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東大に合格するような人は、歯磨きをするように勉強している

私は予備校を経営しています。

毎日たくさんの生徒さんたちを見ていると、東大のような難関大学に受かる人と、そうでない人の「違い」が見えてきます。

その「違い」とはなにか?

それは勉強が「習慣化」しているかどうかです。

よく「難関大学に受かるには血の出るような努力をしなくちゃいけない」「東大のような難関大学に受かる人はそもそもの理解力や記憶力が違う」などと言われます。

たしかに「努力」や「才能」によって受かる人もいるでしょう。

ただ私が見る限り「努力を努力とも感じないほどに勉強が習慣化できている人」こそが、東大のような難関大学に受かっています。

今回のnoteではそのことについてお話しします。

東大に受かるような人はいつも自習室にいる

難関大学に受かるような人は、だいたいいつも自習室にいます。

それも「無理して毎日来ている」というわけではなく、まったく悲壮感がありません。涼しい顔をして、あたりまえのように勉強しています。そういう生徒を見ると「この子はうまくいきそうだな」とわかります。

勉強が習慣化している人は強い。あたりまえのように勉強できます。

たとえば歯磨きを「努力」とは思いません。習慣化しているから、みんな毎日歯磨きをすることができます。

東大のような難関大学に受かるような人は、まさに歯磨きのように勉強をしています。だから勉強を「努力」だとは感じていないはずです。

これは勉強に限らずあらゆることに言えますが、なにかを継続して力をつけていくには、歯磨きレベルまで「習慣化」させることがポイントになってきます。

「それはわかるけど、その習慣化が大変なんだよな……」と思う方も多いでしょう。習慣化するためにはどうすればいいのでしょうか?

習慣化のコツはハードルを下げること

習慣化するために大切なのは「行動のハードルを下げていく」ことです。

たとえば単語を覚えたいとします。

そのとき、いきなり単語帳を開いて覚えようとしてはダメです。数日は続くかもしれませんが、すぐにしんどくなってやめてしまうでしょう。

はじめにやるべきなのは「単語を覚える」という行動を分解することです。「単語を覚える」とひとことで言っても、そのなかにはさまざまな行動があります。

・単語帳を手に取る
・単語帳をひらく
・単語帳のあるページを見る
・単語帳のあるページの単語を覚える

こうして分解すると、単語を覚えるときの最初の行動は「単語帳を手に取る」ということになりますよね? よってまずは「毎日単語帳を手に取る」ということに取り組むべきなのです。一定期間は、単語帳を手に取ることさえできたらクリアです。

「手に取るくらい簡単じゃん!」と思うかもしれません。でも生徒さんに「昨日、一瞬でも単語帳を手に取りましたか?」と聞くと、ほとんど手が挙がらなかったりします。

単語帳を毎日手に取ることすらできない人が、英語の勉強を習慣化できるはずがありません。習慣化するためには「まず単語帳を手に取る」というところから始めるべきなのです。

冷蔵庫のなかに単語帳を入れる

うちは英語学習のコンサルティングもやっていますが、そこのある生徒さんには、冷蔵庫の中に単語帳を入れてもらったことがあります。

彼は家へ帰ったらいきなりビールを飲む人でした。

だから「冷蔵庫を開けて、ビールの前に単語帳が置いてある」という状態にしてもらったのです。それなら、絶対に手に取りますよね。

そうやって「やらざるを得ない」仕組みをつくることが大切です。勉強を始める前に、そういう環境づくりができているかどうかが鍵なのです。

この「手に取る」が自然とできるようになってきたら、「どこでもいいから1ページ眺めてみる」「ちょっと声に出してみる」というように、徐々にハードルを上げていきます

「単語を覚える」というのは、プロセスとしてはけっこう後のほうになります。こうして段階的に習慣化していくことで、その行動は「あたりまえ」のことになっていきます。

遠回りのようにみえますが、これがいちばん失敗しません。

「手に取る」をやっているうちに、自然と「開きたい」と思うようになります。その次に「開いて読んでみる」というステップに移行していきます。ちょっと声に出して、意味もチラ見するようになります。

