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山べに行かむ桜見に②~安国論寺「妙法桜」~

2023年4月1日、鎌倉の松葉ヶ谷にある安国論寺を参詣した。

ここに、「妙法桜」別名お杖桜という桜がある。日蓮上人のお杖が根付いたものだという。樹齢は250年はあろうと言われている。
 品種は"市原虎の尾"というヤマザクラ。花は純白八重で、この日は若緑の葉とともに、まあるくふくよかな花をたくさんつけていた。

日蓮上人は、建長5年(1253)4月28日、今の千葉県清澄山上で立教開祖をしたが、同年5月に時の政治の中心である鎌倉に移って庵を結び布教をした。
その庵がある岩屋がここにあり、妙法桜は庵の脇にある(写真)。

日蓮上人は、32歳から40歳の凡そ20年間にわたってここに滞在し、衆生を救うために、法華経とお題目とその宗教的信念を宣教されたという。
文応元年(1260)には、この岩屋でかの有名な"立正安国論"を書かれ、同年7月16日、前執権の北条時頼に建白された。

この妙法桜は、日蓮上人ご開祖から580年後、今から約190年前の天保4年(1833)には、「名木」とされていたことが記録にある。

まつばがやつあんこくじ(安国寺)は、にちれん上人、ぼうしう(房州)よりこゝにこもり、あんこくろん(安国論)をあらはし給ふところなり。こゝに、めいほうさくら(妙法桜)といふ、めいぼくあり。

十返舎一九『箱根山七温泉江之島鎌倉廻金草草鞋』 

明治時代になって、正岡子規もこの安国論寺を訪れて、和歌を詠んでいる。
(つづく)

(岡田 耕)
*参考文献
・松葉ヶ谷安国論寺『宗祖「立正安国論」御著作の地 資料輯』

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