マガジンのカバー画像

Collective Dialogues

70
創造的で豊かな対話を実践するための工夫やヒント
運営しているクリエイター

#雑記

Inspiration Seeds vol. 006:対話の場の仕組みと仕掛け

オンラインでの打合せも増え、対話について意識することが増えたような気がします。では、よい対話の場で行われていることは何なのでしょうか? なにかよい秘訣はあるのでしょうか。よくわかりません。そこで、普段から対話やコミュニケーションの場について考えている高柳さんと『よい対話を生み出すには』について聴いてみたい思います。

話すとはどういうことなのだろう

1月1日に地震があった。1月17日で阪神・淡路から29年がたった。なんだかつい最近のように思い出される。 そのことを仙台の人に話したら、「阪神・淡路のときは学生で、自分はまだそのとき神戸には行ったこともなかったから、あんまりわからなかったんだよね。東北の地震が起きて初めてわかったよ」と言っていた。確かにそんなものかもしれない。 阪神・淡路のとき、私は垂水区霞ヶ丘というところのマンションに住んでいて、窓からは明石海峡と淡路島が見えた。つまり、震源が見える場所に住んでいた。

丹野智文さんへのインタビュー

熊本県下の高校31校をネットでつないだ下記のワークショップの後半は、39歳で若年性認知症と診断された丹野智文さんへのインタビューを高校生のみなさんにも聞いていただき、そこで感じたことをお互いに対話してもらった。 後半のインタビューを含む全体の流れは下記の通り。 丹野さんと出会ったのはいつだったろう。 たぶん、しっかりとお話をしたり関わるようになったのは、下記のRUN伴のプロモーション用のWeb/映像を制作したときだろう。このときは7つの地域の認知症当事者の方にインタビュ

高校生のスピード感

下記のワークショップには128人の高校生たちが参加したが、その中の熊本県立第二高等学校の3人には、あえてセッションに参加せずに《従軍記者》として撮影隊になってもらった。 13時から始まったワークショップは15時半に終了。そして16時半には撮影隊の3人からプロトタイプの概要説明の動画が届いた。素晴らしいスピード感だ。彼らが作ってくれた2つの動画。どちらも若い人らしくてとてもいい。 高校生たちにとって映像の撮影や編集は私の世代がPCで文章を書くようにごく自然なものなのかもしれ

《従軍記者》という概念

《従軍記者》といっても戦争の話ではない。第三者的な記録者の位置づけをここでは《従軍記者》という言葉で呼んでいる。 世の中には、本当によい活動をしている人たちがいる。価値のある取り組み、姿勢、そして周囲の人たちに多大な影響を与えている人たちだ。そういう人たちや活動は、福祉の現場でもNPOの活動でも、さまざまな地域に点在している。 そういう人たちは本当の意味で人に寄り添い、ものすごい熱量で活動をしている。だから自分たちを記録する余裕はない。だからその場にはいなかった人たちには

川崎市:高齢者がいきいきと暮らすためのソーシャルワーク実践のコツ

川崎市役所に勤務する知り合いがSNSで「パターン・ランゲージ『高齢者がいきいきと暮らすためのソーシャルワーク実践のコツ ~ともに未来をつくる~』の冊子とカードがようやく完成しました」という報告をしていた。 川崎市:高齢者がいきいきと暮らすためのソーシャルワーク実践のコツ ~ともに未来をつくる~ (川崎市ホームページ) 高齢者がいきいきと暮らすための ソーシャルワーク実践のコツ ~ともに未来をつくる~ Ver.0.9(冊子pdf) ちらっとみた印象でしかないけれど、目次を

「参加から参画へ」 – さまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味(Ⅱ)

「参加から参画へ」というテーマで、ヨークの"Minds & Voices"の人たちの活動を中心に、認知症の当事者も交えたさまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味について考えた。 同じ英国でも、スコットランドのエジンバラでは、また別の活動が進められている。以下では、変化を少しずつ形にしながら働きかけていくことについて考えていきたいと思う。 変化を少しずつ形にしながら働きかけていく スコットランドで認知症当事者グループを立ち上げたJames McKillopさんは、エジ

