見出し画像

ガラスの街

ポール・オースターの『ガラスの街』の読書会に出席した。

ガラスの街とは何を意味するのか? 《バベルの塔》とは何の象徴なのか? 究極の言語とは?《ドンキホーテ》は誰なのか?H.Dのイニシャルの謎は?

バーンスタインの『答えのない質問』で、バーンスタインは「それこそが20世紀を象徴するキーワードだ」というようなことから話を始めている。それが正しいのか、そうでもないのかも当然、答えはない。

正直にいえば「おいおい、どこに行くんだよ?」というタイプの小説は好きじゃない。だから『競売ナンバー49の叫び』も『高丘親王航海記』も「なんだかなぁ~」と、垂れ流しを読まされているような苦しさを感じながら読んだ。私の狭量な視点での意見に過ぎないが、「実は著者が頭が悪くて、単にとっちらかっちゃっただけなんじゃないか」とも思えてしまう。それが私の正直な感想だった。

ところが、一方で『ガラスの街』は面白いのだ。話はどこに進んでいくかわからない。書かれていることのどこが本当でどこからが本当でないのかもわからない。可能世界の世界線の分岐を追っているような気持ちになり、でもそれが面白いと思えてしまう。

この差はなんなのか。私の中で決着がつかない。分かるようでわからない宙ぶらりんな気持ち。『ゲルハルト・リヒター展』に行ったときに感じた不思議な気持ちだ。

それがたぶん、私の中の今の『答えのない質問』なのかもしれない。

訪問していただきありがとうございます。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。