「いつも手に取ってチラ見する」というところまでが習慣化できたら、「1ページくらい覚えようとする」にチャレンジしてみます。

すると、だいたいの人は1カ月も経たずに習慣化できるはずです。

ちなみにほとんどの人は「いちおう単語帳を開くか」くらいまでは、わりとすぐに習慣化できます。よって、ここまで段階を細かくわけなくてもいいかもしれません。

とにかくまずは、いつでも単語帳にアクセスできるようにしておく。この環境づくり、準備の部分が重要です。それができれば習慣化するのは意外と簡単だったりします。

「がんばる」のではなく「習慣化する」

習慣化するとなぜいいかというと「がんばってる感」がなくなるからです。

ただ単にいつものことをやってるだけなので、心理的な負担があまりないのです。そうすると、いつのまにかできるようになります。

受験勉強で「合格のはちまき」をして気合いを入れるという場面を見ますよね。それ自体がダメだということではありません。まだ習慣化できていないときに「最初のモチベーションを与える」という意味では、一定の効果はあるかもしれません。

しかし気合い入れが必要だということは「習慣化していない」ということの裏返しでもあるんです。習慣化せずにずっと気合いで乗り切るのは、メンタルもしんどいですし、パワーが必要なわりに成果が出にくい。

英語学習は特に習得に時間がかかる分野です。だから毎回「やるぞ」とがんばるよりも、習慣化するほうがラクに成果が出るのです。

「褒めてもらう」をモチベーションにするのは危険

たまにSNSで「がんばります!」「英語の勉強してます!」などと報告する人がいます。

このやり方はどうでしょうか?

一見モチベーションが上がっていいように思えますが、それで承認欲求が満たされてしまうと勉強の「成果」ではなく「がんばる」と言うことが目的になってしまいます。これはちょっと危険です。

宣言して実際に行動に移すことで、習慣化できるようになれば意味はあるでしょう。ポイントは「がんばることそのものが目的になっていないか?」に気をつけることです。

SNSを使うと手っ取り早く承認欲求を満たせます。「いま勉強してます」と言えば、すぐに「いいね!」と言ってもらえます。そうすると「勉強をがんばってることを示す」ことに夢中になってしまう人も出てきます。ここに罠があるのです。

本来は、毎日コツコツ勉強して「それなりの結果が出てから」承認を得るのがふつうです。でもSNSならプロセスを褒めてもらえる。ここに気をつけたほうがいい、ということです。

「承認を得たい」「褒められたい」と思って勉強している人は、なかなか勉強が習慣化しません。承認によって続けている人は、承認がなくなるとパタッと止まってしまうからです。

東大などの難関大学に受かるような人は褒めてもらいたくて自習室に行っているわけではありません。すでに習慣化しているので、淡々とやっているだけです。

そして習慣化している人は、いちいち承認を得ようとしたり、いちいち気合いを入れたりしなくていいので「最短距離」で成果に向き合うことができます。習慣化できている人とそうでない人とではスタートにものすごい差ができてしまうのです。

私は「承認」よりも「習慣化」を目指すことをオススメします。

「褒められないと動けない」と言っているような人でも「習慣化」はできるはずです。たとえば人は生まれつき「歯磨き」という習慣を持っているわけではないですよね? みんなどこかのタイミングで習慣化できています。

「いつまでたっても褒められなければ歯磨きできない人」なんて見たことがありません。歯磨きをして親に褒められるのは、子どもの頃だけ。「今日も歯磨きしました!」とツイートして「いいね!」「きょうも白い歯、いいね!」なんてやりとりは見たことがありません。

習慣化するためのいくつかの作戦

習慣化の大切さがわかったところで、ここからは「習慣化するための作戦」をさらにいくつかご紹介していきます。

ひとつめの作戦は「スキマ時間活用」です。

あたらしい習慣をつくるうえで「スキマ時間」を活用することは有効です。スキマ時間にあたらしい行動を組み込めば、その行動が自分の生活のなかに自然に入ってきます。

スキマ時間活用のポイントは「電車に乗ったら単語アプリを開く」というようにやるタイミングと内容をあらかじめ決めておくということです。

以前すごく忙しい社長さんがやっていたのは「ランチのときにご飯を注文してから手元に届くまでのあいだでリスニングをやる」というものです。これまでツイッターなどを見ていた時間をリスニングの時間に変えた。最終的にその人はTOEICのリスニングで満点をとれるまでになりました。

「時間がない」と言っている人でも、トータルで1日1時間くらいはSNSを見たりゲームをしたりしていると思います。そういうことに使っている時間を勉強に使えば、たとえ15分だったとしても意味のある時間になります。

「連続した1時間」ではなく「15分✕4回」

私は、英語を学ぶビジネスパーソンに「1日1時間は勉強するように」とお伝えしています。

ただ「連続した1時間」でなくてもよくて「15分を4本」でいいのです。1時間まとめてやろうとするとハードルが高いですが、15分なら移動時間などにできてしまうでしょう。

