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「おいしいごはんが食べられますように」読んだら口の中気持ち悪い

めっ…ちゃ後味悪い小説です。ただ、中編で読みやすいしめちゃくちゃおもしろい…

本筋とは無関係なところで気になったのが、そもそも主人公って二谷よね?ってこと。
押尾さん視点の話は「わたしは〜」って書かれているのに、二谷視点の話は三人称で描かれるからすごく違和感ありました。
なんで「おれは」って書かないんだろう。
え、つまりこの本の主人公って押尾さんなの????
わかった人います?笑

さて、内容ですが
主要人物は全員アラサー。芦川さんが1番年上です。

・二谷
職場でそこそこ上手くやってる男性。たぶんそこそこ清潔感あってそれなりに恋愛も上手くやってきた人。
食事が好きではなく、もし必要な栄養素が取れるサプリがあればそれで充分だ、と考える。
みんなで食べた方が美味しいとか食事は感謝して食べるべきだみたいな考え方を窮屈に感じている。

・押尾
仕事ができて努力家な女性。
めんどくさいところやきつい言い方をすることもあるが、常に正しい言動をとる。本当は偏頭痛持ちだが薬を飲んで残業するがんばり屋さん。
食事や美味しいものが好き。
二谷に惹かれており、たまに二人で飲みに行く。
(多分現実にいたら結構仲良くなりたいタイプだな…尊敬する…)

・芦川さん
可愛らしくて弱々しい感じの女性。家庭的なタイプで、二谷の彼女。
ただ無理はしないので、前述の二人と同じく正社員だが残業しない。
(いい人だとは思うので現実にいたら嫌いではないですが、距離を置きますね〜。嫌わない、悪口も言わないです、ただかかわりたくないww芦川さん、体調不良で早く退勤したら、昨日すみませんでしたって翌日手作りのお菓子を持ってくるんですね。そしてそれがしょっちゅう。…これは腹立つ!!wwwwお菓子はいいから仕事してくれwww月1とかならうれしいかもだけど)

上記の人物紹介だけでも芦川さんってちょっと…アレじゃないですか…
ね???
かわいくていい人ででもがんばるところちょっとズレてて、弱くても仕事しなくてもできなくても許されてて、でも絶対自覚はあるんですよ。私は許されてるって。で、意識してか無意識かはわかりませんが、手作りのお菓子と「いつもすみません~」って言葉でその罪悪感を少しでも軽減しようとする狡さを持ち合わせてる。
ね、ちょっとアレでしょ。
嫌われてもいじめられてもないけど、まあ、だれかが「芦川さんてさあ、ちょっと…アレだよね…」って言おうもんならきっと堰を切ったようにみんなの不満があふれだすんでしょうね。
こういう人いるよな~~~。うまいな~~~。

あと絶対芦川さんってトークにオチないよね。おもんなそう(ド偏見)。

※この時点で「え???なにが??いい人じゃん。がんばってるし。ダメなの??」って思う人とか、「なに?w結局嫉妬?ww」とか思う人は、この本の面白さを分かってない…はず。

で、どうなるかって、そんな若干絡みづらい芦川さんに対する不満を押尾さんは口にするんですよ、二谷さんに。
頭痛いからって帰った芦川さんのことを「薬飲めよって思いません?」とかw 最高w
で、「芦川さんに意地悪しませんか?」って持ちかける。
二谷はうなずきはしない。それもそのはず、彼は芦川さんの彼氏なんですよね(まあ押尾さんはそれ知ってるんですが…二谷はバレてないと思ってる)。

芦川さんの”そういう”ところ――よわくてずるいところ。セクハラされてもNOと言わないところ。そして、食事に対する考えが全然自分と違うところ(たとえば「お味噌汁飲むとホッとしませんか?」だの「カップ麵ばかりじゃなくて栄養あるもの食べてくださいね」だの言ってくるところ、「おいしいです」ってわざわざ厨房に言いに行くところ)。それを全部不快に思ってるのに、二谷は芦川さんと付き合う。
理由は至極単純――タイプだし、かわいいから。

え????って思う人もいると思う。でも、求めてないんだろうな、そういうことを。自分と対等に渡り合えるほどのしっかりした考え方をしててほしいとか、責任感持っててほしいとか、二谷は別にそういうことを恋人に求めてないから、全然芦川さんで満足してる。
たまにいらっとくることがあってもかわいいから許せるし。
(個人的にはそんな恋愛でいいのかよ、と思うけど別に恋人に本音を出さなきゃいけないとか尊敬できる人と付き合わなきゃいけないなんていうルールは全然ないので二谷みたいな人はいっぱいいるはず)

押尾さんはちょっと、二谷のことが好きなんだよね(明確に恋と明言されてるわけじゃないけど気に入ってる・惹かれてる)。
きっとこのふたりは考え方が合うだろうけど(あともっと言えば人間的には押尾さんのほうができた人だと思うけど)、二谷がそれを求めてないからしょうがない。押尾さん残念、としか言いようがない。

で、社内が繁忙期に入り、みんなの残業が常態化してきて、でも芦川さんはパートさんたちと一緒に早く帰ることを許されて、定期的に「いつもすみません」ってお菓子作ってくるようになってきて、そのお菓子を二谷は残業の時にこっそり食べずに捨てるようになる。しかも、こぶしでつぶしたり、靴で踏みつけたりしてぐちゅぐちゅにしてから捨てる。毎回。