対話の要件

対話が生まれる要件とはなんだろうか。ひとつには、パターン・ランゲージ「対話のことば」で記述されたような心的態度を参加者のそれぞれが意図的に実践することだろう。 ふたつめの要件は参加者の動機だろう。もちろん、その動機は参加する人ごとに異なる。明示的かもしれないし、曖昧かもしれない。必要性かもしれない、期待かもしれない。 いずれにせよ、その場にいるという事実は、参加者による関与・寄与の間接的な意思表明となる。対話という文脈でいえば、何かを話したいという気持ち、聴きたいと思って

Whare are we now?

ロードマップとロードマッピングを同じものではない。似ているが異なる。 ロードマップは関係者がある瞬間に捉えた未来の地図だ。どんなに精密に描いても時の流れとともに現実からは外れてしまう静的な地図だ。 一方、ロードマッピングはその地図を関係者で創造していく行為だ。新たな景色が見えれば修正を加えていく行為を含む。それは未来に関する対話そのものといえる。ロードマッピングは、対話を通して関係者が以下の3点について意識を共有していく行為にほかならない。 ・Where are we

対話で生まれる多様な気づき

2020年8月18日の午後、熊本県下の高等学校31校をオンラインで結ぶ、熊本県高等学校家庭クラブ連盟が主催する2020年度第57回指導者養成講座が行われました。 テーマは「対話で生まれる多様な気づき」。「旅のことば」というカードを使いながら対話のセッションをオンラインで実施しようという企画です。 熊本県には分校を含め82の高等学校がありますから、新型コロナの状況下で、熊本県下の高校全体の約40%をオンラインで接続し、対話のセッションを実施するという、とても実験的でチャレン

ひとつの優れた回答:井庭崇・長井雅史『対話のことば』

2011年から2019年にかけて、ずいぶんとワークショップを開催した。 《対話》についてもいろいろと考えたが、もし何かよい本を2冊あげよと言われたら、デヴィッド・ボーム の『ダイアローグ――対立から共生へ、議論から対話へ』と、井庭崇・長井雅史の『対話のことば オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』を挙げたい。 『対話のことば』は、慶應大学SFCの井庭さんと当時4年生だった長井さんが始めたプロジェクトから生まれた本だ。 このプロジェクトは、オープンダイアロ

偶然出会えたら

Clubhouseでもなんでも、長い自己紹介を話す人がいる。プロフィールで十分なのに。あるいは他の人とのやりとりとして少しずつ話せばよいのに。長い自己紹介ではなく、そこまでの話のどこを面白いと思い、何を付け加えたいかを短く伝えることから始めればよいのに。 Clubhouseでモデレーターになった人は、一定のタイミングで「この場はどんな人がなんの話をしているか」という背景を話すとよいのに。ラジオの野球の実況中継でアナウンサーが一定のタイミングで「いま試合はどこまで進んでいて得

人への共感に満ちた洞察: 平田オリザ 『わかりあえないことから』

コミュニケーションは難しいものだ。そう感じている人は多い。そこには、本当はわかりあえるはずだという前提がある。本書は「わかりあうこと」を重視する風潮へのアンチテーゼから出発する。そして、どんな態度でコミュニケーションと向き合えばよいかを明確に示す。 本書では、演劇の授業での著者の経験も踏まえ、コミュニケーションに関わる微妙なニュアンスや状況が的確に述べられている。コミュニケーションに関わる議論は抽象的になりがちだが、記述は具体的で深い洞察に満ちている。 コミュニケーション

対話のメディアとしての技法: 堀公俊/加藤彰 『ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法』

会議やワークショップに活用できるグラフィックスが、具体的な実例とともに多数掲載されている。 この本自体は具体的な事例を提示しながら会議やワークショップをグラフィカルに描きながらファシリテーションしていく方法について述べている。事例の数も多く、誰でも使える簡易さがあります。友人や知人で読んでいる人も少なくない。 本書ではホワイト・ボードに描いていくということは「上手い下手ではないんだ」というメッセージが語られる。その視点は「対話を促進させるきっかけけを生み出すのは、他の誰か