「たった15分で何ができるの?」と思われるかもしれません。しかし意外と15分でできることはたくさんあります。

問題集を解くことだってできます。問題集をやるには、机、椅子、教科書、ノートなどの準備が必要に思えます。でもそんなことはありません。20ページほどスマホで写真を撮っておけば、電車を待つあいだ、電車に乗ったときなどに取り組めます。

いまはマスクをしているので、カフェの中や電車内であっても音読やシャドーイングを小声でやることだってできます。

英語の教材で音読やシャドーイングにかかる時間は30秒くらいです。15分あれば、それが30回もできます。実際は5分ほどロスがあるとしても、20回はできる。「毎日20回音読する」というのは、けっこうな効果を生みます。シャドーイングならもっと効果が出るでしょう。

いつもカバンにイヤホンを入れておき、音源をスマホに入れて、電車でコソコソと聴く。それだけで半年、1年後には大きな差になっています。

私が受験のときに教えてほしかった勉強法

私の会社では「スタディーハッカー」という勉強法のメディアも運営しています。そこに東大生や京大生のアルバイトがたくさんいて、彼らにおすすめの勉強法を聞いてみたことがあります。

なかでも、特によかった勉強法を2つご紹介します。

これらの勉強法を聞いたときはすごく感心して「もっと早く知りたかった!」と思いました。小学生のときに知っておきたかった。でも大人になってからも、英語の勉強や仕事などに活用できると思います。

ひとつは、ある京大生がやっていた「ぬり絵勉強法」です。

「ぬり絵勉強法」というのは、勉強したぶんだけ、方眼紙のマスを塗っていく、というものです。教科ごとに色を決めて塗っていくだけ。

「それだけ?」と思うかもしれませんが効果は絶大です。勉強量が可視化できるので自然と楽しくなってきます。全部のマスを塗り終わると、紙がすごいことになります。

この勉強法のポイントは、1マスの単位をすごく小さくすることです。「1マス1時間」とかはダメ。ハードルが高くなってしまうからです。1マスあたり5分とか10分くらいに設定するのがコツです。

マスの単位を小さくすると、当然同じ時間でもたくさんのマスを塗れます。「きょうは20マスだぜ」みたいな感じで楽しいんです。

このやり方は勉強以外でも使えるでしょう。勉強だったら科目ごとに色を変えますが、たとえばダイエットなら「ヨガ」「走る」「腹筋」のように分けてもいいでしょう。

ちなみに記事は話題になって本にもなりました。

とりあえず5分勉強法

もうひとつ、すごく納得したのが「とりあえず5分勉強法」です。

これはその名のとおり「とりあえず5分だけやろう」と思って勉強をはじめるというものです。5分やっているうちにいつのまにか集中できていて、結局ちゃんと勉強できている、というもの。

「いやいや、そうはならないでしょう」と思うでしょうか。でもこれは「作業興奮」といって、科学的に証明されている理論です。「側坐核」というところが刺激されて、ついやってしまうのだそうです。

試験前に、ちょっと部屋の掃除をはじめたら止まらなくなってしまう人がいますよね。あれと一緒です。

「とりあえず5分勉強法」のコツは「本当に5分でやめるつもりでやる」ことです。「絶対5分しかやらない」という気持ちでやる。ただし「5分後にこれをする」まで決めてはダメです。「5分経ったら絶対たこ焼き食べる」などと決めていたら、たこ焼きを食べてしまいます。

「2時間やるために、まず5分やろう」とかではなくて「本当に5分でやめよう」と思ってやりはじめるのが大事。すると、たまに続くときがある。それに「絶対5分でやめる」というつもりでやっても「なんかキリが悪いから、もうちょっとやっちゃおう」となるものなんです。

これは読書や仕事にも応用できると思います。「とりあえず5分」を実践してみてください。

勉強も仕事もダイエットも「習慣化」が鍵

ここまで「習慣化の大切さ」と「習慣化するためのいくつかの方法」をご紹介しました。

「勉強がうまくいかない!」「仕事で成果が出ない!」「ダイエットがうまくいかない!」 そういう人たちの課題はたいてい「習慣化」にあります。

「勉強がつらい……」「仕事がつらい……」「ダイエットがつらい……」と思っている人は、まだ「努力」でやっています。努力だから、気力が必要になって、しんどいわりになかなか続かないのです。

習慣化すればつらくなくなります。それがあたりまえになるからです。

なるべく早い段階で「習慣化」にまでもっていき、涼しい顔で成功を勝ち取ってください。

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