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Cioran-ish aphorisms Ⅰ

0.私はまだ若い。私はまだ、絶望に対して正面からぶつかっていこうとも、正面切っては難題を避けながら、腰を落ち着けて、それでもなんとかやっていこうとも、見事に枯れきって、自殺する気も湧かないような厭世の極みに至ろうとも思わない。今はまだ、絶望を吟味する時期だ。変化の多い時期だ。私は極力背伸びをしない。分相応に、絶望のその先を選んでいきたいと思う。

1.哀愁ほどいかなる空間にも合致する性質はない。タイムズスクエアを、ベルサイユを、アヘン窟を、枯山水を背景にしても、哀愁だけは調和しうる。

2.詩人になった夜は、恐ろしいまでの自己嫌悪を伴う朝によって、毎度無惨に引き裂かれている。

3.メランコリーとは、襲いかかる波でもあるが、対外的な態度でもある。まさしく嫉妬とは、自然に生まれることもあるし、作ろうと思って作れるものでもあるからだ。気質的な鬱とはまた違う、創作じみた感情の用意は、私の心の支えとなる時がある。

4.自分の自殺を眺める。あまりの魅力に縄を持って飛び出す。他人の自殺を眺める。あまりに下らなさに縄を捨てて鬱ぎ込む。

5.仏陀の企みは、私の目から見ても蠱惑的に写る。しかし、何かを履き違えた弟子たちの妄言は、ひどく虚栄を張っているが故に、とても醜い。それを有り難がる衆愚たちのせいで、全てが台無しになる。

6.光を避ける魂は、野蛮に囚われており、暗闇を避ける魂は、文明に囚われている。

7.赤子の醜さ。それはシステムによって組まれた、仮象の咆哮。そこに重みはない。尊重はない。ただ圧力だけが私を圧し潰す。

8.厭な物を見たときは、目を抉り出す想像とすると気が和らぐ。それでも治らないときは、ライターの火を見つめる。見つめて見つめ抜く。眼球の表面を這いずる力の総体によって、我が醜い虹彩を救済せん。

9.私は常に待っている。「今までの人生は全て夢で、ここから本当の人生の始まりだ。さあ産まれるか、拒否するか」と天使に囁かれる瞬間を。今か今かと待っている。勿論答えは決まっているが。

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