子どもの頃に感じた百人一首の思い出を歌人佐々木幸綱はそんな風に語っている。落語の「千早振る」に思わず共感してしまうのは誰もが同じような気持ちになったからだろう。
もちろん、百人一首に歌われた内容の背景や意味をもう少しきちんとわかりたいと思う。アニメや映画にもなった「ちはやふる」の登場人物の一人、大江奏のいう通りだ。それに、その方がたぶん人生は豊かになる。私にとって詩人吉原幸子の百人一首の現代語訳はその入り口を開いてくれる。
たとえば「ちはやぶる」。歌の詞書「二条の后の春宮の御息所と申しける時に、御屏風に竜田川に紅葉流れたるかたを描けりけるを題にて詠める」を受け、まるで幻想冒険小説の一場面だ。
好きな歌は年齢とともに変わる。寂しいという感情や人以外の者を友としたいという思いも募る。
ブナの林でも同じような気持ちになる。