急展開wwww

ここ読んでてあんまりついていけなかった。理解できなくて。
ただ二谷、本当に限界だったんだろうな、病んでるなってことはわかりました。
だってコイツw、栄養バランス考えられた芦川さんの手料理食べた後、眠る芦川さんの隣でこっそりカップ麵食べてんですよ?やばいでしょ。
(そんでブクブク太ってるのはちょっと面白かったけど)
もともとそういう、芦川さんの彼氏でありながら一番芦川さんに対して失礼なことを陰でしてる彼氏だったのよね。

そんなにイヤイヤ食べてるなら、芦川さんと考え方合わないなら、無理して付き合わずに別れるか、ちゃんと本音伝えたほうがいいでしょ。それをしないで取り繕ってるから、取り繕いきれずに変なはじけ方してるじゃん。

で、しわ寄せ行ったのがそれを知った押尾さん。

押尾さんは芦川さんにお菓子をもらったらいつもお礼を言ってその場で食べてました。でも、捨てられた手作りお菓子をゴミ箱から拾い上げて、芦川さんの机に置く…っていう意地悪をしてた。
そしてそれがバレて、ベテラン社員と発言力のあるパートさんがみんなの前で騒ぐもんだから、捨ててたのも押尾さんじゃないかって社内で疑われて、、、弁解したけど、もう、社内には涙目の弱き芦川さんを守る圧力が働いてて、押尾さんは退職に追い込まれてしまうっていう…。
押尾さんは芦川さんに意地悪したかもしれないけど、お菓子捨ててるのはまさかの芦川さんの彼氏・二谷なのに。でもその真実を知るのは二谷と押尾さんと読者のみ。

面白かったのは、押尾さんが拾い上げたお菓子はぐちゃっとしてなかったこと。二谷とは捨て方が違う。

二谷のほかにも、もらったお菓子をこっそり捨ててる人が確かにいた。ひそかに、でも着実に、芦川さんは社内のヘイトを溜めてるんですよね。

それなのに最後追い出されたのは押尾さん。

物語終盤。二谷は異動になるけど、みんなに門出を祝われて、輪の中心で彼女である芦川さんの手作りケーキを食べて終わるっていう。

めっちゃくちゃ後味悪い~~~~~。
な~~~にが「おいしいごはんが食べられますように」だよタイトル詐欺だろ~~~。誰かの健康と幸せを願う純粋な気持ちに満ちたかわいい小説かと思ったら全然違うやんwww

ラストシーン良かったな~~~。
輪の中心でかわいい彼女と一緒にケーキ食べてる二谷、はたから見たら順風満帆そのものだけど、本心ではおいしいと思えない手作りケーキで口の中をいっぱいにしてるの、まじ痛々しい。まじかわいそう。

私はおいしいご飯もお菓子も大好きだけど、二谷目線だとケーキのクリームやフルーツが、ぐちゃっ、ぶちゅっ、て感じで描写されてて、全然おいしそうじゃないのww
食が嫌いな人は食べ物がこういう風に見えてるのかな?って新鮮だった。

あ!あと、二谷のほかにだれが芦川さんのお菓子捨ててたのか問題。これ考察してる人ネットでちょいちょい見たけど、犯人が誰なのかは重要ではない気がするなあ、私は。たぶん、想像にお任せします案件だと思う。

表向きは悲劇のヒロインだった芦川さんが実は嫌われてる。その誰かはお菓子食べずに捨てるくらい本当は彼女のことを疎ましく思ってるのに、押尾さんが追い込まれてる時も黙ってたんだもんね。なんなら捨てるっていう行動に出てないだけで、芦川さんを本心では嫌ってる人が本当は大多数だったんじゃないかな。たまたま、芦川さんを守る人の声がでかかったから、押尾さんが負けて芦川さんが勝っただけで。
いや、たまたまではないんだろうな、芦川さんが弱い人だったからこそ、それを守る人がどんどん勢いを増したんだろうな。

あと。芦川さんと二谷、別れそうだな、結局。
もともと無理のある付き合いだってのもあるけど、、、恋愛市場においてめちゃくちゃ“売れ線”であろう芦川さんが30過ぎても恋人いなくて結婚してなくて、実家ぐらしで家族の中では軽んじられてる・・・ってところにその根拠がある気がする。
これ読んだ人はどう思ったんだろう。この二人ゴールインすると思います?
結局芦川さんが悲劇のヒロインムーブのスタンドプレイで押し切って、結婚までこぎつけるのかな?二谷危うし。

あと(まだしゃべるのかよwって感じだけどw)、二谷が芦川さん選んだ大きな理由が顔で、読んでるとついつい「えーもう押尾さんのほうがお似合いだよ押尾さんと付き合っちゃえよ」って応援したくなるんだけど、押尾さんが二谷のことを気に入ってる理由もまた、どうせ顔なんだよなww
リアルww
こんなもんなんだよね、本当。


P.S.
あーあとは本当に、なんで二谷視点の話が一人称で書かれてないのかマジで気になる。
あと、タイトルの意味。誰目線なんだ。

そして。芦川さんのこと割とぼろくそ言ったけど、、、
私も、おいしいごはんって素晴らしい、心のこもった手作りは尊い、みんなで食べるとおいしい…なんていう価値観を誰かに押し付けてないかなとちょっとギクッとした。
その価値観を持ってるんです~、幸せな家庭で愛されて育ったからおいしいご飯を知ってるんです~って、ひけらかしてないかなと。
自省の念に駆られて、実はひそかにダメージ受けた。

…面白かった。もっかい読もうっと。

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