「作家」と「ライター」の決定的な違いとは何か?
文章を書くことでお金をもらう仕事といえば、真っ先に浮かぶのが「作家」と「ライター」の2つです。
僕は書籍編集者という立場上、作家さんとライターさんと一緒に仕事をする時間がほとんどです。だからこそ、似て非なる存在である両者について、ここではっきりと定義づけをしておきたいと思います。
作家は伝えたいことが自分の「内」にある
作家が伝えたいことは、作家自身の「内」にあります。
というのも、作家は僕たち編集者がいなくても何かしらの情報発信をしているケースがほとんどです。仮に元々は自分で文章を書かない経営者であっても、プレゼンや講演、社員への指示など、さまざまな方法で自分の内にあるものをアウトプットしています。
もちろんアウトプットする過程で作家自身が取材をしていることも多いのですが、それは多くの場合、あくまで肉付けのためです。そもそもの根幹となるテーマ(伝えたいこと)は、作家自身の体験や思考から来ています。
ライターは伝えたいことが自分の「外」にある
一方で、ライターが伝えたいことは自分の「外」にあります。僕自身もライターなのでこの気持ちはよくわかります。
ライターの仕事として最も重要かつ違いが出るのが「取材」です。ライターにとって、「原稿の質=取材の質」と言っても過言ではないでしょう。逆に言うと、どれだけ文章を綺麗にわかりやすく書くことができても、取材がうまくいかないと原稿の質は低くなります。
先ほど作家の方でも「取材」のことに触れましたが、ライターの場合の取材とは作家のそれとは大きく異なります。なぜなら、ライターにとっての取材は肉付けではなく、それ自体が伝えたいことの根幹だからです。
作家には書きたいことを聞けばいい
わかりやすい例として、僕が編集者として作家とライターに相対するときに気付いたことをシェアしておきます。
僕は立場上、常日頃から企画を考えています。そのうえで、両者に対して企画を立てるためにする質問はそれぞれ異なります。
作家さんの場合は
「次に書きたいことってあります?」
と聞けばいいのです。大抵の場合、この質問をしただけで何個もネタが出てきます。そのくらい、作家という存在は伝えたいことに溢れているのだと毎回驚かされます。
ライターには気になる人を聞けばいい
一方で、ライターさんの場合はこのように聞くと企画になりやすいです。
「いま、気になっている面白い人っています?」
実はライターとして活躍されている方の多くは、「特に自分で書きたいことはないです」と言うことが多いです。その分、ライターさんに面白い人を聞くと、これでもかというぐらい上がってきます。
「そういえば、最近〇〇という媒体で取材したあの人が面白かった」
「最近Twitterでバズってる〇〇という人が……」
まさにこんな感じで、作家とライターは同じ文章を書いてお金をもらう仕事ですが、実際はこんなにも違うのです。
作家とライターの両立について
今回はわかりやすく両者を区別しましたが、実際には両者をうまく行き来している作家・ライターの方も世の中にはたくさんいます。
とはいえ、両方を全く同じくらいにできる人はいないと思います。恐らく、どちらかに重心があるはずです。ですから、作家とライターを両立したいと思っている方は、ぜひご自身の重心がどちらにあるのかを自問してみてください。
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