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夏休みの朝の、小さな戦い

夏休み中盤。給食の代わりに子どもたち3人のお昼ご飯をつくるというミッションもあと半分だ。残りの夏休み、どう有意義に過ごしてもらうかを目覚めてすぐに考えつつ、とにかく気持ちよい朝を迎えてほしいと、娘たちの朝食の準備に取りかかった。

「わーい、今日はフレンチトーストだ~」とキャッキャしながらご機嫌な子どもたちの声を妄想しながら、フライパンで朝食のフレンチトーストを作っていた。

朝、家の中は和やかに始まるはずだった。しかし、母が朝食をつくっている間にバトルははじまった。

怒りに満ちた次女(小3)と挑発的な三女(小1)の姿。三女がまるでプロの悪役レスラーのように、わざと次女にケンカを売るセリフを放った。
「お姉ちゃん、それはあなたの意見ですよね?まさかビビってるわけないよねぇ~?」次女は最初、必死に忍耐の構えを見せていたが、三女の挑発パワーについに耐え切れず、ついに反撃に転じた。

次女が三女にパンチをして、三女も次女にパンチをする。そして家中追いかけ回した。

理想と離れた光景に「うっ…」と母は心の声でつぶやく。

この後、昼食づくりと身支度をして仕事にも出かけねばならない。「これは、戦の予感…!」と思いながらも、すぐにはかける言葉がみつからず、まずは様子みつめるしかなかった。普段から「優しい言葉を使おう」キャンペーンを展開中の母としては、この早朝バトルを放置するのは避けたいところ。でも、ひとこと言葉を投げかけたところで、何の解決にもならないであろうことは容易に想像できた。

今は時間もないし、「よくあることだし…」と自分に言い聞かせつつも、理想と離れている現実に対してじわじわとイライラが積もってくるのを感じながら、完成したフレンチトーストをテーブルに並べた。

「ほらほら、まずは食べて~」と明るく元気に声を掛けて、場の空気を変えようとしてみる。多少和らいだが、三女の挑発的な態度はうすうす感じる。

急いで昼食作りに取りかかりながら、「もしこのまま放置したら・・・」と母の妄想がはじまった。

次女は普段からみんなに対して優しいのだが、その分怒ったときの反動がどうなるかが未知だ。もしわたしがいない間に次女が感情的になってキッチンの包丁を振り回し、それでも挑発し事態がエスカレートして…?と映画のワンシーンのような最悪のシナリオが頭の中で展開される。

「これ放っておいたらだめだ!」
未然に防ぐ、未病ケアだ大事だと仕事でも話しているんだから、これは何とかせねば。

そして、母は一念発起。まずは時計を確認し、使える時間を確認。最悪なシナリオで終わらせずに、30分でなんとか尽力を尽くす。

まず、次女にちょっときて~と個室に呼び出す。次女は「あ、きっとケンカのことね」と分かっている様子だった。

母「次女ちゃんが普段から優しいのよく知ってるよ。今日は三女に煽られてイラっとしたよね。でもさ、もし、その怒りが暴走して、追いかけ回して何気なく三女ちゃんを押しちゃったとき、三女ちゃんが転んで、そこにたまたまあった固いものに頭をぶつけて大ケガ…なんてことになったらどうする?」
次女「悲しい、怖い」
母「そうだよね。次女ちゃんが怖くて悲しい思いをするのが、お母さんも嫌だ。普段はやさしいのにたまたまって、余計に悲しいよ。悲しい事故をなくすためにどうしたらいいか一緒に考えない?」

二人でアイディアを出し合い、イライラしたらとにかくまずは相手と距離を置く、攻撃せずに三女と離れることを優先してみようと決定した。我慢した気持ちや悔しい気持ちは、あとから母が聴くからと。次女は少しホッとしたした様子だったので、母は部屋をあとにし、三女のいるとろに向かった。

三女に声をかける。
母「どうして恐い言葉を使うの?負けたくない?」

この言葉をかけた背景には、三姉妹の一番下のポジションで生まれ、かなり可愛がられている事実は本人自覚はなく、身長などの体型やスポーツやゲームやけん玉などの遊びでもお姉ちゃんたちに普段から勝てない悔しさをもっていることにある。

三女「そう、強くなりたい!!!」
しっかり母の目をみて、力強く答えた。

母「態度が大きかったり、強い言葉を使って相手をあおったり罵ったりすることは、本当に強い人がやることなのかな。どんな強い人になりたいの?アニメやドラマで理想としている人いる?」
三女「不適切にもほどがあるの、じゅんこ。まぁ…じゅんこが口悪いのは最初だけだけど…」

可愛らし回答に微笑みそうなのを抑えて、母は真面目に返答しつづける。

母「強い言葉や暴力で人をいいなりにするのはそれは強いとは思わないな。お母さんやお姉ちゃんたちがそんな風にしたら、嬉しい?」
三女「いやだ」
母「そうだよね。お母さんは心が強いひとが、本物の強いひとだと思う。強がりじゃなくて、人間弱いときもあるよねーって」
三女「心が強いってなに?そんな人いるの?どうやってなるの?」
母「まずは笑顔だ。それから優しい言葉を使う。そんな人が最強。家の中に笑顔のひとがいたら嬉しいでしょ。その逆だったら嫌でしょ。」

三女は話したことすべて納得できなかったかもしれないけれど、概ね納得したようにうなずいた。小難しい話をしてしまったなと思いつつ、三女がどんな風に受け取ったのかを確認するために、最後にこれからどうするのかを聞いてみた。

「本当の強い、優しいを目指す」
言わせた感満載の回答をしてきたが、きっと大切なことは少し伝わったと信じたい。そして、まだ小学1年生の三女の成長をゆっくり温かく見守っていきたい。

最後、次女を呼んで、次女と三女が手を取り合い、姉妹のバトルを収めることに成功。本日のお小遣いを渡すと、おやつをなににするか、キャッキャと早速話し合っている。子どもって、引きずらなくて、素直でいいな。母もいくつになっても素直さを忘れずに生きたい。あと、本当の強さを持てるようにがんばるね。と思いながら、急いで身支度をして仕事に出かけた。

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