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2024年J2第12節ブラウブリッツ秋田-横浜FC「温さと温かさは紙一重」

後半40分まで横浜は選手交代は行われなかった。山根の後半30分のゴールを見て、時間の消費を計算しつつ3枚替えを行った。そして残りの2枠も記録上90分を過ぎてから。三田に至っては90分+6分と、試合終了が97分頃とすると1分もフィールドにいたかどうか。選手の入れ替えをせずとも、横浜は試合の大部分を支配して、0-2というスコア以上の完勝となった。

試合は、秋田に攻め込まれる部分はありつつもセカンドボールを回収してサイドを広く使った横浜がボールを握って優位に試合を進めていた。ビルドアップでやや限定されるケースはあったが、概ね井上が相手を剥がして前進できていた。山根はこの日はボールタッチが好調で、右サイドから良いクロスを何本も入れていた。良くない時の力いっぱい蹴りこむやり方ではなく、ややコントロールしたボールは効果的で前半17分の高橋のフリーのヘディングを生み出していた。
左サイドの村田も攻撃的な姿勢を崩さなかったし、ここに井上がヘルプに来ることがあり、単騎の仕掛けを奪われてカウンターに持ち込まれることもなかった。2年前に秋田の粘り強さや戦い方の徹底ぶりに屈した記憶が残るままこの八橋に来たがその思いは前半だけで払しょくされた。

今度こそとわだ

後半31分に横浜は自分たちの理想の崩しも披露できた。岩武の縦パスを受けた伊藤が落とすとユーリが裏に走り出す山根にスルーパス。山根のグランダーで入れたクロスは弾かれたが、それを自身で拾いなおして今度は自身でゴールを射抜いた。今シーズン初ゴールで移籍後初ゴール。
1点目は、秋田の選手に当たって入ったもので、本人も頭で入れた事をアピールしたり、リプレイを確認して苦笑いしていたが、これはどう見ても本人が振り切ったシュートで決めたもの。攻撃の選手にとってゴールは格別だったし、攻撃の意図が見えたのも横浜にとってよかった。

左右したもの

この試合の結果を分けたのは、秋田の練度と強度を感じなかった部分だろう。2年前と比較すると熱さや徹底、規律が非常に強固で、選手が変わってもじれずにしつこく同じ戦い方を貫く部分があったが、今年はそうは感じなかった。特に強度。お互いルヴァンカップから中3日で疲労感もあるだろうが、しつこさを感じなかった。横浜がボールを奪えば取り返しにくるし接点の強さを感じたが、立ちはだかる強い意志を感じなかった。実際オウンゴールになったとは言え、横浜でも身長が低い部類の山根のヘディングがゴールに結びついている。

一方横浜は、秋田のセカンドボールをしっかりと拾って自分たちの攻撃につなげる事が出来たのが自分たちの形を展開できた理由だろう。ロングボールを回収できたので相手の二次攻撃を許さず自分たちでボールを握る事が出来た。ボニフェイスが欠場したディフェンスラインも岩武が機能して相手の攻撃をシャットアウトした。
サイドを広く使うのは横浜の形。精彩を欠いた秋田相手に何かを変えたというよりも、自分たちのやり方がこの位の強度の相手には通じたと受け取った方がよいだろう。

一服の涼

この日は全国的に気温が高くなっていたが、秋田は強い風が吹いていた。それが心地よかった。この試合も、横浜にとっては久しぶりの快勝となった。出場メンバーが疲れていない旨を口にできる程の内容だった。
この2週間で5試合をこなすハードスケジュールではあったが、ほぼ時間消費の為に選手交代が出来るのは、メンバーとしてもかなり助かった部分があるだろう。ルヴァンカップ2回戦で激闘を制し、そしてリーグ戦では長崎に屈したが、難敵秋田を退けた。

秋田で吹いていた風はとにかく気持ちよかった。これからさらに暑くなっていくであろう季節とリーグ戦を前にして、一服の涼とでもいうべき、内容を得られたのは大きい。ただし、これで温くなってはいけない。4位である。なんとなく上位にいる事で緩んでしまうといつ転げ落ちていくかわからない。もっともこれだけ内容を伴った結果では、書くことすらないと言える。

温かくなってきた。これからもっと進化を期待する。

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