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2023年J1第16節横浜FC-サガン鳥栖「間が悪い」

もう金曜日である。試合のあった週末どころか、世の中は天皇杯も過ぎ高知やヴェルスパの躍進で沸いた木曜日も過ぎている。もっと言えば日曜日はリーグ戦である。それなのにこれから前節の観戦記を書こうという愚かな人間がここいる。まったく間が悪い。

守備の間

この試合、GKブローダーセンが戻ってきたボールを左足で蹴るシーンが多かった。敢えて左足で蹴るというよりも、鳥栖のプレスが早いのでバックパスなどで戻ってきたボールを右側に置きなおす時間がないことがほとんどだった。それは偶然ではなく、鳥栖が狙っていたものだろう。ブローダーセンのキックは中々コントロールされないことが多く、さらにそれが利き足ではない左足で蹴るのであれば精度や飛距離は右足よりも劣る。鳥栖としては、左足で蹴らせることでマイボールにする可能性を高めて狙ってプレスをしていたものと思っている。

そうした前線からのプレスに自分たちのリズムを作れなかったのが横浜。この試合は四方田監督が新型コロナに感染して、ハッチンソンコーチが指揮を執ったが、前節のセレッソ戦のように3バックに対して3枚のFWが前線からプレッシャーをかけてきた時に横浜はなかなか策がない。

不在の間

四方田監督が不在となった中で、どんなスタメンが並ぶのかに注目が集まった。前節から考えると、小川航、和田、山根、伊藤らがいない。ベンチ外のメンバーはスタンドで観戦をするのだが、そこにいるメンバーもかなり少ない。中村拓、サウロ、ショーン、市川、コン・フォン、西山、新井らで、ここで欠場したメンバーは観戦も控えている。戦術的な側面はあるかもしれないが、それ以上に新型コロナやインフルなどへの感染による欠場の可能性も頭をよぎる。

チーム内の最善といえるメンバーを欠いてゲームに臨まなければならない。右の近藤が累積警告で欠場し、さらに山根も不在なので左の林を右に持ってきて、左には今シーズンリーグ戦初出場となる武田を起用。
中盤の和田が不在で、ここに三田を起用。ユーリララの方が機動力に優れ、ゴールも奪えるが首脳陣としては、展開力を選んだか。

そして小川航不在でヒアンを起用。これでカウンターの方がチームとしては狙いは保たれるが、三田を起用しているのを見ると、相手をはがしてから展開する狙いも捨てていない。苦しいチーム事情の中で、自分たちのやりたい理想のサッカーの可能性も残していた。

そのプレスをいなして、低い位置からボールをつなごうとする為に三田と井上の2人で中盤を組ませたのだろう。私は3バックでも4バックでもこのコンビは結果も内容もよくないのに、なぜこの起用なのか。見立てを知りたい。三田のミスが目立つ。低い位置で食いつかせようとしたところでミスをするのだから、相手に勢いが出てしまうだけだった。
誰かも言っているのだが、三田は味方のミスに対して感情を出してしまいがち。自分なりのルートが頭にあるから、それが叶わなかった時のイラつきは理解できるが、自身のミスも多くそれを三田がいうのかといったケースも多い。理想のルートのままゴールを得ることはごくわずかで、多くは紆余曲折ありながらもゴールに向かって選手が色んな工夫をしながら相手ゴールを目指すのがサッカーだ。相手はゴールさせまいと迫ってくるのだから、そのせめぎあいこそサッカーの楽しみの一つ。
確かに何本かパスはいいものがあったが、相手のバックラインを狙い続けるのであれば、それを味方と共有し修正しながらプレーするべきであって、腕を上げて不快感を示すものではない。しかもベテランである。

それでも前半最初のころは横浜にも流れがあった。カプリーニにキレがあり、右サイドに入った林がよくサポートしていた。今シーズンリーグ戦初出場となった武田の左サイドもオフサイドにはなったが何本も飛び出しが見られた。左右のウィングバックの前にスペースがあり、戦えていた。

サッカー選手も人である。人と人の間、つまり関係は内容以上にしっくり来ていないのかもしれない。

みすみす

前半途中から鳥栖に押し込まれ始める。鳥栖のGK朴を経由した攻撃が明確になると当時に、横浜は積極的に朴にもプレッシャーをかけていく。朴はGKでもボールをつなげる選手で、時にはセンターバックのようなポジションでプレーをし、横浜は前線の3枚がプレッシャーにいくもボールを奪いきるのは難しい。
それでもチーム全体で押し上げが出来たときは、ボールを奪えたシーンもあったのだが、その先の攻撃に転じた時にミスを繰り返してチャンスをフイにしてしまった。

前半優劣に差はなかったと思う。バイタルエリアまで侵入されて危険なシーンを許した半面、高い位置からのプレスでボールを奪うもミスでシュートまでつなげられない横浜。正直、本当の決定機と呼べるようなシーンは両チームとも少なかった、あるいはほぼなかったと言ってもよい。

