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E162:思てたんとちゃう息子

【連続投稿80日目】

今年も、父の日が終わった。

当日、爽やかに「父の日だね!」なんて言えるほど、
私は立派な息子ではない。

毎年、短く体調を気遣うLINEを送る以外、
これといった事はしていない。

向こうからも、
「ありがとう。元気やで」と短い返答。

たまに電話をしても、2分で終わる。
それでも、今、親子関係はとても良好だ。 
そこが、若い人たちの親子関係とは違うかもしれない。

父と息子。

2人の関係を思う時、
なぜか笑い飯の「名言」を思い出す私…。

…………………………………


2008年、
その年のM1で上位争いをしていた笑い飯が、
最終決戦に残れず、
司会の今田さんに話をふられた笑い飯の西田さん。
退場時に、思わずこう叫んだ。

「思てたんと、ちゃう!」


結果、会場は大爆笑。
笑い飯は、結果は残せなかったけど、
みんなの記憶には残った。 

ちなみに、笑い飯が王者になるのはこの2年後だ。


…………………………………


この「名言」に、当時テレビを見ていた私も、
大笑いしていた。

でも……

やがて…

私と父との関係を思う時、
そのフレーズが、頭から離れなくなっていった。

幼き日、若き日の自分を思い出して、
少し苦笑い。


父こそ、私に、


「息子よ、思てたんとちゃう!」

と、叫びたかったのではあるまいか…。


一緒にキャッチボールがしたかったのに、
まるで興味のない息子。

得意の数学を教えたかったのに、
国語にしか興味のない息子。

コップ1杯のビールを乾杯したかったのに、
1滴も飲めない息子。

せっかく作った工場を継ぐこともなく、
自分がやりたい仕事にしか就かなかった息子。

ここには書き切れない
「思てたんとちゃう!」ことだらけの息子だった。



あの頃
がむしゃらに働いた父。

自信があったから、良かれと思って、
息子にいろいろアドバイスをする。

ところが、
人の言うことを素直に聞くタイプでない私。


まさに、あれこれ言ってくる父に反発した。
(なんでいつもそんなにエラそうなの?)
あの頃は、煩わしくて仕方がなかった。
話し合いは、いつしか怒鳴り合いになった。
10代から20代にかけて、そりが合わなかった。


父は
人一倍情に厚く、
人一倍息子のことを心配しているのに…。

私は
心の奥底では、父を尊敬しているのに…。


お互い、感情表現が不器用ゆえ、
せっかくの思いが噛み合わない……。



そんな私もやがて成人する。


私が成人したあの頃、
まだ古い価値観が残っていた。
父の仕事を継がなかったことに関して、
周りからはいろいろ言われた…。

ところが不思議なことに
「父だけは」
そのことについて、私に一言も言わなかった。


父は内心、どう思っていたのだろう……。


いや、俺は俺だ……。


そう思いつつも、
さすがに、なんだか申し訳なくなって、
20代のある日、そっと聞いてみた。


「俺、仕事、継がなかったけど……?」


すると、父はこう【即答】した。

「俺の仕事を継ぐだけが親孝行やない。俺がやってみたかった仕事を、いま、息子がやってくれているのも、同じくらい親孝行や」


この言葉をもらってから、まもなく30年。
私は今も、この言葉に支えられている。


…………………………………


昨日、父の日当日には、 
あえて、関係ない軽~いつぶやきをして、

次の日、午前0時に、こんな記事を上げる。

やっぱり当日はなんだか恥ずかしい。
これが、私の照れ隠し。
我ながら、面倒くさい男だと思う。

今も昔も、素直ではないから、
ここで言う。

父ちゃん、長生きしてくれよ。

父の日に乾杯!

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