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E77: 珠玉の相槌

「stand.fmに出ていただけませんか?」
うりもさんから丁寧なレターをいただいたのは
まだ暑い8月上旬のことだった。

レターをもらって、声をかけてくれたのは
嬉しかったが、
そもそも「私、需要ありますか?」

20代くらいまでは表に出て、目立たないと
「何かに埋没する」と思っていたので、
かなり無理をして過ごしていたが、
無理をしているのは、自分がよくわかっていた。

「静かにしていても個性は死なない」
とわかってからは、できるだけ目立たぬように
生きてきた(つもり)である……

なのに……
出るの? 俺が?

折しも体調が悪く、声がほとんど
出ない状態だったので、その時は
丁重にお断りさせていただいた。

「じゃあ、またの機会に」なんて言われていたら、
そのまま立ち消えになっていただろう。
でも、彼は違った。

「調子がいいかな、と思えるときに教えて
 いただければ、いつでもOKです。
 焦らず、ゆっくりいきましょう」

♩わたし、待~つわ 
 いつまでも 待~つわ

あみんが脳内で流れた。困ったな。


……30年程前、似合わない職種に四苦八苦
しながら就活する私を見かねて、
同期の女の子が私に言った。
「源ちゃん、あんた無理してるわよ。
 源ちゃんは歳とってから、誰かに見つけてもらうのよ」
(なんだ、その妙な慰め方は!) 私は苦笑した。

そんなやりとりを、ふと思い出した今年の夏。

この世は経験の星である。
流れは向こうから用意されて来る。
スターじゃあるまいし、
人を待たせてはいけない。
意を決した。

10月21日
彼が両手を広げて待つ船に、私は乗り込んだ。
ガッチガチに緊張しながら……。

うりも氏、本人は全くもって気づいていないが

彼は天才である。


本人が気づいていないのが、残念である。
彼の、穏やかな相槌に乗っかっているだけで
一本の番組ができてしまうのだから……

「ふつうのおじさんの話」が
彼の相槌に乗ると「ラジオ番組」になる。
私の力ではない。
紛れもなく、彼の力である。

それは私だけでなく
ゲストがどんな人でも同じである。

聞き手がしっかりしないと
会話は安定しない。
彼は、どんな相手であろうと
瞬時に「珠玉の相槌」を繰り出す。
話者はそこに、安心して身を預ける。


本番終了後、二人っきりで話した。
彼からお礼を言われる。
「ありがとう」はこっちの台詞なのに……

改めてお礼を言うと
「え?僕、とくに何もしてないですよ」
と返ってきた。

ん?ひょっとしたら……
この男、本当にわかっていないのかもしれない。

自分が類い希なる才能の持ち主である、
ということを……


さて、
自分のスゴさに気づいていない「聞き手」が
自分のスゴさに気づいていない「ゲスト」を
迎えて、スタエフで番組をするようです。しました。

収録日 10月31日(火)21時〜
「うりもの笑っていい恋バナ!その5」

こちらが当日のアーカイブです。

【放送後 追記】
この放送は、特に後半が深いお話です。
前半で聴くのをやめてしまいますと
あまりにもったいないです。

恋バナゲスト:ふらおさん
脱サラして料理人になった人です。


人間味あふれる「スゴい2人」
おふたりがどう、「スゴい」かは、放送を聴けば
わかると思います。笑





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