攻撃になった時にもう少し落ち着きがあれば、横浜はかなり優位にゲームを進められたと思うし、その落ち着きを許さない鳥栖のプレッシャーで横浜はミスを繰り返してしまった。落ち着かせる為に起用した三田もミスを繰り返しては中々プラン通りにはいかない。みすみすとチャンスを明け渡していた印象が強い。

人と人の間

失点は後半10分。鳥栖が流れから何度もクロスを入れ、それを横浜が跳ね返すがクリアは大きく出来ずマイボールにできない。縦パスも防ぐが、ここでもボールを積極的に回収せず、低い位置で構えたことが仇になった。こぼれ球に誰もプレスにいかないままでフリーでクロスをあげさせ、落下点に先に入った鳥栖・長沼に頭で決められてしまう。守備に人数が揃っていても良いボールがセンターバックとサイドバックの間に入ると、センターバックは頭を越されてしまい、サイドバックは前に入られて体をぶつけるとファウルになりかねず何もできないまま合わせられて失点の典型的なパターン。
低い位置で構えるだけでは攻撃を受け続けてしまった。その直前からヘディングでクリアしたり、大きく蹴りだして陣地を回復したり、ヒアンを走らせるようなこともなく何となくでクリアをし続けてしまったのも失点の遠因だろう。1-0となって三田と坂本を下げてユーリララと山下を投入。横浜はよりカウンター依存を強めるが、鳥栖はそれまでと変わって前線からのプレスを控えたことでスペースがなくなり、カウンターはし辛くなった。

にしても、ゴールを与えてから人を替えるような消極的な見え方に映ってしまう。

さらに長谷川と小川慶を入れてサイドの運動量を確保しつつ、中盤でボールを保持できる長谷川を入れることで中央でタメを作り出す狙いか。長谷川はまだ限定的なプレー時間なのだとしたらケガは相当深刻なのかもしれない。

狙い通りにいかなかったのは小川慶の投入だろう。横浜のゴールキックでゲームは再開したが、そのこぼれ球が自陣に戻ろうとした小川慶にあたり鳥栖ボールに。鳥栖・堀米がペナルティエリアに持ち込むと、追い越してきた鳥栖・河田に。河田がクロスを流し込んだ先にいたのはまたしても長沼。ゴールに押し込むだけでよかった。これで0-2。今の横浜にしたら2点差は厳しい点差。

フィニッシュまでの間

その小川慶が失点につながるミスの汚名返上をしたのが後半33分、山下がプレッシャーをかけて奪ったボールを、小川慶が1タッチでヒアンに流し込むと、ダイレクトでヒアンの放ったシュートはゴールに吸い込まれた。待望のヒアンのJ1リーグ初ゴールとなった。ゴール前で何度もトラップせず、ダイレクトのパス、ダイレクトのシュートは守備陣は止めにくい。
セレブレーションもほどほどにボールを持って自陣に戻る横浜。

ここから一気に反撃のムードは整ったかに見えたが、流れを得たのは鳥栖。横浜はこれに味を占めたのか、単純にサイドのスペースに放り込むだけで、鳥栖としては守りやすくなってしまった。
そして、最後まで5バックで低いラインのまま相手の攻撃を受けてしまい、最後は鳥栖がコーナーフラッグ付近での時間稼ぎに終始し、時間だけが無為に流れていく。1-2のままスコアは動かず横浜は2連敗を喫した。

前半からいったりきたりの展開になる中で相手ゴールにまで迫ることができず、ミスから2失点。1点取り返したところに今までの横浜とは違って最後までやり抜く姿勢は見えたものの、総じて狙いが不発のまま時間は過ぎていった。
コンディション不良で何人もスタメンクラスが不在の中でよく戦ったともいえるし、層が薄いのが相変わらずともいえる。最初からカウンターサッカーでいくのは苦しくなると考え、前半はある程度落ちつけながら試合を進めていく意図のような気もしたがミスばかりでは指揮官も頭が痛いだろう。
ヒアンもゴールを決めたが、それ以外ではほとんど消えていたし、彼が抜け出すようなプレーも少ない。高さで勝っている部分はあったが、周りがそれを感じておらず連携が少なく孤立状態に。シンプルにワンツーで裏に流しこむような工夫もなく、長いボールでは彼も機能しない。

時の間

1-2での敗戦。点差だけを見たら、追い上げての敗戦は健闘したともいえるのだが、失点してからの交代劇、交代で出た選手が直後のプレーで失点に絡む、2点目を決められてから目覚めたように1ゴール、そして追いかけようとして空回りして自陣にくぎ付けにされる全体的な間の悪さを感じた試合になってしまった。
逆に言えば勝つ試合はこうしたことが、結果的に良い方向に流れていく。

完敗すると悲しい気持ちを、勝利すればうれしい気持ちを簡単に表現できるのだが、チグハグとまではいかず、現状で出来ること、出来そうで出来ないこと、小さな相手との差を描くのは色々思案してしまう。

そして敗戦で需要が下がっていく中、さらに遅れていくうちに、本人も書く気持ちが落ちていく。そして時間だけが流れていく。間が悪いのである。

次節でこれを立て直せるのか。横浜も自分も。


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