする気持ちもわからなくはないが、小さな頃からサッカーをしていたらタイムアップの笛はいつ吹かれてもおかしくないのは既知のはず。前半から雨が降っていてボールが滑るのはわかるが、悠長に拭いてる暇などなかったはず。
一方で福島主審もその直前まで横浜ボールのスローインだというシグナルを出し、スローインまでは許してそうな態度であったのも確か。そのシグナルを出した後に時間を判断したとも思うが、ややわかりにくさがあったのは否めない。

とは言え、本当に急いでいるのであれば近藤はもっと素早くボールを取りにいくべきだし、その前に武田のFKでもキッカーが決まっていなかったのか30秒近く使ってしまっていた。鋭い切れ味を持つ選手がいても、ボールが渡らなくてはなまくら刀と同じ。横浜にとっては、勝てるチャンスがあったゲームを落とした勝ち点1といえる0-0になってしまった。

好機に航基

チームは現在14得点でその約半分を決めていた小川航を移籍で失うことの不安しか残せなかった。案外こうした時に、そこに立ちたい選手が奮起して新しいヒーローが出てきたりするものだが、果たしてそうなるのだろうか。
好機に航基がいたら、、、と口にしないシーズンを望む。
もっとも、彼の海外志向はわかっていたはずだし、それを前提に編成を組んでいるだろう。

「次に日本に帰ってくるときは必ず日の丸を背負って帰ってきます。そして次のW杯で点を取るのは僕です」

彼は最後の挨拶でそう話した。きっと考えてきていたんだろうなぁ。最後に自分にだけ視線が注がれる場所で、最高に痺れる言葉を言えるのも良いストライカーの条件なのかもしれない。好機に誰が決めるのか。好機に亘基じゃダメですか(ぼそっ


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